リアルなぞなぞ~ゾウの話
鵜川 龍史
リアルなぞなぞ~ゾウの話
〔登場人物〕
出:出題者
厨:闇の勢力と戦う厨二
夢:夢見がちな聖少年
灰:ハイテンション/灰テンション
出:さて問題です。ゾウはゾウでも、鼻の短いゾウはなんでしょう。
厨:(間違ったカッコつけ方で手を挙げる)はい。
出:ど、どうぞ。
厨:有象無象。
出:どういうこと。
厨:これだから、貴様ら有象無象は。
出:僕ら?
厨:俺のような鼻の高い天狗とは違うってことだ。この、モブどもが。
夢:へー。君、天狗なんだ。
灰:まじか! 俺、天狗見るの初めて! すげー。鼻の高さとか、俺と変わんねえのな。
夢:違うよー。天狗っていうのは、いい気になってうぬぼれてる人のことだよー。
灰:まじか! お前、博士だな!
夢:だから、普通、自分には使わないんだけどね。
厨:はあ? 天狗が天狗っつって、何が悪いんだよ!
夢:頭だね。
出:いいから、早く答えてよ。
厨:答えただろうが! 有象無象が!
出:どう考えても間違いでしょ。
夢:はい。(手を挙げる)
出:どうぞ。
夢:こぞう。
出:残念。ゾウは、生まれた時から鼻が長いんだよね。
夢:違う違う。そのこぞうじゃない。「門前の小僧習わぬ経を読む」の「小僧」。
灰:門前仲町の小僧がどうしたって?
厨:お前、バカか!
灰:バカって言われた! ショック!(ショックぽくない様子で。テンション高く)
厨:「門前の小僧」つってんだろ! 「ナラワヌ経を読む」んだよ!(「ナラワヌ」は抑揚なく)
出:何、「ナラワヌ教」って。
夢:「いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に 匂ひぬるかな」
出:何、何?
夢:古き遠き時代の奈良の都に思いをはせ……
出:「ワヌ」は?
夢:わぬ……わぬ……わぬ?
出:無理がある。
灰:無理ガール!(Girlはいい発音で)
厨:奈良の都の無理ガール!(Girlはいい発音で)
灰:わぬ!(Wow、みたいな発音で)
厨:わぬ!(Wow、みたいな発音で。その後、灰とハイタッチ)
出:小僧はガールではない。
夢:そうか、正解じゃないのか。
出:何が「そうか」か知らないけどな。
灰:(突然、怪談調で)あのー、この話はー、亡くなった叔父に聞いた話なんですけどー。
出:何、いきなり。
灰:その日は、霧がすごく出ていたんですよ。叔父は、友人の葬式に急いでいて、山道を、少しスピードを上げて走っていたんです。前後に車はなくて、対向車線にも全く車が走っていませんでした。
出:怪談? 怪談はじまった?
灰:そのうち、霧がどんどん濃くなってきて、叔父は仕方なくスピードを落とそうとしたんですけど、ブレーキを踏んでも、スピードが落ちないんですよ。霧はもっともっと濃くなってくるし、やばいやばい、危ない危ないって思って、サイドブレーキを掴んだんです。そうしたら、その手を誰かが……。
夢:ぞーっ!
灰:の、ゾウ。
出:なるほどね……じゃない! もう、生き物ですらないじゃないか。
夢:それがひっかけだね。
出:何が?
夢:答えはずばり、虚像。
出:え? どういうこと?
夢:僕たちが見ていたのは、本当のゾウじゃない。本やテレビで見るゾウは、しょせんイメージに過ぎない。それは、実物のゾウとは異なる虚像に過ぎないんだ。
出:意味わかんない。
夢:例えば、ここにゾウの写真があるとする。このゾウの鼻は、果たして長いのか、という話。
出:長いでしょ。
夢:長いなー。
出:それっぽいこと言うの、やめて。ドキッとするから。
厨:ちょっとまて、モブども。
出:モブ、言うな。
厨:実物のゾウは、本当に鼻が長いのか? 俺たちは、ゾウの鼻が長いってことを信じさせられているだけなんじゃないのか。
出:誰にだよ。
厨:組織にだよ。
灰:そうなのか!
厨:考えてみろ。誰か、ゾウの鼻が本当に長いか、実物を見たことがあるやつ、いるか?
出・夢・灰:はい。(手を挙げる)
厨:貴様ら、組織の人間か!
灰:お、俺は違う! 組織の人間はこいつらだ。俺は、従わされていただけなんだ。
夢:裏切ったな。貴様はもう用済みだ。
灰:ちょ、ちょっと待ってくれ。命だけは、命だけは!
出:ほら、遊ばない!
灰:すみません。
夢:もう、降参だよ。答えは何?
出:フォスファテリウム。ゾウの祖先だよ。
夢:それじゃ、なぞなぞになってないじゃないか。
出:なぞなぞなんて、誰も言ってないだろ。
夢:なぞなぞっぽい聞き方、しただろ。
出:してないわ! なぞなぞは「なーんだ」だろ。僕は「なんでしょう」って聞いたんだよ!
夢:オフィシャルっぽいこと言ってんじゃないよ! だいたい、これは、〈リアルなぞなぞ〉っていうコントのシリーズなんだぞ。
出:制作者の都合を押し付けるな。コントに自由を!(拳を突き上げる)
灰:民衆に解放を!(拳を突き上げる)
出:おー!
灰:おー!
厨:この、有象無象どもがぁ!
夢:おまえもな。
(幕)
リアルなぞなぞ~ゾウの話 鵜川 龍史 @julie_hanekawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます