第14話 世界樹に行きつくまでのいきさつです?
フラグにまんまと乗せられて?世界樹の元へと迷い込んでしまったのは、守護結界へ最初に入った時から約三か月たった時のことだ。
初めて守護結界に侵入して以来、二、三日に一度、アインス達と一緒に訪ねて行っていた。
毎回シェロが守護結界へ入ったところで出迎えてくれ、そのたびに精霊たちとも交流し、三か月が過ぎた今ではすっかり仲良くなっていた。
『なあなあ、今日はもう少し奥へ行こうぜ!最近、俺達も自分で少しならご飯を調達できるようになったしな!』
『そうだなー。そろそろもっと別の場所もみたいかなー』
奥へ行ってもいい、とアーシュに許可は貰ったが、アインス達は少しずつ日中の活動時間は増えているが、それでも昼寝は必要なまだまだ雛なので奥へ行って戻るのは時間的に厳しく、いつも結界の入り口付近しか立ち入ったことはなかったのだ。
『そうですね……。イツキ、朝食の残りのお肉がありましたよね?あれを焼いてマジックバッグへ入れておいて下さい。昼食には足りませんが、間食には十分です。父さんにはお昼が遅くなると言って来ます』
ドライがそう言うと、俺の焼いた肉を食べているアーシュの元へと寄って行った。
今は果物は森や守護結界の中の森で自分で調達できるようになったし、ハーブ類や香辛料になる物も図鑑を見つつ採取して賄っている。
野菜は最初にオルトロスが持って来て貰った芋を、いくつか学校の授業を思い出しつつ種芋として崖上の草原に植えた物が根付き、もうすぐ収穫できそうだ。他にも森で食べられる野草などをいくつか見つけてなんとか一日に一度は野菜スープを作って食べている。
塩はアーシュが岩塩を持って来てくれたので十分にあるが、残念なことにそろそろ小麦粉は無くなりそうだ。たまにすいとんやうどんにして大事に食べていたが、元々マジックバッグに入っていたのは大きな麻袋が一袋のみだったから、芋が収穫できたら次は半分を種芋として植えて穀物代わりに確保する予定だ。
アーシュには約束通り要求された時に、俺と同じ量を出しているが、果物で漬け込んだ肉に塩とハーブで味付けして焼いた肉は口にあったらしく、その味付けの時は毎回要求されるようになった。
まあ、こうして食事や水には困らない生活をできているのはありがたいけどな。でも、そろそろ真面目にどこか屋根のある家を建てたいよな。
この世界では雨期があり、雨期以外ではこの地域ではそれ程雨は降らなかったがそれでもたまに夕立で激しく雨が降ることもある。そういう時は崖の隙間に入り、その前にアインス達に塞いで貰ってなんとかしのいでいるが、そろそろ雨期が来るとシェロに聞いて、相談をしていたのだ。
「……まあ、いいか。奥へ入りすぎなければいいよな。どうせだから今日は、シェロにクー・シーの集落へ案内して貰えるか聞いてみるか」
クー・シーは精霊だが実体があるので、群れで集落を作ってあの守護結界の中で暮らしていると何度目かに会った時にシェロが教えてくれたのだ。
その時に食べ物などの相談をして、食べられる果物や野草を教えて貰ったりもしている。
そして!なんと、少しなら頭を撫でてもいい、という許可も貰ったのだ!
