第17話 とんでもない方々が来たようです?

 落ち着け、落ち着くんだ、俺。とりあえず今、俺がやるべきことは何か考えるんだ……。


「なあ、ドライ。アーシュがこの空間とアーシュの守護地を繋ぐって言ってたけど、今はどうなのか分かるか?今この空間から出たら、元の場所へ戻れるのかな?」


 この、世界樹のある神域だか聖地は、神獣、幻獣たちが守る全ての守護地と繋がっていると言っていた。だから、この場所は恐らく岩山とは全く別の場所な筈だ。


 ここで肉を火を焚いて肉を焼く気には全くならないので、アーシュが獲って来た獲物は森へ戻らないと焼けないのだ。


『うーん、さっき父さんが他に声を掛けたって言ってたから、今はここから出ない方がいいかもしれないけど……』

『ああ、大丈夫だぞー。さっき出てみたけど、元の場所へ戻れたし、ここにも戻って来れたからなー。だからイツキ、ご飯の準備をよろしくなー!』


 ア、アインス……。本当に、いつの間にか突っ走って行っちゃうんだから!まあ、今回は助かったからいいか。それに気づいたらここへ戻って来れなくても、俺は別にいいんじゃないか?


「ドライ、もし他の場所だったら俺一人だと怖いから、一緒に来てくれないか?」

『ああ、うん、別にそれはいいけど。でも、イツキは逃げられないと思うよ?往生際悪くあがくのは、別にかまわないけど』


 ドライ……。ドライの語彙も不思議だよな。どこで覚えて来るんだろうな?……いや、逃げじゃないから!


 ドライを連れ、見覚えのある方へと進んで行くと、ある程度世界樹から離れたところで景色が切り替わった。

 雨上がりの森の匂いに一つ深呼吸をすると、火を焚いても大丈夫な場所を探す。


「ああ……。さっきまで土砂降りの雨が降ってたんだし、地面が渇いた場所なんてないか。どうしようかな」

『それなら場所だけ決めたら、乾かしてあげるよ。最近そのくらいの熱は出せるようになったから』


 最初は小さな火花しか飛ばせなかったのに、いつの間にかそんなことまで出来るようになったらしい。


 本当にアインス達の成長が早いよな。俺なんて子守りに別にいらない気がするんだけどなぁ。


 ここが境界だろうな、という場所の周囲を歩いて行くと、丁度いい場所を見つけた。世界樹ほどではないが、大きな大木が一本枝を伸ばして立っており、その周囲が陽ざしの関係か木がなくぽっかりと空いていたのだ。

 少しだけ生い茂っていた草を抜いて地面をむき出しにし、そこをドライが火を嘴から吹いて炙って乾かした。


 そうしてマジックバッグから入れておいた石を取り出して竈を組み、同じく入れておいた薪用の枝を取り出すと肉を焼く準備が整った。


『なんだ、ここにいたのか。ほら、獲物だ。そろそろ集まるだろうから、ここと向こうの空間を直接繋いで見えるようにしておくからな』


 するとそこに空から降りて来たアーシュが両脚につかんだ獲物をそれぞれ一匹ずつ落とし、一声鳴くと目の前の空間が歪んだ。するとすぐに先ほどまで森だった場所が木を数本残してなくなり、その背後には世界樹の雄大な姿が覗いた。


 世界樹の方へ飛び去るアーシュを見送り、走り寄るアインスとツヴァイの姿をぼんやり見つめながら改めてアーシュが神獣フェニックスだということを確認する。


『イツキー、イツキー!早く、肉焼いてくれー!』

『おう、さっきのは足りなかったからな!腹減ったぞ!』


 ……まあ、アインスとツヴァイを見ると安心するよな。色々と。


 示された力に圧倒されていた空気が、一気に台無しになった。


 まあ、俺としては助かったけけどな!


 最近ではアインス達に手伝って貰いながら出来るようになった解体をしつつ、どんどん肉を焼く。そうしている内に、すっかり世界樹の方は気にならなくなっていた。

 夢中で肉を食べるアインス達を見て、自分もお腹が減っていることに気づいて味をつけた肉を焼き、果物を取り出して遅めの昼食だか早めの夕食だかを食べていると。


『……やっぱり図太いな、おぬしは。ほれ、もう皆集まったぞ。顔を上げて見てみろ』


 そう、オルトロスに声を掛けられて気づいた時には、ズラリと神域だから聖地だかの境界線にそうそうたる神獣、幻獣、それに精霊?だろう方々が揃っていた。


「う、うわぁっ!!肉に気をとられて忘れてた!!……は、はぅう。ペ、ペガサスにユニコーンにグ、グリフォンだろ。それにあれは……フェンリルだかスコルだかハティー、か?うわっ!あれはケツァルコラトル?それにケットシーに……白虎?玄武?九尾の狐まで!あとは……」


 小説や漫画、アニメで見た知識で照らし合わせてみても、最終ボスぞろいのような豪華なメンバーだった。あとは名前を知らない幻獣や妖精、精霊たちもたくさんいる。

 恐らく言語が翻訳されている一環で、俺が発した言葉がこの世界での固有名詞に当てはめて発言されているのだろうが、当然地球で神話などで言い伝えられている外見と似てはいても名称は違うのだろう、とは思うのだが。


 もう驚き過ぎて頭が真っ白になり体は硬直したが、逆に少しすると頭の中が冷えてどこか冷静にそんなことを考えていた。

 あまりの光景に、現実感が全くないせいかもしれない。しかもそんな豪勢なメンバーは皆揃って俺のことを見ているのだ。その視線の強さに、すぐにでも気絶してしまいたい。


『なんだ?聖地に気配があると思って来てみれば、皆が集まりおって。何故、我には声が掛からなかった?』


 そこに空が陰ったと同時に空から威圧感が襲って来た。その威圧感に更に硬直していると、ズシンと地響きがしてその巨体が視界に入った。



『フン。お前には今回は関係ないことだからな。お前は代替わりの必要など、ないであろう?』


 あ、あああああ、アーシューーーーーーーっ!ええっ、な、なんでそんないつも通りに上からなんだ!だ、だって、だって。


 どう見たって、ド、ドラゴン、だろぉーーーーーーーっ!!


 そう、最後に現れたのは、プラチナに鱗が光る、ドラゴンだったのだった。




******

少し短いですが、体調がつらいので、ここまでで……

(更新しないより、短くてもした方がいいかな、と)

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>



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