異世界いったりきたり旅
ひぃーろ
第1話
「あ゛ぁぁぁ~おわったぁぁぁ………明日はやっとの休みだぁぁぁ……明日は寝るぞぉぉぉぉ」
23時25分、仕事を終えネクタイを緩めながら部屋に入り晩飯もたべずとりあえずベッドにダイブし魂が抜け出るんじゃないかという自分でも少し驚くレベルの深い息を吐いて布団に顔をうずめた。
「3か月ぶりの休みだ……寝よう……死ぬ」
自分が勤める会社は忙しくなると今回みたいに長期の休みがなくなりそれが過ぎると各部署によって違うがうちの部署では順番に1週間くらいの休みが与えられる。
「来週を乗り切れば……」
再来週からは1週間の休みに入れる今の俺はそれだけをモチベーションにして乗り切っていた。
「とりあえず寝よう……」
【ブゥー…ブゥー……ブゥー】
「嘘だろ……こんな時間に」
ベッドと自分の体に挟まれている胸ポケットのスマホがバイブしていて気づかない振りしようかと思ったが一向に鳴りやまないので仕方なく仰向けになりスマホを取り出した。
「誰だよもぅ…ん?なにこれ」
着信相手をみようとスマホ画面をみると三角に剣をモチーフにしたマークが画面いっぱいに映し出されていた。
「ウィルス?…うわぁぁぁ!!」
ウィルスでも送り込まれたのかと思いながら画面を触るとスマホから部屋が眩い光が発せられ目を開けれずに閉じてしまった。
「あ゛ぁぁぁぁ!あ゛ぁぁぁぁぁ!目がぁぁぁ!目がぁぁぁ!!私の目がぁぁぁぁ!!」
まぶしさで目が痛くなり目を抑えのたうち回った。だって痛いんだもん。
「いやいや、目より発言のが痛いとおもいますよ」
「ん?」
「正気にもどったのならこちらにお越しください」
「あれ?ここは?それに君は?」
「落ち着いてください、とりあえずこちらにお越しください」
「は、はい……」
「キョロキョロしない、すぐ来る」
「は、はい!!」
目の前にはどこかの会社のだろうか制服すがたの女性が無表情でまるでドラマで見る取調室にあるような机をはさんで椅子に座っていた。
「どうぞ、お座りください」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いえ、それでは早速ですがいくつか確認をさせていただきます」
「え?」
「まず、氏名ですが
「ちょっ!」
「間違いございませんか?」
「ま、間違いありません」
「ふっ、次にご職業ですが」
「ねぇ!今完全に見下して失笑しましたよね!?」
さっきまで無表情だったのに!少し!いやかなり美人だからって初対面の人の心を抉って踏みつぶすなんて!
「ご職業はスーパーブラックな会社の社畜として会社の欠けた歯車の日々うだつがあがらないとりえのないサラリーマンでまちがいございませんか?」
「えぇ…」
「どこかご指摘部分がございますか?」
「い、いえ…ありません」
「……わかりました」
「ねぇ!憐みの目だけはやめて!ねぇ!!それならまだ蔑まれた方がマシよ!?」
誰だ!可愛いとか美人のほうが性格がいい子が多いって幻想を俺に植え付けたやつは……俺だよ!!
