第31話 とても凄い物をいただいたようです

『紅葉をイメージしてしまったらキラキラが赤かった、と?フン。世界樹は紅葉せんが、まあ、気にするな。その調子できちんと毎日魔力を注げ』


 毎日の日課の世界樹への魔力注ぎで、昨日赤く煌めいたのがずっと気になっていて、翌朝獲物を届けに来たアーシュに聞いてみた。その答えが気にするな、だ。


「分かったよ。紅葉しないなら、緑の葉でイメージするな。……そういえば世界樹って落ち葉とか落ちているの見たことないもんな」


 もう三か月毎日行っているが、そういえば今だに枝どころか葉っぱが落ちているのを見たこともない。


『怖いことをいうな。世界樹の落ち葉がほいほい落ちるようになったら大変だろうが。お前は余計なことを考えずに、日課としてやればいいんだ』


 うおお。もしかして、世界樹に気に入られるとお願いすると葉っぱが落ちて来る、とかいうアレか?この分だと、葉っぱにも凄い効能が秘められていそうだよな。


 ふむふむ、と勝手に脳内でお約束を思い浮かべて納得していると、アーシュに胡散臭い物を見る目で見られて念押しされてしまった。当然、今日行ったらちょっと拝んでみよう、と思っていることは内緒だ。



『クーーーーン!キュッ!』

「おー、おはよう、クオン。今日も元気だな。ほーれほれ、もふもふー」


 最近の日課になりつつある、クオンの飛びつきから抱っこ、そして撫でまわしてもふもふを堪能する。ふわっふわな尻尾もこっそり撫でたりな!


 今日はアインス達はアーシュによる飛行訓練の日なので、ここで別行動だ。

 皆が集まるのを待っている間に訓練を始めたのか、空を飛ぶアインス達の姿を見上げつつ皆で聖地へ向かう。


『今日は、私、一番お姉ちゃんだから、頑張る』

「サシャ、お願いな。小さい子のこと気に掛けてくれるから、いつも助かっているよ」


 歩きながら少しかがんで最初よりも大分身長が高くなったサシャの頭をそっと撫でる。目を細めてごろごろ喉を鳴らすのが可愛すぎる!!


「フェイも、飛行訓練の方をするか?アーシュならペガサスの飛び方も教えられるんじゃないか?」

『ピピピ!!』

「お、ライもやりたいかー。そうだな、ライのことは先にドライに頼もうか。ドライの飛び方はスマートだからな」

『……群れでは訓練を始めているのですが、そうですね……。少し、飛び方を見ていただこうと思います』


 そういうとバサッと優雅に翼を広げたフェイの優美な姿に思わず見とれていたら、肩にとまったライがパタパタと羽ばたくとフェイの方へと飛んで行く。

 その飛行はまだ頼りないが、小柄なだけに上手く風に乗れていた。


 そのまま行けるか、と見守っていたライがフェイの元へ到着する前にグラリとバランスを崩し、急降下しそうになった時、フェイがそっと頭を差し出して受け止め、そのまま背中へと乗せた。


「おお、フェイ!さすが!ライ、大丈夫か?ライはまだ小さいから、焦らなくてもいいぞ?」


 ちょっぴりしょんぼりして見えるフェイの背にとまったライの頭をそっとなで、胸元をくすぐる。


『……ピィ』

『フフフ。我々は急いで成長しないとならない動物とは違いますからね。ライ、イツキの言うように焦ることはないのですよ』

『ピ!』


 フェイの言葉への返事は、少しだけ元気を取り戻していた。


 そのまま小さい子が遅れていないか見ながらのんびり歩き、泉に着くとフェイとサシャに小さい子を頼みいつものように世界樹へ向かう。


『キュンッ!』

「おお?今日はクオンが一緒に行くのか?いいぞ、一緒に行こうか」


 足元を肉球でポンポン叩かれて下の見ると、クオンが立ち上がって小首を傾げて俺を見上げていた。思わずギューッと抱きしめたくなったが、ぐっとそこは我慢だ。

 クオンをずっと抱っこしている訳にもいかないしな!クオンも歩きたいだろうし。


『クー、キューアッ!キュウー!』

「くくく。楽しそうだな、クオン」


 スキップするように跳ねながら歩くクオンに、思わず笑み崩れてしまいながらのんびり歩き、いつもの場所に着く。


「ちょっと待っててな。日課をするからな」


 でも、今日はその前に。

 見上げても全く葉っぱどころか枝も見えないが、上を見上げると手を合わせて目を閉じる。


(世界樹の葉っぱを見たいので、お願いします。葉っぱを見せて下さい)


 世界樹の葉の効能を知らないし、ただ下さい、というよりも、魔力を注ぐ時のイメージを具体的にしたい、と望んだ方がいい気がして、素直にそう祈ってみる。


 しばらくそのまま祈り、ゆっくりと目を開けると上からヒラヒラと舞い落ちてくる何かが見えた。


 うおおぉおっ!マ、マジか!本当に、願うと叶う系なのか!?


 そのまま茫然と見上げている間に、ゆっくりと風に舞いながら落ちて来た物が見えてきた。

 それは、楓の葉のように切れ込みが入った大きな葉っぱだった。

 ヒラリ、ヒラリと落ちて来た葉は、俺の顔の前で揺蕩うように一度停滞し、そしてゆっくりと広げた手の平の上に落ちて来た。


「うわぁ!あ、ありがとうございますっ!毎日、誠心誠意、魔力を注がせていただきます!!」


 両手に載せた葉を捧げ持つように頭上に掲げ、思いっきり頭を下げてお礼を叫んだ。


『キュゥー?』

「お、クオン、ごめんな、待たせて。ホラ、これが世界樹の葉っぱだぞ!凄いな!」

『クー!』


 下でピョンピョン飛びながら俺を見上げているクオンに、しゃがんで貰ったばかりの俺の両手程もある世界樹の葉っぱを見せると、クオンも興奮したようにクルクル回り出した。

 揺れるもっふもふの尻尾に目が釘付けだ!


 一しきり二人ではしゃいだ後は、いつもの場所で世界樹の根に手を振れ、その逆の手に貰った葉っぱを乗せ、目を閉じていつものようにイメージする。


 枝が伸びて、光合成をする葉っぱはこの葉っぱだ!


 風にそよいでヒラヒラと舞っていた葉を思い出しながらイメージして、精一杯気持ちを込めて魔力を注ぐ。


『キュオン!』


 いつもよりも心もち限界ギリギリまで魔力を注ぎ、クオンの鳴き声に目を開くと。


「うわっ!凄いな。いつもよりも、キラキラ輝いて……」


 昨日は赤く煌めいていたが、今日はいつもよりも広い範囲で、いつもよりも金色にキラキラと輝いていた。うっすらと透けて見える幹が、更に透けて内部まで見えるようだ。


 キラキラが収まるまで、クオンと一緒にその光景をうっとりと眺めていたのだった。





****

イツキ は 世界樹の葉 を 手に入れた!(ファミコンのゲーム風に)

この葉を普通は調合とかして薬にしますが、イツキは調合できない残念仕様です( ´艸`)

次は新しい子が出る予定、です(た、多分)

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>

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