第34話 とんでもないことを聞いたようです

『おお、スゲーーーー!ドラゴンだーーー!』

『ドラゴンか!今度狩りを一緒にやろうぜ!』

『ほほう。古龍の子供なんて、滅多に、というかほぼ見ることなど僕達でもありませんよ。さすがイツキですね』


 聖地でいつもの日課をこなし、家へ戻って皆がお昼寝をしている時にアインス達が戻って来た。初日から長時間飛ぶのは羽に負担がかかるから今日は終わりだそうだ。

 そこで一人寝ておらず、相変わらず俺の頭の上にいたキキリをアインス達に紹介した。

 いつものように走り回るアインスに張り切るツヴァイ、そして冷静に分析するドライに、キキリは片手を上げて返事を返した。


『ギャウッ!ガウン!』

『おうっ!よろしくな!』


 ……ツヴァイが満面の笑みってことは、狩りに一緒に行くってことか?生まれたばかりなのに、やっぱり本能か何かなんだろうか。


「なあ、ドライ。会話はできてるのか?」

『ああ、出来てますよ。というか、ドラゴンですから。確かに生後一月も経っていないようですが、人格はしっかりありますよ?』

「ほおー、そうか。キキリ、凄いな!」

『ギィギャゥ!』

『フフフ。照れているようですよ?』


 おお、照れているのか!キキリ、可愛いな!聖地でも子供達にそっと優しく怖がらせないように接していたしな。気遣いもできるし、本当にしっかりともう人格があるんだなぁ。あれ?でも……。


「なあ。でも、キキリってまだ飛べないよな?狩りをするにも、そうしたら動くのが大変なんじゃないか?」


 聖地では後ろ脚で立って歩いたり、四つ足で水辺をピチャピチャしたりしていたけど、どちらもポテポテ歩いていたよなぁ。


『ギューギャウッ!ギャウーンッ!!』

『イツキ……まあ、そりゃ飛べるようになるまではもうちょっとかかると思いますが、走ることはできますよ』


 キキリに頭をペチペチ叩かれながら抗議されたが、でも、いくらドラゴンでもこれだけ小さいのだから、やっぱり想像できないな。

 と、思っていたら、いきなり頭上の重みが無くなった。


「えっ?キキリ?」


 慌てて後ろを振り返ると、四つ足で着地したキキリがいた。そして俺の顔を見つめると、「ギャウ!」と一言鳴いたと思ったら、一瞬で姿がブレた。


「へえっ!?なっ、どこにっ!!」


 狼狽えてあちこち見回していると、右、左、と残像のように一瞬だけ姿がハッキリと見える。

 うわぁあああっ!全く目で追えないんだけど!……ハア、すごいな。さすが小さくてもドラゴン、なんだなぁ。まあ、キキリは可愛いから、怖いとは思わないけどな。


『ギャオウッ!!』

「すっごいな、キキリ!ごめんな、キキリの力を侮っていたよ。俺の護衛をしてくれるんだもんな。これからよろしくな!」

『ギャウギャウッ!!』


 うれしそうにくねくね動くキキリが可愛すぎる。でも、アーシュに護衛だと言われてそうか、とは思っていたけど、こうやって力の一端を見せてもらうと安心したな。

 まあ、本当は護衛なんて必要な事態にならないのが一番なんだけどな!


 思わずしゃがんで後ろ脚で立ち上がっても小さいキキリの頭をなでなでしてしまった。キキリはうれしそうだったぞ!




 そうしてキキリが一緒に家で暮らすようになって十日後。すっかり涼しくなり、朝起き出すと肌寒くなり一枚多く上着が必要になっていた。

 因みにキキリは寝る時は、俺の隣で寝ているぞ!アインス達に囲まれた真ん中に埋まって、キキリもほっかほかで寝ているからか朝起きてもご機嫌だった。


 五日前にドラゴンがまたいきなり現れて、キキリのそんな顔を見ると満足気に頷いて、ちょっとだけ触れ合うと帰って行った。

 「次は一月後でいいな!」と言われた時は、さすがに今度は「はい」としかいいようがなかったよ。キキリが一緒に暮らすのに支障は全くなかったからな!


