第2話

「起きてください」

「ふがぁ~ふっ……がっ!」

「起きろ!」

「がっふぅ!?な、なんだ!?」

「やっと目が覚めましたか?」

「ん!?ここどこだ!?」

「ここは異世界との境目にある場所です」

「な、なんで俺そんなところにきてんの?寝てたじゃん!メールなんて」

「開いてましたよ」

「え?」

「スマホが鳴るといびきを爆発的にかいて無呼吸症をおこしながらも寝ながらスマホを開いてメールを開いておりました」

「えぇ!?」

「社畜が裏目に出ましたね」

「うぉぉぉぉ!!日ごろの社畜スキルぅぅうぅぅぅぅ!!!」


まさか寝ていてもスマホに反応するとは!ってそんなこと後悔してる場合じゃない!


「あの、それで……」

「ミッションを受けると必ずここに転移してきますのでこちらで異世界用の服装にきがえてください」

「じゃ、じゃあ1度着替えを取りに」

「馬鹿ですか?異世界ですよ?ジャージやスェットなんか逆に目立つじゃないですか」

「異世界になじむ服なんてもってないですよ!コスプレ店にでもいけばいいんですか!」

「逆切れしないでください、初期装備はこちらで用意してあります」

「それならそうと早く」

「勝手にテンパったのはどなたですか?」

「す、すみませんでした」

「わかればいいです、ではこちらに着替えてください」


手渡された服は中世の木こりが着てそうなゴワゴワした服だったが素直に着替えた。


「若いんですから多少は鍛えたほうがよろしいのでは?」

「え?きゃ!着替えをみないで!」

「もぎますよ?」

「い゛!?ごめんなさい!ってそもそもなにを?ねぇ!なにをもぐの!?」

「着替えたのならこれを、今回のミッションの依頼書です、こちらにミッションを達成したらサインをもらってください」

「わ、わかりました」

「ちなみにそこのドアを開けると異世界にでます、帰ってくるのも同じドアをあけてください」

「わ、わかりました」

「よろしい、ではミッション内容をお伝えします」

「はい、お願いします」

「今回はこちらの空き地の整備です」

「え?こんな広い場所!?」

「道具もこちらにあるものは何でも使っていただいて構いません」

「おぉ!ありがとうございます」

「いえ、慣れるまでは地図がナビになっていますので見ながら進んでください、現在地と目的地がわかるとおもいます。目的地に着いたらオッドマンという男性がいるので依頼書を見せてください」

「わかりました」

「それでは、がんばってください」


一礼して受付をしてくれた子がきえていったので手あたり次第つかいそうな道具をもってドアをあけた。


 「ふっふっふ、食事デートの第一歩だぜ!まっていろよぉ!…………えぇ…」


 やる気をたぎらせ異世界へ一歩踏み出し決意を口にした時に驚愕の事実に気づいて愕然と立ち尽くしてしまった…………。


 「あ、あ…あの子の名前をまだ聞いてねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 そしてさらに彼女への連絡手段すらわからない事実におれのライフがとんでもない残量になってしまっていたが、さっさと終わらせて帰ってふて寝することにし渡された地図に従い進むことにした。


 「ぼろい民家が出入り口になってるのか…」


一歩間違えれば廃墟にしかみえないボロ屋のドアから自分がでてきたのをぐったりしながらみてため息をついてから歩き出した。


「すみませんオッドマ ンさんですか?」

「ん?君は?」

「立花と申します、依頼を受けまして、こちら依頼書になりますご確認お願いいたします」

「これは丁寧に…ふむ、私が出した依頼書で間違いないね。では簡単に説明させてもらうが、最悪今日中にここの雑草を刈ってくれるかい?」

「わかりました、あの1つお聞きしてもいいですか?」

「なんだい?」

「こんな広い土地何に使うんですか?」

「ああ、今度ここに孤児院ができるかもしれないんだ」

「え!?」

「魔物に襲われ両親を失った子や病気で失った子達が意外と多くてね」

「そうなんですね」

「ああ、それに少し前に流行り病が広がって増えてしまってね、あずかれるキャパを超えてしまったんだ、だから急ぎたいんだが我々もそんなに資金に余裕があるわけじゃないし、日々子供の引き取り先や世話なんかもあってね」

「なるほど、では早速取掛からせていただきます」

「ああ、日没近くになったら顔をださせてもらうよ」

「はい!了解です!!」


資金面の話をしたときに少し恥ずかしそうにしたオッドマンさんをみると服装は結構ヤレていて本当の話なんだろうなと感じた。んで柄にもなく子供たちのために頑張ってみようと思い作業に取り掛かった。


「まずは区画わけして草を刈って一か所にあつめるか!」


腰まである草を大鎌で根元から草を刈り熊手で1区画ごと集めてることにした。


「あぢぃぃぃ…だんだん暑くなってきたなぁ~!!」


朝早くからやりはじめた草刈りも半分を過ぎたあたりで日が高くなり始めジリジリと体を焼きはじめ、ここで飲み水を用意していないことに気づき軽く絶望した。


「はぁ~…どうせこうなっているだろうと思っていました」

「え!?」

「こちらに水分と昼食を用意しておきましたのでお食べください」

「うぉぉぉ!美女からの差し入れ!!」

「はぁ~…今回だけですからね?次からはしっかりご自分で準備してくださいね」

「はい!ありがとうございます!!」

「……ふむ、では頑張ってください」

「ありがとう!」


声が聞こえて振り返るとあきれたようにため息をついた受付の子がいて食料と水を置いて行ってくれた。なんか俺の作業をみて驚いた顔をしていたが…まさか作業が遅くてあきれるほど驚いていたのではないか……これは水分を取りもっと丁寧かつペースを上げねばミッションクリアにならないかもしれない。


