第29話 行訓練が始まるようです

 昼寝から皆が起きた後はまた歩いて家へ戻り、皆で畑を耕して水を蒔いた。


 俺だけでも良かったんだけど、子供達がやりたがったんだよな。でも、泥だらけになりながら、楽しそうだったぞ。まあ、作業をやったのは、ほとんどノームとスプライト達だったけどな!

 セランは土を掘り起こして畝にして種を蒔くのを不思議そうに眺め、俺が発芽の魔法を使うと大喜びして走り回っていた。


 最後はお迎えが来る前に、泥だらけの体を井戸の水で洗ってまたびちょびちょになったけどな!ただ泉のウィンディーネ達と仲良くなってから、井戸にも一人ウィンディーネが在中してくれているので、皆の水をささっと払ってくれたから助かったけどな!




 そうしてアインス達がわくわくしながら待っていた翌々日。とうとうアーシュによるアインス達の飛行訓練が始まる日となった。

 その日はまだ朝陽が差し込む前からバタバタと騒いでいる音で目が覚めた。朝食の肉もアインス達はいつも以上にもりもり食べ、それでいてうとうと居眠りもせずにバタバタ走り回ってアーシュが来るのを待っていた。


 そんな様子を見つつ俺が朝食を食べていると、空からバサバサという羽音とともにアーシュが降りて来た。

 いつもアーシュが来てもうれしそうな様子を顔に出さない(そういう年頃なのか?)のに、今日は抑えきれず顔を輝かせて走って寄って行く三人の姿が微笑ましい。


『父さん、父さんーーー!今日から飛行訓練をつけてくれるんだろーーーーっ!』

『なあなあ、早くやろう!俺、朝からずっと待ってたんだからな!』

『いやいや、まだ朝だから。でも訓練が待ちきれなかったのは僕もだけど』


 おーおー、ドライまでなんだかキラキラしているぞ。まあ、ずっと飛びたそうにしていたからなー、アインス達は


『おお、子供達よ。元気そうだな。では、そうだな……。イツキ、まだ倒木は余っていたか?』

「ん?ああ、薪にも使うし、まだ確かバッグに入っていたな。使うのか?」

『ああ。ふむ。そこの木、そうだ、そこの木の又に倒木を一本広場から立て掛けてくれ』


 アーシュが示したのは、アーシュが今いる広場から聖地への道の脇に立つ、それなりに大きな木だ。丁度二階くらいの位置で木が二又に別れている。

 アインス達の早く!という目線に負け、急いで朝食の残りをかきこんでマジックバッグを持つと丁度いい倒木を探す。


「これがいいかな?アーシュ。とりあえず出すから、支えて上手く乗せてくれよ。出しただけできちんとそこに倒せないからな」

『ああ、分かった。では、とりあえず出せ』


 言われた通りに、倒木を出来るだけ上向きに斜めになるように取り出す。

 マジックバッグは面白いもので、バッグの入り口に入る大きさの物は長さが長くても、いくら重くても入ったが、入れる時はバックの口に先端を入れれば収納できるが、出す時には長い物を取り出す時にはバックから最後まで引き出さなければならない。唯一の救いは、全てが出るまで重さは出した分しか感じないことだが、それでもどんどん引き出せば引き出す程本来の重さがかかってくる。


 なんとかアインス達にも手伝って貰い半分程出すと、アーシュが嘴で挟んで、取り出して木の又へと差し込んだ。


『ふむ。こんなもんか。さて、お前達。この木に登って滑空をしてみてくれ』

『はいはいーーー!俺が先ね!やるぞーーーー!』


 アーシュが「してみて」と言った辺りから既にアインスが飛び出して凄い勢いで木に登って行った。ツヴァイとドライは木の横に並びに行く。

 まあ、いつもの訓練でも三人順番でやってるからな。アインスはすぐに飛び出すし、待ってられないからなー。


『行くぞーーーーーー!』

木の又まで登ったアインスが、手を上げて一言鳴くと、羽を広げて少し木を駆け下りると、脚で蹴って滑空をした。そのままアーシュの目の前を横切り、広場の逆側の畑の前に着地した。


『フム。アインスは飛ぶ時は風の向きをもっと気をつけて羽を使え。それに着地する時に勢いがありすぎると脚を怪我するぞ』

『おおーーーー!分かったーーー!』

『よっしゃ、次は俺だーー!行くぞーー!』


 アインスに対するアーシュのコメントを聞いていると、ツヴァイの掛け声が聞こえてそちらを向くと、ドタドタと木の上を駆けたツヴァイが飛び立つところだった。

 いつものようにバサバサと凄い勢いで羽を動かし、ドタっとアインスが着地した場所より手前で降りる。


『んー。ツヴァイよ。羽が強いのは良いが、バサバサ羽ばたき過ぎだ。空を飛ぶのは羽を使うより、風に乗らないと距離を飛べんぞ。お前は風や風向きをこれから意識して訓練してみよ』

『おお、分かった!風だな、風!』


 お、拗ねるかと思ったら、前向きだな。まあ、ツヴァイは脳筋だから、教官の言葉には従うか。


『では、僕の番ですね。行きます!』


 おお、ドライか。ドライはいつも風に乗ってキレイに飛んでいるからな。アーシュの目にはどう映るのかな?


 前の二人とは全く違い、スマートにすーっと風に乗って滑空してすっと着地したドライに、思わず拍手を送りたくなってしまった。


『ほおう。ドライは飛ぶ基礎は出来ているようだな。ただいつも穏やかな風の中飛べる訳ではない。もう少し羽を鍛えておいた方がいいだろうな』

『はい、父さん!』


 まあ、嵐の中だって、飛んでいる鳥の姿を見るもんな。確かに風に逆らう羽の強さも必要だよな。


 そうこして何度もアインス達が飛んでいる間に、いつものように集まって来たケットシーとクー・シーの子供達の相手をしていると、ロトムとセランもやって来た。


『よし、今日はここまでだな。無理せず訓練を続けるんだ。様子を見てもっと高い場所の訓練に移ろう』

『『『分かったよ、父さん』』』


 そうしてアーシュによる第一回目の訓練が終わったアインス達と、いつものように聖地へと向かったのだった。






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ちょっと短めですが、切りがいいので!



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