……でも、一度触れてしまうと、ついつい全力で撫でまわしたくなるんだよな。そんなことしたら、せっかく仲良く話せるようになって来たのに、嫌われてしまって二度と撫でさせて貰えなくなったら大変だし。
だから今でも合うと毎回わきわきする手を宥めるのに必死だったりもする。
その後、無事にドライがアーシュから許可を取りつけて来たので、俺の朝食を食べ終えた後にまた追加で焼肉を焼く作業となった。
焼けた肉は、森で見つけた大きな笹のような葉に包んでどんどんマジックバッグへと入れて行く。
この葉は殺菌作用があるらしく、食べ物を包むのに適していると教えてくれたのもシェロだ。
「よし、これでいいな。後は水を水袋に入れて、と」
『イツキ、準備出来たかー?じゃあ、行くぞー!』
「えっ、ちょっとアインスっ!まだ手綱を結んでって、うわぁああああっ!!」
俺が準備するのをソワソワと待っていたアインスが、終わった瞬間突撃して来て俺を背中へ放り投げると、首に手綱代わりの布を巻く前にそのまま崖の上り口へとダッシュして行った。そうしてそのままピョンピョン岩を登り始め、そんなアインスの背から落ちないように俺は必至で首に手を回してしがみつく。
「はあ……はあ……今日こそ、もう、ダメだと……。アインス。お前、最近成長して首に手が回るようにはなったけど、滑るから手綱がないと無理だって、何度も、何度も言ったのに……」
『わははははっ!無事だったからいいだろ?イツキも腕を鍛えないとな!』
最近ではやっとアインス達の背中に乗るのに慣れて来たが、それでも今日のように何もなく乗ると腕の筋肉の限界に挑戦となり、登り切ったところでバッタリと草原へ倒れ込んだ。
この三か月でアインス達はまた少し大きくなった。首がまた少し伸び、それに合わせて首は細くなった。それでもまだ羽ばたきはするが飛べないし、毛色もアーシュの色よりもくすんでいるままだ。
『まあ、少しは鍛えた方がいいのは賛成かな?毎回それだと、大変だよ?』
うう……ドライ。確かに、そうだけど……。
あの崖を自分で登ろうとしたことはあったが、ロープもないロッククライミングに、すぐに腕が悲鳴を上げてひっくり返りそうになったところをドライに救出されたのだ。
『ほらイツキ、行くよー!今日はいつもよりも奥へ行くんだからねー!』
反省の色がまったくないアインスに促されてしぶしぶ起き上がると、皆の後を追って森へと歩いて行く。
そうして何度か虫やネズミのような小動物に襲われたが危なげなくアインス達が倒して間食とし、薬草などをとりつつ奥へ進んで行くとある地点で景色が変わる。
『あ、いらっしゃい、若様方、それにイツキ』
『おう、シェロ!今日はいつもより奥へ探索しに行くぞ!父さんの許可も貰ってあるからな!』
「そうなんだよ、シェロ。だから、以前言っていたように、クー・シーの集落へお邪魔したいと思うんだけど、いいかな?」
『ええ、いいですよ。皆も若様たちのご訪問を、歓迎されると思います』
守護結界への道中に、アインス達には今日はせっかくだから以前誘われたクー・シーの集落へ行きたい、と話しておいた。アインス達もいつもより奥へ行けるなら、と賛成してくれたので、そのまま森の奥へ向かうことになった。
同じ森とは思えない程明るく陽が差し込む森の中を、いつの間にか集まって来た精霊たちと一緒に進む。
道々、果物や野草なども手土産に大目に採って進むと、体感的に一時間ほどで木の間にぽっかりと空いた場所と、そこに建てられた小さな家々が見えて来た。
『さあ、ここがクー・シーの集落ですよ。皆さんは入り口で待っていて下さいね。皆に声を掛けて来ますから』
そう言って尻尾を振りつつ集落へ一人で入って行くシェロを見送り、俺は集落の外から家々を観察した。
家は木の枝と葉で作られていて、一軒一軒はそれ程大きくはない。地下を掘り下げていて、半分地下に居住があるらしい。
下水がどうなっているか気になっていたけど、あの屋根にしている葉が地面まで覆っているから、地下へ水が入らないようにしてあるんだな。
木の枝で斜めに骨組みが組まれ、その上を満遍なく大きな葉を何枚も重ねて屋根となり、そうして家の周りには雨水対策に溝が掘られているようだ。
あの造りだと、俺達は身長的に無理そうだな。やっぱりどうにかログハウスを建てるか、最低でも倉庫のように簡単な屋根と床だけついた建物を建てたいよな……。
アインス達は雨も羽毛が弾くらしいが、俺が屋根付きの建物を建てれば寝る時は一緒に入るだろう。そうなると、どう考えても大きな建物になる。だからせめて屋根だけでも参考にしたかったが、どうやらクー・シーたちの住居は俺達には向かないようだ。
そう思って少しだけがっかりしていた気持ちは、シェロが一族を連れて戻って来た姿を見た瞬間、霧散した。
ふおおおぉおおおっ!色とりどりの、ワンコの群れだ!垂れ耳に長毛に短毛、それに小さな赤ちゃんワンコまでっ!!
突進することだけは何とか耐えたが、ドライ曰く、かなりヤバイ目つきだったそうだ。
それから夢のような交流を経て、少しだけ探索して戻ろう、となった時に雨期の前触れのような土砂降りの雨に降られ、雨宿りできる大木を求めて彷徨っていた時に、世界樹を発見してしまった、ということなのだ。
****
すいません、夏バテ?で倒れていました……。今後も体調をみての更新になるかと思います。
あとここで宣伝を一つ。アルファポリスで書籍化している『もふもふと異世界でスローライフを目指します!』の寺田イサザ先生によるコミカライズ版の4巻が22日発売しました!良かったらカッコイイ&かわいいもふもふを是非!読んでみて下さい。(原作の小説も、文庫版の完結5巻が今月頭に発売したので、全五巻文庫も出ております!良かったら読んでみて下さいね!)
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます