第81話 子供たちの成長と癒し1
俺は呆然と、ハーツに押し倒され、寝転がったまま顔をべろべろとなめられるまま、どこか困った表情のおどおどとした様子の新入りお猫さま、いや、グーラのララと目線を合わせた。
な、なんだこのカオス。この状態のまま颯爽と去るフェンリルお父さん。流石ハーツのお父さんだな……。え、どうしたらいいの?と、とりあえず自己紹介しないとだよな?
「ハーツ、ほら、ごめん。ララに挨拶したいから、ちょっとどいてくれないか」
『クゥン。やっと、会えた、イツキ!』
ハフハフとまだ興奮冷めやらぬハーツは止まってくれず、逆に更に顔をこれでもかと舐め回される。
『あーーーーーーーーーーっ!!ハーツ、イツキを独り占めなんてダメなのーーーっ!!』
ちょっと途方にくれていると、クオンの声と共にドーーンと黄金色のもふもふが俺の上の真っ白なもふもふに飛び掛かり、ゴロゴロと転がって行った。
その豪快な助け方?にポカンとララと顔を合わせ、やっと起き上がり、胡坐をかいてとりあえず両手に水を魔法で出して顔を洗う。
涎まみれな顔をもう見られたけど、さすがにそのまま自己紹介するのもな……。よし、とりあえず仕切り直すか。
「あ、あの、ごめんな。ええと、俺はイツキ。ええと、ララ、と呼んでいいかな?俺達は冬の間同居するのは歓迎するけど、君はその、大丈夫そうかな?」
驚きで毛が逆立ったままのララに、とりあえず座ったまま声を掛けてみる。
『……え、ええと、あの、その、グーラのララ、です。あ、あの私が、こ、こんななので、ハーツと、遊べ、と。あの、それで、あの』
もう話せる、ってことはハーツより年上なのかな。ああ、人見知りなこの子の為に親御さんが隣の守護地にハーツが生まれたのを知って子供同士で遊ばせて人見知りを直そうとしたとかかな。だからハーツとはいわば幼馴染だが、その人見知りが故にここに来るのは去年は見合わせていた、と。なるほど。
「ああ、分かったよ。ゆっくりでいいから、落ち着いてな。ここものんびり慣れてからでいいから、今日はまだ来てないけど、ケットシーとかクー・シーの赤ちゃん達も来るから、お姉さんとして一緒に遊んでやってくれな」
ここではまだ見かけていなかったが、住んでいたアパートでたまに面倒を見ていた子供たちの中にも人見知りが凄い子がいた。でもその子の弟が出来たら、はりきってしっかりしたお姉さんになったんだよな。なんとなくこの子もそんなタイプな気がするしな。
『お、お姉さん?私が……』
おどおどとあちこちに泳いでいた目をまん丸にして、太くて長めの尻尾をピンと伸ばして膨らませる姿がとても可愛らしくて、つい手がわきわきしてしまった。
「うん、お姉さん。だから」
シュッ!コロン。
『キャアっ!!』
やっと目線があったララに、ゆっくりと話しかけようとすると、今度は白い影がララの斜め後ろからララに飛び掛かり、押し倒した。
「うわっ!こらっ、シュウ、何しているんだっ!この子は今日から親御さんから離れて来たばかりなんだぞ!どうしていきなり飛び掛かったんだ」
グルグルグル、と喉を鳴らしながらララに押しかぶさって頭をこすりつけているシュウの姿に、慌ててシュウを抱き上げて離す。
ララはあまりにも衝撃が大きすぎたのか、押し倒されたまま硬直していた。
ピキン、と瞬きもせずに転がったまま固まるララに、慌てて声を掛ける。
「うわっ、ララ、大丈夫かっ!もう、シュウ、どうしてそんなことしたんだ!」
『ぶみゅっ!みぎゃう、みゅーうぅう!』
腕の中で暴れる中型犬サイズのシュウを、必死で抑える。小さくても白虎、そろそろ俺では抑えられなくなってきていて、全身を使って抑えないとすぐに逃げられてしまうようになってしまった。
「ご、ごめんな、ララ。この子はシュウ。白虎の子供なんだけど、どうも好奇心旺盛で、気になると一直線に突進してしまうんだ。ほら、シュウ、落ち着けって。なんでそんなに興奮しているんだ!」
