第3話
「アリスさん、スーツをありがとうございました」
「いえ、それとこちらで異世界用の服装は回収しておきましたのでそれにお着替えください」
「それが俺まだ仕事中で!」
「一度受けたクエストは失敗以外の破棄できません」
「えぇ!?じゃ、じゃあ今回の依頼はなんですか?」
「下水清掃です」
「えぇ!?」
「正確には用水路のここからここまでの清掃となっています」
淡々とアリスさんが地図をみせここからここまでと範囲を指でしめしてくれた。
【ブー、ブー】
「ちっ!誰だよ!こっちはこっちで限界だぜ!……げっ!」
さかのぼること少々前、会社の自分のデスクで今日も朝一の時点で残業が決定しているとわかる量の仕事こなしているとスマホが震えスマホを開いてちらっとみるとカウントダウンが始まるところで驚きながらもいかにも具合が悪いふりをしトイレにむかう途中、異世界の部屋へと転移して現在に至る。
「はぁ~、わかりました、がんばります」
いそいそと着替え仕事を無断欠勤になるだろうなぁと後のことを考えると気が重くなった。
「ああ、忘れておりました。こちらが立花様のカードとなっております」
「なんですかそれ」
「こちらは立花様がクリアしたりクリアできなったクエスト結果やクリア報酬額がわかるカードとなっておりますので無くさないようお気を付けください」
「ありがとうございます」
銅色のクレジットカードのようなものを手渡されたが使い方がわからなかった。
「カード確認という言葉で確認ができます」
「そうなんだ、では早速!カード確認!!…………お?」
〇 登 録 者 タチバナ ダイスケ
〇 L V 3
〇 ラ ン ク F
〇 最高達成LV S
〇 保有金額 300ガル
「えっと300ガルってことは……」
「日本円ですと3万円ですね」
「え!?たった1日草刈りしただけで3万もらえたの!?」
「そのようですね、達成LVというものがありまして依頼者の満足度などでS~FまでわけられておりFは未達成ですので実質Eが最低達成LVとなります、高LVでの達成にはLVに応じて追加報酬がいただけます」
「そうなんですね!ってことは……一生懸命クエストをクリアしたら…今の仕事をするより稼げるんじゃ…」
「一生懸命やったからといって高LVになるとはかぎりませんが一生懸命やったほうが可能性は高いかと思います」
「わかりました!がんばります!!」
「では、お気をつけて」
アリスさんが一礼し消えるのを見送って俺はドアを開け地図が示す先へとやる気に満ちながら意気揚々と進んだ。
「あのすみません、依頼を受けてきたものなんですが」
「おお?君か、わざわざすまんな」
「いえ、こちらが依頼書になります、間違いありませんか?」
「うん、依頼内容に間違いはない。よろしく頼むよ」
「はい、それで出したごみはどうしたらいいですか?」
「ああ、とりあえずあそこにあつめてくれるか」
「はい、わかりました、では現場確認をしたので必要そうな道具をもってきてすぐに取り掛かります」
「ああ、やり方はまかせる。よろしく頼むよ」
ひらひらと手を振って依頼者の人がいなくなってしまった。前回はたまたま人当たりのいい人が依頼者でこれがスタンダードなのかもしれないな。
「まぁいいや、どれはじめますか!」
今回はスコップと麻かなにかでできている大き目の袋を少し多めにもってきて、まずゴミを袋に入れそれを集める場所に置いていき、つぎに流れを止めていそうな石なんかも袋に入れて集めた。
「ふぅ~…昼を食おうと思うけど、この臭いと汚れじゃ食う気にならんなぁ」
結局、こまめに水分を取りながら指定した区画の清掃を進めて行き日が傾きかけたころ溜まっていた土なんかもあらかた除去できたので小さなバケツに水をため、ブラシでレンガで作られた用水路の壁と床をこすって流した。
「こんなもんかな」
「そろそろ時間だあがってくれ」
「はい、では依頼書にサインをお願いします」
「ああ……これで」
「はい、ありがとうございました」
「ああ」
俺は意気揚々ともどりドアを開けすでに待っていたアリスさんに依頼書を手渡した。
「おつかれさまでした。クエストの方はいかがでしたか?」
「一応、できるかぎり綺麗にしたつもりです。水もきちんと流れましたし、流れを止めていた石なんかもよけてあるんでしばらくは大丈夫かなと思います」
「そうですか」
「はい、ああ、これ依頼書です」
「はい、たしかに……え?」
「どうしました?」
「い、いえ………………」
「?」
「早くお着換えになられて仕事にもどられたほうがいいんじゃありませんか?」
「げっ!そ、そうだった!!言い訳もかんがえてない!!」
依頼書を手渡し内容を確認した後、アリスさんは昨日と同じように驚いた声をだしたけど昨日と違ってなんか探るように俺の姿なんかをみていたけど戻った先の言い訳を考えなきゃと思い焦って着替え部屋を後にした。
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「ええ、はい……現場を確認しましたが依頼内容は完璧にこなしてありますし、むしろS評価でもおかしくないと思います…はい、お願いいたします」
立花様の依頼書、評価がFで未達成になっていた、しかし彼の汚れた服装と疲労感そして人柄的に見てもサボったとは思えず現場を確認に行くと持参した袋にゴミを木屑や枝や金属そして岩と濡れた土、それぞれ別に分けて一か所にあつめられていて、なおかつレンガ造りの用水路のこびりついた泥やコケなんかも綺麗に洗い流されている、不備どころか丁寧すぎるほどの仕事をしてある、なので私は上司に報告し調査をしてもらうことにした。おそらくは依頼料を払いたくない依頼者がやったことなんだろうと思うが………馬鹿なことをしたものだとため息がでた。