「それではこれより契約に移させていただきます」
「え?け、契約!?なんのですか?」
「こちらのボードに両手を、そしてこの球を穴が開くほど凝視してください」
「いや!だから契約って!!」
【ガシャン】
「え?えぇぇぇ!?」
椅子から立ち上がろうと机に手をついた瞬間、机に手が拘束され手のひらの部分がひんやり冷たい板に変わっており驚いて女性を見ると女性の目の前には水晶玉のような不思議な球があった。
「すぐに終わるので困らせないでくださいね?さぁこの球をみてください」
「いやです!……ぇ!…ハァハァハァ!!」
「呼吸と視線が気持ち悪いですがいい集中力です、そのまま集中してください」
「は、はい!!」
水晶玉をみると屈折の関係なのか足を組む目の前の女性の見えてはいけない部分がチラチラと見え隠れしていて角度を変えたいが手が拘束され上手くいかず必死に覗き込んだ。あと少しで……みえ。
「素晴らしい集中力でした、契約は以上です。お座りください」
あと少しで全貌が望めると思った矢先、女性が水晶玉を取り上げしまい込み手の拘束もはずされた。
「集中してほしいと言いましたがそこまでお疲れになるほど集中なさるなんて気持ち悪いですね」
「ほっといてください」
チラリズムに惑わされ何も知らない契約をされてしまい、結局よく見れなかったショックでうなだれてしまうのは仕方ない。
「気持ち悪いですが過去最高に近い力を発揮なさっておりました」
「そ、そうですか」
「それでは契約の内容を簡単にご説明いたしますね」
「お願いします……」
気持ちを切り替えて説明を聞くことにした。もうこれは夢だというのもなんだか理解しているし心には余裕がある。
「簡単にもうしあげますと、こちらから連絡がとどきましたら異世界へ行きミッションをクリアしてもらうという命はかかっていますが至極シンプルでやりがいのある契約となっております」
「え?は?」
「説明は以上になります。お疲れ様でした」
「いやいやいや!!ちょっとまってくださいよ!夢だとしてもぶっ飛びすぎじゃないですか!」
「夢?ご安心ください夢オチなどというチープなものではございません」
「嘘だ!あんたみたいな美人現実にいるわけがねぇ!俺は自分の夢にだって騙されない男ぞ!」
「ふむ、意外でした女性を見る目だけは確かなようですね」
「遠回しな自画自賛!?」
「はぁ~…しかたありません。少しだけ詳しく説明いたしますね」
「え?えぇ…最初そうしてくださいよ」
「まず、契約者のスマホにこちらからミッション内容が専用メールで届きます。契約者がそのメールを開けるとカウントダウンが始まり10カウントで異世界へ召喚されます。なお開けなければ召喚されずミッション未達成となります」
「未達成の場合なにかペナルティーは?」
「1か月何もなさらない場合は契約は破棄になりこれまでの記憶とともにすべてのデータが破棄されます」
「死んだりはしないんですよね?」
「はい、契約破棄だけです」
「そうですか!よかったぁ」
「ミッションをクリアするたびにクリア報酬と成果による追加報酬が受け取れます」
「それは?どんな報酬で」
「基本的にはどちらの世界でも使える通貨ですが稀にどちらの世界でも使えるアイテムなどもあるようです」
「異世界も円ってこと!?」
「馬鹿ですか?異世界ではガルという通貨が流通しておりまして1ガルが100円程度だとおもっていただければいいと思います」
「じゃあ、ミッションをクリアしたらするだけお金がもらえるの!?」
「そうです、まぁ命がけですがね」
「えぇ…じゃあ向こうで死んだら」
「行方不明者リストの仲間入りですね」
「……えぇ」
「そうならないためにランク制をもうけています。立花様は最下位のFランクの屑からスタートなので命に係わるミッションなどはありません」
「屑!?」
「まぁせいぜい頑張ってランクを上げてください」
「スルー……それよりランクってどうやってあげるの?」
「ミッションをクリアしていけば一定数の評価であがっていきそれにともない報酬も増えます」
「そ、そうですか、しかし金だけのために命をかけるとなると……考えてしまうな」
「うだつの上がらない平社員が何をきれいごとを……それともなんですか?ランクが上がるたびに私を好きにできるとでも追っていたんですか?」
「え!?そんなご褒美があるの!?」
「あるわけありません」
「デスヨネー」
「まぁ、Dランクになったら食事くらいはおごらせてあげてもいいですよ」
「!?マジですかい!!」
「はぁ~…ええ、マジでいいです。Dランクでやっと脱初心者なのでお祝いくらいは担当としてお付き合いさせていただきます」
「やった!なんだ!やる気がみなぎってきたぜ!!」
「はぁ~…以上で説明は終了です、お疲れ様でした」
「はい!食事たのしみにしてます!!」
「はいはい、ランクがあがったらですがね……では立花様ご武運を」
「うぉっしゃぁぁぁ!!!……ん?あれ?」
形だけ深々と頭をさげた女性が最後に少し笑ってくれたのでさらにやる気をだし雄たけびを上げるとうっすら明るくなったいつもの部屋のベッドの上にたっていた。
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