何度声を掛けても『みぎゃみぎゃ』鳴きつつ暴れるシュウに途方にくれていると。
『シュウ、なんか自分と似た子がいるーーっ!って嬉しかったみたいだよ?でも、シュウ、イツキは私と朝の挨拶をするの!だからどくのっ!!』
『ワフゥ?この子、だれ?』
うわわわ、クオンとハーツが戻って来ちゃったか。こら、ハーツ、シュウに顔を寄せて匂いを嗅がないの!さすがにシュウもハーツの方が大きいからか、ちょっと硬直しているぞ!まあ、暴れなくなったから助かったけど。
「ああ、ハーツは初めてだよな。この子は白虎のシュウ。ここに来る神獣、幻獣の子の中では一番小さい子だよ。ちょっと元気が良すぎる子なんだけど、ハーツもよろしくな」
お互い逆向きに小首を傾げながら顔を見合わす姿に、これはもしかして予想通りハーツがシュウの抑え役かいい刺激になってくれるか!と心内で期待しつつ見守っていると。
『イツキ、その子、だぁれ?』
「あっ!!ごめんなララ、大丈夫か?クオン、この子はグーラのララ。ハーツの近所の守護地の幼馴染で、今年からハーツと一緒に冬の間預かることになったみたいなんだ」
クオンがまだ倒れたまま硬直しているララを不思議そうに見ていることに気づき、慌てて起こそうとして手の力を緩めた瞬間、シュウが腕の中から消えた。
「えーーーーっ!ちょっと、シュウ、どこ行ったんだっ!」
『あそこだよ、イツキ。なんかハーツと一緒に駆けていっちゃったの。イツキ、イツキ、おはよう、なの!』
「あ、ああ、クオンおはよう。って、ちょっと待っててな。ララ、ララ、大丈夫か?」
広場の中を風のように走り回る二つの残像に思わず遠い目をしつつ、胸元にすり寄って来たクオンの頭を撫で、そしてまたハッとララのことを思い出して慌ててそっと腕を伸ばして倒れた体を起こした。
『……え?い、今、え?何が……?』
「ああ、本当にごめんなララ。シュウは元気が良すぎるけど、悪気はないんだ。後でララに飛び掛かるなって言い聞かせておくから、できたら嫌わないでやってくれな」
まだ呆然としたままのララを心配しつつ、甘えてくるクオンを撫でているとケット・シーの子供達を連れてシンクさんがやって来た。オズの様子を聞きに来たシンクさんにララを紹介すると。
『ほお、グーラ様のお子様ですなぁ。雪がもっと積もるようになると来れませんが、それまでは私どもの子供達もよろしくおねがいしますなぁ』
「あ、あの、こちらこそ、その、よろしく、です」
ミーミーとよちよち這いながら近づいて来る秋生まれのケット・シーの赤ちゃん達の姿に正気を取り戻したララが、おどおどしながらも相手をしだした。
その尻尾がわさわさと少し振れているのを見て、尻尾の本能は犬よりなのか猫よりなのちょっと気になってしまった。
でも、『お、お姉ちゃん』と呟いて鼻を寄せて挨拶をする姿はとても尊いものだった。
思わずほっこりとその様子をシンクさんと眺め、そしてオズの様子を報告する為に家の中のロフト部屋へと向かうと。
ベッドに横になったままのオズに寄り添うキキリとユーラ。それに……。
「なっ、なんでこんな場所にまで入ってるんだ、ハーツ、シュウ!」
思わず大きな声が出そうになり、慌てて手で口を押えつつも小声で叫ばずにはいられなかった。なぜならばそこには、ベッドにいるオズを不思議そうにふんふん匂いを嗅いでいるハーツ、それに猫耳を見て不思議そうに見てお座りしつつ小首を傾げるシュウの姿があったからだった。
*****
もふもふだったような、そうでなかったような?
とりあえずシリアス風味は微のまましばらくいきます!
タイトルに迷ったので成長まで行ったのか?と自分で突っ込んで1にしました。
次は成長……なのか?まで行けるかと。
今週はちょっとバタバタしそうなので、次の更新は水曜か木曜かと思います。
どうぞよろしくお願いします!
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