「はい…やはりそうですか…はい、はい…それで達成評価は……そうですか、当然ですね…はい…そうですか…はい、わかりました……お手数をおかけして申し訳ありませんでした……はい、では失礼いたします」
数十分後、上司から連絡がきた、やはり依頼者は依頼料を支払う気がなかったようだ、依頼を受けに来た立花様をみて弱そうだったのでなんとかなると考えたようだった、そして立花様の今回のクエストはもちろんS評価で達成となり、嘘の評価をした依頼者からは迷惑料も上乗せされ、2連続でS評価を達成した特別報酬も少額ながらでることになった。
「本来ならば、事実をお伝えしなければならないのですが……」
今回のことを伝え立花様が今後依頼をしなくなる可能性を考えたら本来やってはいけないことだが今回のことは伝えず連続S評価の特別報酬ということにして伝えることにした。
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「おはようございます」
「ふがぁ~っふっ!!」
「おはようご・ざ・い・ま・すっ!!」
「ふぐっ!がっは!!」
「立花様おめざめになられましたか?」
「一生目覚めないところでしたよ!!」
「ちっ!それは災難でしたね」
「舌打ちっ!?しかも他人事!?原因はアリスさんですよねっ!ってまだ朝の3時じゃないですかっ!」
「おはようございます、早起きは3文の得と申しますので早起きしてよかったですね」
「アリスさんが起こしたんでしょ!!それで何の用ですか?」
「昨日はお疲れ様でした、お仕事のほうはどうでしたか?」
「トイレに行って1日戻ってこなく危なく失踪扱いされるところでした…」
「そうですか」
「はい、その後終電まで仕事をしました…とりあえず金曜日までがんばれば週末から来週1週間休みなんで何とか乗り切りたい心持です」
「わかりました」
「そんなことを聞きにわざわざきてくれたんですか?」
「いえ、昨日の依頼もS評価だったため、特別報酬が加算され手続きがおわったとお伝えにきました」
〇 登 録 者 タチバナ ダイスケ
〇 L V 5
〇 ラ ン ク F+
〇 最高達成LV S
〇 達成回数 2
〇 保有金額 1300ガル
「ふぁ!?え?え?めっちゃ増えてる!!1000ガルももらえたんですかっ!?」
「依頼者様が大変喜んでくださいまして依頼料を倍おしはらいしてくれたそうです」
「えぇ!?愛想がない人だったけど実はすげぇいい人だったんですね!」
「そのようですね、それと初クエストから連続S評価ということでいつもよりも特別報酬金が少し多かったようです」
「すげぇ……二日で13万も……」
突然腹部に衝撃をうけたときは呼吸が止まりかけたが、今はカードを見ながら息が止まるほど驚いた。二日で13万も稼げるなんて、しかも人に感謝されてというのが驚きだ。
「がんばって沢山クエストをこなしてくださいね」
「頑張りたいんですが仕事時間と被るのがなぁ」
「早朝と夜間にこなせるクエストを探してみますか?」
「え!?そんなことできるんですか?」
「掛け合ってみなければわかりません、それに可能だった場合、時間が短いクエストになるので報酬金は少なくなると思いますしランクアップに必要な内部ポイントも少ないと思いますが」
「それでも仕事がある日はそれで休みの日はガッツリというのが理想なんですが!」
「かしこまりました、伺ってみます」
「ありがとうございます!」
「では、わたしはこれで」
「はい!ありがとうございました!!」
「いえ」
俺は仕事中のクエストの言い訳を考えなくても済むと意気揚々とベッドに再び横になった。
「ね…寝れねぇ……」
しかし一度がっつり目が覚めてしまいなかなか寝付けず結局ウトウトするまで時間がかかりながらも眠りにつけた……そして仕事は寝坊して結局怒られてしまいました。
「さ、散々だった……」
【ブーブーブー】
「うぉ!?こんな時間に!?」
帰宅してスーツを脱ぐと同時にクエストのメールが届きつかれていたこともあり今日はやめようと思ったが、アリスさんに時間調整を頼んだのは自分なので良心の呵責に負けメールを開いた。
「お仕事お疲れ様でした」
「い、いえ…それで今日のクエストはどんな内容なんでしょうか」
「はい、とある商会の倉庫があるのですが朝1で大量に品物が届くそうで夜間の間に倉庫内の整理と清掃が依頼内容となっております」
「わ、わかりました!早速やりにいきます!」
「はい、それでは行ってらっしゃいませ」
「はい!」
無表情のままぺこりと頭を下げた後、手を振って見送ってくれたアリスさんをみて、女性にしかも好みドストライクの超絶美人に見送られ仕事で疲れ切ってるところ開き直り変なテンションも相まって元気に依頼先へと向かった。
「うぉぉぉぉぉ!!こんなもんなんぼのもんじゃぁぁぁぁ!!ポイントってのがすくねぇならその分、数をこなしてやらぁぁぁぁぁ!!!」
見送られたことが嬉しくて何度も思い出しきづいたが、いつもは用件を伝え消えるアリスさんがちゃんと見送ってくれたことに気づきさらにテンションをあげ、なんとしてもランクアップをし食事に行こうと今日も社畜魂に火をつけ一気にがむしゃらに依頼をこなし、朝方、荷物が運ばれてくる少し前に依頼をおえることができた。
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