第40話 雪遊びをしてみるようです

 興奮して走り回るハーツを捕まえて自己紹介をするまで、親のフェンリルが去ってからそれなりに時間がかかり、冬になる前はもう皆で水遊びをしていた時間くらいになってしまった。


「じゃあ、俺はイツキだよ。これから冬の間は一緒に暮らすことになったみたいだから、よろしくな!ロトムとクオン、それにライは夜は家に帰るけど、キキリは一緒だよ。家には他にもフェニックスの子供達がいるから、後で紹介するからな」

『ワンッ!』


 お座りして尻尾を高速回転させて雪を飛ばしまくっているハーツは、狼というよりも見た目はまんまサモエド犬だった!

 子供特有のむくむくした身体に、真っ白のふっさふさのもふもふな毛がもさっとしていて、クオンと同じくらいの大きさでころころとしている様がとっても可愛い。


 そうはいっても大型犬よりも更に大きくなるからか脚はとても太くてがっちりしているし、目だけ見れば鋭い。でも、今もはずむようにお座りしながら首を左右に楽しそうに降っている姿は、まんまかまってかまってと言っているサモエド犬の赤ちゃんワンコにしか見えない!!


 思わず手を伸ばして頭を撫でたら、ふさぁっとした感触が地肌に近づくにつれてもっふもっふな手触りになり、もうたまらん!とそのまま抱き着きながら全身をもふもふしてしまった。

 すると、最初は楽しそうに「キュンキュン」鳴いていたのに、次第に興奮したのか、気づくと押したおされて顔をべろんべろんに舐められていた。


「うわわっ!ちょっ、ちょっと待てって、ハーツ!……うわっ!目が開けられないからっ!!」


 俺が撫で始めた頃から何かを感じたのか、しっかりライは飛んで避難していたぞ!でも、おいっ!見てないで助けてくれっ!


 そう思ってチラチラとキキリ達の方を見ているのに、キキリは澄まして見ているし、ロトムは座ってブンブン尻尾を振っている。あれ、次は俺の番!とか思ってないよなっ?そしてクオンは……。


『キャウゥウッ!ず、ずるいっ!私も、まざるのっ!』


 落ち着かずに俺が撫でている時からちょろちょろ動いていたと思ったら、そう叫ぶとピョーンッと飛んで俺の腹の上に着地して、ハーツの隣に顔をねじ込んで俺をペロペロ舐め出したのだ!


「お、おいっ、やめろ、やめろってばっ!!」


 結局、ハーツとクオンが満足するまでそのまま舐められ続け、起き上がった頃には足にすっかり雪が積もっていたのだった。




 なんとか雪を魔法で溶かして顔を洗い、まだ落ち着かないハーツを連れて日課の世界樹に魔力を注いで家に戻ると、聖地よりも雪が積もっている広場にまた興奮したハーツが走り出し、それにつられたのかロトムとクオンまで駆け出した。


「……なあ、キキリ。皆元気だなぁ。もしかしていつもは運動足りてないのかな?」


 寒くなるまでは泉で水遊びしたり、その後も聖地の花畑で走ったりしていたが、ここでの遊びと言ったら後は畑仕事か森への散歩くらいだった。

 いや、最初は色々考えたんだけどな。遊びと言ったらおいかけっことかかくれんぼ、それに缶蹴りとかな!


 でも、子猫と子犬達もいたし、大きさに差がありすぎて追いかけっこは無理だし、かくれんぼもな……。どこに入り込むか。缶蹴りも同じ理由で無理だし、なら、だるまさんがころんだとかはどうか?と提案したら、まだしゃべれない子が鳴き声だし、動きを止める、という説明も小さい赤ちゃんたちには無理だろうってドライに言われて断念したんだよ。


 ああ、でも、ドライとツヴァイに縄を嘴で回して貰って、皆で大縄跳びなんかいいかもしれないな!温かくなって皆が揃うようになったら提案してみようかな。

 でも今は冬だし……。ああ、でもこのメンバーなら雪遊びならいいかもしれないな!