「さあーて!今日は聖地から戻ったら、麦の収穫をするぞ!しっかりと穂が実って、一安心だよ」

『それはいいけど、お腹減ったぞーーーー!早く朝食の肉を焼いてくれよーーー!』

「おう、はいはい。キキリは今日はどうする?肉、焼くか?」

『ギャウン!!』


 キキリは最初は生肉を食べていたが、アインス達が美味しそうに焼いた肉を食べるもんだから、今ではほぼ焼いた肉をアインス達と一緒に食べるようになっていた。


 いつものように竈でどんどん分厚いステーキ肉を焼き、それを皆の前に置く。

 キキリも身体の大きさの割には食べるが、それでも流石にステーキ肉を二枚だけだ。なのに、最近焼いている肉の量が減っている気がするんだよな?


『どうしました、イツキ。不思議な顔をして』

「ん?なんかアインス達、最近食べる量が少なくないか?いや、飛行訓練の時に狩りをして食べているのかもしれないけど」

『ああーー。俺達も、大分大きくなってきたからなーーー。やっと馴染んで来たから、少しずつ食べる量が少なくても良くなってきているんだぞーーー!』

「はあ?なんで大きくなってきたら少なくなるんだ?普通、大きくなった増えるだろう?お前達、どんどん身体が大きくなっているし」


 最初は俺と同じくらいの大きさの雛だったのに、今では俺の倍近くある。すっかり話すのにも見上げるようになっているんだよな。


『いや、だって父さんは食事、食べていないだろう?あの身体に見合う分だけ食べたら、大変だって』

「ああっ!そういえば、必要ないって言ってたな!……じゃあ、アインス達も、その内食事はいらなくなるのか……」


 うわぁ……。確かに元々アインス達の子守りとしてアーシュに摑まったんだから、アインス達の成長は歓迎するべきなんだろうけど、なんだか寂しいな……。


『いやいや、いらなくなるまでには、あと何十年もかかるぞーーー!ただ、身体が成長してもこれ以上は食事の量はいらなそうだけどなーーー!風の精霊の力も、大分馴染んで来たし、後は水と土だけだしなーーーー!』


 ん?どういうことだ?確かに飛行訓練をしているから、風の精霊、シルフの力を感じて飛べってアーシュが言ってたのを聞いたことはあったけど。でも、アインス達はフェニックスだから、他の属性の力を使えない訳ではないって言ってたけど、でも主属性は火だよな?


『ああ、イツキ。フェニックスは神獣ですから、どの精霊とも親和性があるんですよ。でも、育つまでは自分の持つ力、火の力は自在に使えますが、他の属性の力が身体に馴染まないんです。ホラ、使い方は親から継承していますが、子供がいきなりやり方を知っていてもすぐに自在に使いこなすことは不可能でしょう?』

「あ、ああ。そう言われたら、そうだよな」


 俺もテレビで見てたから味噌も醤油も作り方は知っているけど、実際に作れるかと言ったら無理だもんな。そうか。知識だけがあっても、使えるようになるには訓練が必要だわな。それが「身体に馴染む」ってことなのか。


『風の力が馴染んだから、俺達もこれだけ大きく成長したんだからな!水と土の力に馴染んで行けば、父さんみたいに大きくなるんだぞ!』

「はあ?ど、どういうことだ、ドライ」


 今、さらっとなんか、とんでもないことをツヴァイが言わなかったか!!






****

麦の収穫を書く予定で……ついストーリーの方を進めてしまいました。

まあ、いいとこで切りましたが( ´艸`)

タイトルを毎回最後に修正していたり……('ω')

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