第23話 すっかり保育園?になりました

 慌てて摘み取った野草と残っていた芋、それに細切れにした肉と何種類かのハーブを入れてスープを大鍋につくり、自分の分の肉を焼く。

 朝からガッツリ肉はつらいが、今、ケットシーに小麦の種を頼んでいるから、自分で小麦畑を作るまでは主食は芋と肉で我慢だ。


 朝だから塩をふって焼いて、さっぱりした果汁でもしぼるか……。果物が色んな種類が豊富に手に入るのだけは助かっているけどな。


 シェロに案内して貰いながら、このアーシュの守護の森で採れる果実を少しずつ採っていたから、マジックバッグにはまだ余裕がある。雨期が終わったら、畑の周囲に果実の種か、苗木を植える予定だ。

 このドライアードの宿る大木のある広場は、聖地と連結した為に、半径五百メートル程別空間になっているそうだ。

 とはいえ、実際に守護の森から切り離された訳ではなく、俺には分からないのだが、守護結界とはまた別の結界で覆ってその範囲だけを聖地と連結させているらしい?


 だからクー・シーたちや、精霊達はアーシュが許可しているから自由に行き来できているが、その他の魔物や動物達は出入りが出来ないそうだ。

 だから安全、とはいえず、聖地の方の結界は魔物や害意ある生物は阻まれるが、それ以外の動物などは自由に入れているそうで、そちらの動物はこの地へ入れるそうだ。


 だからドライアードが結界を張ってくれたんだよな。お陰で家の周囲は完全に安全地帯になったから、とても安心していられるけど。それに、わざわざ俺の為に場所を空けてくれて、小麦畑や果樹園が作れそうだし、なんか本当に精霊達にはお世話になりっぱなしだよな。


 森の中だけに、大木の周囲は開いていたが畑を作る程のスペースは当然なかった。そこを、ドライアードが声を掛けて、ドライアードが宿るだけの樹齢のある木を動かしてくれたのだ。


 動く木……これがトレントか!とか茫然と思っていたけど、あれは凄かったよな。まあ、木に顔は当然ないし、根っこが持ち上がって歩いた訳でもなかったけど!


 ドライアードとスプライトたち、それにノームが協力して、根が張っている土ごと移動してくれたのだ。

 それでも陽ざしの問題もあるから、苗木は他の場所へ掘り起こして移動し、若木は何本かは伐り倒した。森の中でも日当たりの問題などで、若木が順調に育つことはそれ程ないと聞いて、育たたない場所の若木を伐ったのだ。


 そんなこんなをやっていたらすぐに雨期になってしまったので、畑は最初にケットシーとクー・シーたちが作ってくれた場所のみだ。



『イツキ、いつまで食べてるの!さっさと食べて、戻って来て!』


 つい、あちこち見ながら感慨にふけりつつ食べていたら、ドライから声が掛かった。そういえば、今日はケットシーの子猫達が全員もう来ているんだった、と思って建物の方を振り返ると。



「にゃうー!」

「みゅーみー」

「くー、きゅー?」

「くぉんっ!」


『うをっ!ちょっと、待って!お前、危ないから登ったら暴れるなって!』

『イツキー、イツキー!俺が走ると踏んじゃうから、さっさとこっち来てーーー!』


 ……うわ、凄いことになってるな。いや、ドライやツヴァイが大変なことになっているんだけど、今、俺は猛烈にスマホが手元にあったら!と思っているぞ!写真、写真をとって、是非残しておきたいのに!


 わかるだろうか?広い床の上を鳴き声を上げながら子猫や子犬が這いまわり、ドライとアインスの上にのぼってぴこぴこ跳ねつつ尻尾をふりふりしつつキャッキャと楽しそうに騒いでいるのだ!

 なに、この天国……。あそこに飛び込んでもふもふ撫でまわしたいけど、ここでずっと見ていたい。相反する想いに、朝食を食べる手を止めてじっと見つめてしまった。


『『『イツキー!早くーーーーっ!!』』』


 ハッ!いかん、いかん。さすがにこれ以上待たせたら、アインス達がへそを曲げそうだ。そうなったら、夜、一緒に寝てくれなくなってします!


 それは死活問題だ!と急いで残りをかきこみ、片付けは後回しにして部屋へと駆け込んだ。


「ごめん、ごめん、お待たせ!いつの間にかクー・シーたちも来てたんだな!」

『シンクが一緒に連れて来たんだぞーーー。全員ここにおいたら、さっさと帰って行ったけどなーー!』

「お、おおう……。さすがシンクさん。卒がないな」


 ケットシーのシンクさんは、最初に聖地に来た時に、神獣たちと一緒に来ていたあのケットシーだ。あれからシンクさん以外のケットシーにも会ったが、あの人ほどくせはなかった。


 ケットシーはやっぱり浪速の商人なのか!とかつい先入観込で思っちゃったけど、シンクさんだけだったよ。まあ、ほんわかした二本足で立つ猫なケットシー達は、とっても可愛くてお母さん達ももふもふしたい!というわきわきする腕を抑えるのに苦労したんだけどな!


「みゅー!みゅー!」

「おっ、来たなー。ほーら!高い高ーい!からのーーー、ポーンだ!」

「ミャミャミャウッ!!」


 俺に気づいてちてち寄って来た子猫を抱っこして抱きしめて撫でてから、高い高いをする。そして最後は座っているドライの上にポーンと放った。高い場所からの浮遊感と落下に、子猫は大喜びだ。


「「「「「「みゅーみゅー!」」」」」

「「「「「キャンキャンッ」」」」


「おっ!待て待て、順番だからなー!」


 それから寄って来る子を順番に、次々にもふもふしてはドライの上へポーンと放ることを、子供達が疲れるまでしばらく繰り返したのだった。






****

暑さ&湿気にノックダウン中です……。短いですが、子猫と子犬とのふれあいの程を。

新しいもふもふ赤ちゃんは、もうちょっと先かも?です。

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>


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