「おーい、皆!走っているなら、どうせなら雪遊びをしないか?」

『雪』『遊び?』

『キュ?雪で、遊ぶ、の?』

『ピューイ?』

『ギャウゥウ?』

『クーーン?』


 声を掛けると、ピタっと止まって皆で小首を傾げる姿が、もう……。くうぅ。うちの子達、可愛すぎるなぁ。


「そうだよ。雪合戦……は、俺が危ないから、そうだ!かまくらを作ろう!皆で入ったら温かいしな!」

『かまくら』『って何だ?』

『入るー?何?』

『あたた、かいの?』

『ギャーウ?』

『アウン?』


 あああ、また……。ああ、かわええなぁ。


「うん、かまくらっていうのはね、雪を積んで固めて、そこに穴を掘って中に入れるようにしたものだよ。ええと、こんな感じのの、大きいのをここに作りたいんだ。どうかな?」


 口でどう説明していいか迷って、しゃがんでその場で小さなかまくらの見本を作って見せる。寄って来た皆が囲んで、ふんふんと頷きつつ見ている姿もかわいい。


『やる!』『やるぜ!』

『おもしろそう!やりたいっ!』

『……僕にも、出来る?』

『ギャウギャウッ!!』

『ワンッ、ワンッ!!ハフハフ、ワンッ!!』

「ライには、空から監督をして欲しいんだ。こういう形じゃないと、崩れちゃうからな。しっかりと上から見て、指示してくれな!」

『!!や、やるっ!僕、がんばる』


 自分にも一緒に出来ると聞いて、興奮したライがピューイと鳴きつつあちこち飛び回る姿を見て和んでから、号令をかけた。


「よーし!じゃあ、ロトムとクオン、それにハーツは向こうから雪をかいてこっちに寄せてくれ。キキリは皆が集めた雪を押して、ここに積んでいってくれな。そしてライはその監督な!細かい場所は俺がやるから、積み終わったら皆で穴を掘るぞ!よし、やるぞーーー!」

『『『『『『おーーーーっ!(ワンッ!)』』』』』』


 おー!と右手を上げて号令すると、皆も右脚を上げて返事を返してくれ、かまくら大作戦の開始となったのだった。



 結局、ロトムは戦車のように雪をかいて集めて来てくれたが、クオンとハーツは途中で雪をかくのが楽しくなったのかしっちゃかめっちゃかにあちこちで雪かきをし出し、それをキキリが走り回って集めてくれた。

 その雪を俺が頑張って固めながら丸く形を整えていると、飛行訓練から戻って来たアインス達に「昼食!」と言われてご飯となった。


 その後は興奮して疲れたのかキキリとアインス達以外の子供達は昼寝に入り、その間にアインス達に説明して重ねた雪の表面を少しだけとかして固めるのを手伝って貰った。

 そして昼寝から目が覚めた子達が次々と作業に戻り、なんとかアインス達もかがんで寝そべれば入れるくらいの雪を積み上げた。


「よーし!次はここから掘るよ!ここだけは固めないようにしてたけど、硬いから爪を剥がさないように気をつけてな!あと、後ろはある程度の厚さを残して掘るように指示するから、興奮して張り切りすぎないように!」

『『『『『『『『『おーーーーーっ!!(ワンッ!)』』』』』』』』』


 そうして最初に雪山に飛びついたのは、ハーツとクオンだ。二人は小さいから一番下を雪かきのように前脚で掘って行く。その二人をまたぐように上をツヴァイが嘴を高速につついて掘り、その隣で下はロトムとキキリが、上はアインスが掘り始めた。


「ライも監督なー。変な方向に掘り進み出したら警告してやってくれな」

『ピュイッ!』


 疲れたら抜けて休憩しつつ交代で掘り進め、暗くなる前にこうしてかまくらは完成した。

 ただ高い場所までキレイに掘るのは流石に疲れて諦めたから、アインス達は一人が寝ころんではいるのが精いっぱいの大きさとなったが、アインス達以外は全員入れる大きさだ。皆でくっついて入ると、何故か楽しくなって笑ってしまった。


 

 そうしてロトム達にお迎えが来て皆が帰った後、夕飯を食べて寝るか、となった時、ハーツは寝るのも雪の上がいい、ということで、結局かまくらはハーツの寝床として活用されることになったのだった。


 あのもっふもふな毛並みを抱きしめて寝れないのは残念だったけどな!!






****

サモエド犬、かわええですよねぇ。一度だけでいいので、もふもふしまくりたいです!

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>


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