「うぉぉぉぉ!ここまでやって未達成なんてさせるかぁぁぁ!!」


ぐびぐびと水を飲み気合をいれてペースをあげた。


「いてっ!あぁ…マメができてたのか…しかし!デートのためだ!こんなもんじゃねぇぞ!!モテねぇ社畜なめんなよぉぉぉぉ!!!」


気合という名の奇声を発し手のひらのマメがつぶれてもお構いなしに作業をすすめると日が真上に上がることにはすべての草を刈り終えた。


「おっしゃぁぁぁぁぁ!……あれ?この草ってどこに捨てればいいんだ?」

「あれ、あんちゃんどうしたね?」

「ん?ああ、こんにちわ。草刈りしたんですがこの草どこに捨てればいいかなって」

「ああ、なんだい、そんなことかい。それならほれ!そこの穴にすてりゃぁいいのさ」

「え?いいの?」

「ああ、そこには草や木、生ごみとかをいれるんだよ」

「そうなんだ!ありがとうばあちゃん!」

「はいよぉ、がんばんな!」

「はい!」


通りすがりの親切なばあちゃんに手を振り草を次々フォークで刺して穴に捨てて行った。


「ふひぃ……お、おわったぁ……んー……まだ日没まで時間があるなぁ」


作業が終わりくたくたになって大の字に倒れ空を見ると日没まではまだまだ時間があるようで社畜根性丸出しの俺は時間が余るのはもったいないとおもってしまう不幸な体質になっているらしく、なにかやれないかとあたりを見渡した。


「あぁ、伐採された切り株が腐ったのがいくつかあったな…腐ってるなら案外楽にほりおこせるかも」


草を刈っているときに邪魔だった切り株を思い出し斧とスコップ、そして鍬で切り株を抜いてみることにした。


「うぎぃぃぃぃ!!!……はぁはぁ、おもったより根がはってるな……根は斧できるか」


切り株の周りをスコップで掘ると根にスコップがあたりそれを斧で斬っていくのを何回もやった。


「お?おぉ!!やっ、やった!よぉーし!時間までガンガンやるぞぉぉぉぉ!!!」


朝からの肉体労働で謎のハイな状態になっていたのか、切り株を1つ掘り起こせたので興奮し次々と作業をしていった。


「ふひぃ~こいつは中々しぶとかったぜぇ、はぁはぁはぁ」

「お疲れ様です」

「ひぃ!?」

「ああ!驚かせてしまったみたいですね!申し訳ない!」

「あ?ああ!オッドマンさん!」

「随分がんばってくださったようですねぇ……私が声をかけるまで気づかないなんて」

「すみません!」

「いえいえ、日没にもきづかないほど一生懸命にやってくださり嬉しく思います」

「え?あれ!?ほんとうだ!」

「あっはっはっは!作業は終了です」

「はい!御疲れ様でした!」

「ちょ!いやいや!!タチバナさん!依頼書にサインを!」

「え?あっ!ああ!すみません!依頼は無事に終了でいいですか?」

「もちろんです!大満足ですよ!」

「おぉ!!ありがとうございます!!じゃ、じゃあサインを頂いてもいいですか!」

「もちろんです!」

「ありがとうございます!じゃあサインをしていただいてるあいだにこの切り株をすててきます!」

「え?え、ええ!ありがとうございます!」


依頼書を手渡し最後に抜いた切り株を穴にすて戻るとサインもし終わっていた。


「おぉ!ありがとうございます!!」

「くっくっく!御礼をいうのはこちらですよ、また何かあったら是非依頼させてください」

「おぉ!是非おねがいします!」


汚れた俺の手を気にする来なく笑顔で握手をしてくれたオッドマンさんに見送られ俺はボロ屋のドアをあけ意気揚々と中に入った。


「随分おそかったですね」

「いやぁ、熱中しすぎまして!あぁ!これ依頼書です」

「はい、たしかに……!?」

「どうしました?」

「い、いえ……お疲れ様でした」

「はい!ありがとうございます!」

「それで昼食は口にあいましたか?」

「え?……あ……」

「まさか……お食べになられていないとか……」

「すみません!!熱中しすぎて食べる時間が!!」

「無理にお食べになられずともいいんですよ?もう痛んでしまっているかもしれませんし……手作りでしたのに……」

「!?帰ったら必ず!!」

「いえ、無理に」

「家宝にします!」

「食べてください」

「えぇ~…生れてはじめての女性からの差し入れしかも美女の手作りなんですよ?家宝にするしか……」

「いま、ここで食べてください」

「えぇ~」

「はぁ~…かえってから大丈夫か確認してくださいね?」

「はい!」

「それではクエスト無事にクリアとさせていただきます、お疲れ様でした」

「はい!御疲れ様でしたって!ああ!名前!すみません名前を教えてください」

「え…それはちょっと……」

「えぇ……」

「冗談です、改めまして担当のアリスと申します」

「おぉ!アリスさん!お弁当ありがとうございました!」


俺が感動しているのを無視しアリスさんは一礼し消えると俺は弁当を持ったまま自室のベッドにもどってきた。


「いやぁ~働いたって気がするぜ……あ……」


達成感からひとっぷろ浴びようかと立ち上がった時にきづいた。


「おぉぉぉ!!!着替え忘れたぁぁぁぁ!!俺のスーツゥゥゥ!!」


3着しかないスーツの一つを忘れ取りに行くためにはクエストを受けなくてはと決意をあらたにしとりあえず腹ごしらえをした。


「う、うめぇ!!なんだよ!美人で飯もうめぇとか!!犯罪級じゃねぇか!!」


美人の作った生ぬるいサンドウィッチは格別だった。


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