第98話 嵐の後
子ウサギ達が襲来した翌日、今日はあまり水遊びもせずに家に戻り、部屋の中で子供達もまったりとくつろいでいた。
……というか、まあ、子供達も燃え尽き症候群みたいなものか。昨日は本当に疲れたからな(遠い目)
これから毎日あの子ウサギ達が!となったらさすがにこうしてのんびりする心境にもならなかっただろうが、子供達もまあ、三人くらいなら、と落ち着いたら通って来るだろうアルミラージの子供達のことを受け入れてくれていた。
「そういえばアインス達は三つ子だけど、皆は一人っ子なのか?」
ウサギが三つ子、と聞いてもウサギのイメージ的には少ないな、と思ってしまったが、神獣、幻獣からしたら、もしかしたらアインス達や三つ子の方が希少なのかもしれない、そう思って毛玉になっている子供達になんとはなしに尋ねてみると。
『わたしは一人なの!一族のおねえちゃん達も、みんな一人ずつだよ!』
そんなクオンの返答に、セラン、フェイが頷いた。
『オルトロスは一人だけ』『だから子も一人』
ロトムの返答は、なんとなく予測していたことだった。オルトロスは一族ではなく、代々一人で守護地を守護している幻獣だからだ。フェニックスも本来なら一人の神獣だろうが、おそらくフェニックスは元々成獣しにくい種族で、一度に多く育てていたのかもしれない。
『ぼく、卵、二つだったけど、生まれたの一人だった、って言ってたよ』
おお、サンダーバードは卵から孵るんだな!フェニックスのように二つとも孵らなかったのは、孵さなかったのか、それとも孵らなかったのかは分からないけどな。
神獣、幻獣の出産、というのはアーシュやオルトロスを見ていると単体で子供がいることから想像もつかないファンタジー要素があるんだろうな、と思っていたが、地球で卵生だった種族に似た神獣や幻獣達はもしかしたら卵生なのかもしれなないな。
それからケット・シーとクー・シー達にも聞いたが、やはりほぼ子供は一人ずつで、たまに双子が生まれる時もあるが、その時はかなり小さく、育つまでにかなり時間がかかるそうだ。
『子は親の分身みたいなもの』『一度に作り出せる分身は一つが限界だからな』
へー、とのんびり聞いていたところに、ロトムが爆弾を落とした。
「へ?分身?神獣や幻獣の子供って、親の能力を全て持って生まれるって聞いていたけど、分身だったのか?」
それから色々聞いたところ、子供達が知っていたことを纏めると、成獣すると身体に核のような物が出来上がり、それを育てていき、大きくなるとそれを分割して子供、つまり次代として生む、らしい。それがどういう方法なのかは子供達でも知らなかったが、どうやらそういうことだったらしい。
うわぁ……。ウサギは元々多産だし、アルミラージだって確か多産の神様とか言われていた気がするからアルミラージが三つ子を生んでもまあ、って感じだけど、もしかしてアーシュはかなり無理してアインス達を生んで育てていたんじゃないのか?そうか……。アーシュも実は凄く切羽詰まっていたのかもしれないな。
そうして何故双子や三つ子が出来るのか、は当然その分割した核がさらに分割される、ということで、知識としての分割はないそうだが、核が少ない分小さく、その分育つのに時間が更に必要になるのだそうだ。
それでも別個体が増える分、その内の一つが成獣する、という可能性もあり、そうした面から考えても一度に何人もの子を作る、というのは神獣や幻獣にとってもかなりの賭けなのだろう。
そして何度も成獣しない子供を産む、ということは、その度に自分の核を分割している、ということだ。成獣までに約百年、と考えると、アーシュはどれ程長い年月を生き、次代を待ち望んでいたのかを想像することしか出来ないがなんとなく察することが出来た。
その上アインス達は三つ子だもんな。今は三人とも立派に育っているけど、雛の時は育つかどうかもかなり神経を使った筈だ。そりゃあもしかしたら子供達に有効か?って思ったくらいでも、俺を見つけて即捕獲する、ってものか。まあ今なら俺はあの時アーシュに捕まってなかったら今ほぼ生きていないだろう、ってことも分かっているから、助けられたって思っているけどな。
そんな神獣や幻獣の厳しい現状を知り、さらにしんみりとしながらのんびりと昼食を食べ、そのまま昼寝している子供達を見回しながらまったりしていると、いつしかうとうととしてしまっていたらしい。
まずいな……。そろそろキキリと交代しないと。午前中はオズの部屋にいたらしいシュウも、今は子供達に埋もれて昼寝しているし。オズの散歩もそろそろ行かないと。
そううつらうつらしながら思うのに、昨日の疲れからか体が全く動かず、いつしか睡魔に負けて本格的に眠ってしまったらしい。
目覚める前にぼんやりとしながらそう考えていると、少しずつ意識が覚醒して行く中、何故か自分の体が上下に動いていることに気づく。
なんだ?アインス達だったら俺が寝ていたら押して移動するより、嘴でつつかれるか羽で叩かれて起こされるしな。子供達が寝てしまった俺を毛布の上にでも引き上げようとしているのか?
毛布の上で毛玉になって眠る子供達を少し離れた場所から見ていた記憶がぼんやりとあったので、そのまま床の上で寝てしまっている俺を毛布の上に寝せようとしてくれているのかもしれない。子供達は、みんないい子だからな!
と、そこまで考えたところで、やっと頭が覚醒してきたのか、それにしては移動する距離が長すぎること、床の上を移動しているにしては上下に身体が動いていることの違和感に気が付き、まだ眠気が残る重い瞼をようやくの思いで開けると。
「はあ?へ?俺、どうして外にいるんだ?寝ぼけて……ってイヤイヤイヤ。さすがに寝ぼけたって階段から落ちたら目が覚めるから!ええ、本当に、ここはどこなんだーーーーーーーっ!!」
いつしか上下運動は止まり、目を開けて見えたのは、太い木にあちこちから蔦が絡み合い、大きな葉っぱが空を埋めつくしている見知らぬ森だったのだった。
*****
今回は少し短いですが切りがいい(いいのか?( ´艸`)のでここまでです。
この春はイツキは大忙しです。
次は水曜日に更新予定です。
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
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