第33話 子ドラゴンが家族になったようです
『ではな!五日後に様子を見に来るから、何かあったらその時聞いてくれ。元気にしているんだぞ、キキリ』
『ギャオウッ!!』
俺が茫然としている間にドラゴンとアーシュの間で話がつき、子ドラゴンの呼び名、キキリを結局ずっと預かることになっていた。
いや、預かる、っていうか、これ、里子とかじゃないよなっ!?なんか、そんな感じで今、話してなかったか!!
それを当の本人の子ドラゴン、キキリは、というと。
『ギャウギャウー♪ギャウー♪』
と、全く気にしてない様子だった。
「なあ、アーシュ。結局どうなったんだ?」
『ん?ああ、その子供、キキリはお前の護衛として預けるそうだ。子供といってもドラゴンだからな。ここいらの魔物や動物なら敵にならん。それにドラゴンだから、成体になるまでそれこそ何十、何百年もかかるから、まあ、当分このサイズだぞ。ご飯は聖地の魔力でほぼ足りるだろうが、俺が獲って来る獲物をあげてやれ。自分でも獲って来るだろうがな』
うわっ、そうだよな、ドラゴンだもんな……。生後一月たたずでも、狩りも自分でできるのか……。それに成長に何十、何百年もかかるなら、当分このサイズ、ってことだな。まあ、このサイズっていっても、俺は未だに姿を見ていないんだけどな!!
両手でクオンを抱っこしているので、肩に乗るキキリを抱っこする訳にもいかないし、本人が何故か気に入って下りて来る様子もない。
ただ親ドラゴンが飛び去ると、威圧が緩んだのか周囲で縮こまっていた子供達もやっと一息つけたようだ。
「……ふう。まあ、じゃあキキリはこれから家族として一緒に暮らす、ってことでいいんだな?俺、ドラゴンのことなんて何にも知らないけど、そこは大丈夫なのか?」
『フン。あいつはあんなだが、古龍の内でも最古の竜だ。イツキには我らの生態を確かドライが説明していなかったか?親の知識を継承して生まれるんだ。生後間もなくても、ドラゴンともなれば全て自分で分かっているさ』
「ふおおおぉおっ!こ、こんな小さいのにっ!す、凄いな……。じゃあ尚更子守りなんていらないんじゃ……」
だって、生まれながらに何百、何千年分の知識がある、ってことだもんだ!俺の方が色々教わりたいくらいだぞ!
『知識はあるが、性格はまだ子供だからな。戦闘面でお前はからっきしなんだから、それ以外はお前が色々と面倒をみてやれ。とても気に入られたようだしな』
「……う、わ、分かったよ。じゃあ何か分からないことがあったら、アーシュに聞くからな」
『ああ、それでいい。まあ、子供達もそろそろ俺の知識に馴染んでいるだろうから、子供達でもある程度分かるだろうから、何かあったら子供達にでもとりあえず聞けばいい。では、俺は子供達が待っているから戻るからな!』
はあ?なんか今、さらっと重要なこと言わなかったか!
言うだけ言うとさっさと飛んで行ってしまったアーシュに内心で盛大に文句を言うと、気を取り直して頭上のキキリに挨拶をすることにした。
「じゃあ、キキリ。今日から家族だな。俺はイツキだ。よろしくな!」
『ギャウーーー!!』
顔は見えないが挨拶すると、楽しそうに頭をポンポンと叩かれた。全く痛くはないが、肉球とは違った柔らかい感触がした。
「今日からキキリは俺と暮らすことになったから、皆も宜しくな!な、キキリ。皆のことも守ってくれよ?」
『ギャウギャオウ!』
当然!とばかりに鳴き声の返事が返って来て、萎縮していたケットシーとクー・シーの子供達もホッと息を吐いていたぞ。
『キキリは家に帰らないの?』
「ああ、サシャ。なんか、寝るとずっと寝ちゃうから、送り迎えが出来ないんだって」
『お父さんに会えなくて、寂しくない?』
『ギャウッ!ギャウギャウ♪』
「ああ、寂しくないみたいだな。皆もいるし、楽しいんじゃないか?」
『ギャウゥ!』
うんうん、と頷く気配がすると、サシャも安心したようだ。すると。
『キュアッ!!キュアーーンッ!ンナウッ!!』
「お、おおおっ、どうしたんだ、クオン。今まで大人しかったのに」
『おそらく、ずっと一緒なんてズルイ、自分もずっと一緒にいたい、って言っているのかと』
「おお、フェイ、通訳ありがとうな。クオン、お前、きちんとお母さんが毎日来てくれているだろう?帰らないと、家族が悲しむだろうが」
『クキューーッ……キュオンッ!!』
そっとフェイを見ると。
『そうなんだけど、ずるい!ですね。クオンは貴方とずっと一緒にいたいみたいですよ?』
『キュンッ!!』
「んー……、じゃあ、お母さんに許可がとれたら、たまにならお泊りしてもいいぞ。ただし!ちゃんと許可を貰ってからな!」
『キユアンッ!』
クークーキューキュー唸っていたクオンが、お泊りしていい、と言った瞬間うれしそうに尻尾をパタパタ振り出してご機嫌になった。
くっ、かわええ。可愛すぎるぞ、クオン!
またギューッと抱きしめてクンクンしてしまった。その間キキリは俺の頭上でバランスをとって全く落ちる気配もなかったぞ。
ドラゴン襲来!というビックリがあったが、そのまま世界樹へ向かいいつものように泉に到着した。
「そろそろ水が冷たくないか?大丈夫か、皆?」
『まだそこまで冷たくないから大丈夫だよ?ねー?』
『『『『ニャウ!』』』』『『『ワンッ!』』』
サシャの声に子猫と子犬達が元気よく鳴いて返事をした。ふ、と気になって泉に目を向けると、ウィンディーネ達が楽しそうにクスクス笑っている気配がして、彼女達が子供達の為にどうやら水温を調整してくれているようだ、と気が付いて慌てて頭を下げた。
『ギャウ!』
さすがにいきなりの動きにバランスを崩しそうになったのか、テシテシと頭を叩かれてしまった。
「ごめんごめん。ホラ、キキリ。顔を見せておくれ」
そのままクオンを下へ下し、手を頭の方へ上げると、素直にキキリが移動して来てくれた。
そうして両手で抱えて目の前にプランと下げたキキリは、鱗は鈍い青銀色をしていて、お腹側の柔らかい部分はクリーム色をしていた。くりっとしたつぶらな瞳は金色だ。そして頭上にまだ小さな二本の角があり、金の鬣がちょこんと生えていた。
うん、お腹は後頭部で感じた通りぽっこりしててかわいいな!まんま西洋ドラゴンって感じだ!うわぁ、本当にドラゴンの赤ちゃんだ!!
『グウ?』
じーーと見つめていると、何?と言わんばかりに小首を傾げた姿には、どう猛さは欠片もなくてただただ可愛いだけだった。
「くー、キキリ、かわいいな!!これからよろしくな!」
思わずさっきクオンにしたように、ギュッと抱きしめてしまった。ちなみに鱗はまだそれ程固くないのかトカゲのような感じで柔らかかったぞ!冷たくもないしな!
『ギャウギャウッ♪』
楽しそうにバタバタ手足を振る姿を見ていると、ドラゴンの子だということも忘れそうになりながら、これならこれから家族として一緒に楽しく暮らして行けそうだな、と思ったのだった。
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外見だけ出して終わりになってしまいました……
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
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