第13話 フラグが立ってしまったようです?
守護結界を抜けて戻った後は、もう待ち構えていたアーシュに獲物を渡され、そのままいつものようにひたすら肉を切って焼いた。
森の奥まで行ったからか三人の食欲は凄まじく、アーシュが獲ってきた獲物を丸まる二匹以上食べてしまった。
その後はさすがにお腹がいっぱいになったのか、最近では昼寝時間が減ってきていたが今日はそのまま三人寄り添って寝入ってしまった。
あの三人は性格は結構違うけど、やっぱり仲はいいんだよな。寝る時はいつも一緒だもんな。まあ、夜は俺がその間に入れて貰って、天然100%羽毛のふかふか羽布団で寝させて貰っているんだけどな!本当に、日本の超高級羽毛布団も目ではないくらいにあたたかくてふわっふわで軽くてもふっとしていて寝心地は最高だぞ!まあ、超高級羽毛布団を使ったことは一度もないけどな!俺が使ってたのはセットで一万円だったしな。
そんなことを思っていたからか、ドライに必死でしがみついていた疲れか眠くなって来た。このまま三人の間に潜り込もうか、と思いつつ自分の食事をしながら思っていると。
『お前達、さっき守護結界を越えたが、境界を越えた時に何も感じなかったのか?』
「んーー?あ、ああ、最初に三人が何かあるって騒いでたな。でも、俺は何も見えないし感じないし、で手を出したらツヴァイとアインスに倒されて越えちゃってたんだよな。あの時は倒れ込んでたから慌ててたけど、何も感じなかったぞ?」
そう、手を入れた時も、別に何も違和感を感じなかったし、倒れ込んだ時にも別にこれといって何かを越えた感覚は全くなかったのだ。
「普通はあの守護結界に触れたらどうなるんだ?」
『弾かれるな。ただ知らないで触れただけなら結界に入れない、というだけだが、悪意を持って侵入しようとする者は、その場で消し炭になるな』
お、おおう……。さすがは神獣フェニックスの守護結界、といったところか。執行猶予もなく、消し炭ってことは何人かでその場に居れば、目の前でそれを目のあたりにしたら他の人は絶対逃げてくよな。
『ああ、結界に触れなくても近くで悪意を持っていれば、もれなく消し炭だぞ。敵に容赦などしたら、後からどれだけ膨れ上がるか分からないからな』
……うん、まったく容赦などなかった。でも、完璧に守る為ならそれが一番効率がいいんだろうな。まあ、そこはこの世界のことを全く知らない俺が、自分の価値観から口を挟むことでもないしな。
「じゃあ、なんで俺は何の抵抗も無く入れたんだ?あそこには、神獣や幻獣といったアーシュのような役割を持った種族しか本来は入れない物だったんじゃないのか?」
それこそ侵入しようとする者を消し炭にするくらい大切な物を守る結界なら、入れた俺の方がおかしいんだよな。
『そうだな。子供達が入れたのは、俺の子供だからだが、お前が入れたのは、お前の性質だからだろうな。まあ、お前が悪意を持って侵入しようとするなら、どこの守護結界へも立ち入ることは当然できないだろうが、悪意を持って侵入しようとしていなければ、どんな結界へも素通りで入れるのかもしれないな』
「はあ?な、なんだそれ……」
ちょっ、ちょっと待て。今のアーシュの話した言葉の中に、重要なキーワードがたくさんあったよな?
落ち着け、俺。とりあえず落ち着いて考えよう。俺の性質ってヤツは、おそらく魂でこの世界に来たらこの体でここにいた、っていう由来だろう。俺としてはお腹もすくし、怪我したら赤い血が出るし、別に日本で暮らしていた時と変わっていないと思うけど、まあ、日本での俺は実際に死んでる訳だから変わっていない訳はないんだよな。
そこは自分でいくら考えたって分からないし、アーシュに聞いてもハッキリとした言葉では返答はないから、アーシュにも実は良く分からないのかもしれない、とは最近思ってはいた。
でもそんなはっきりとしない俺だから、アーシュが守る守護結界へも入れてしまった。そして、それはここの守護結界だけでなく、いくつあるのかとかは知らないけれど世界中にある守護結界へも入れる、ってことだよな。でも、なんとなくアーシュの言い方が引っかかったんだけど……。
「どんな結界……なあ、この世界には魔法があるから、アーシュのような神獣やオルトロスのような幻獣たち以外でも、つまり人でも魔法は使えるんだよな?そんで、アーシュ達が張るような守護結界みたいな強力な結界は無理でも、人も人用の結界を張っている、ってことだよな?そして、その結界へも俺は悪意を持って侵入しようとしなければ入れてしまう、と?」
『そうだ。俺の守護結界へ素通りして入れるなら、人の結界なぞどんな結界でも入れるだろうよ』
う、うわっ!そ、それって俺の想像通りなら、王城とかえらい人の屋敷とか、やばい施設とかに侵入者を防ぐ結界が張ってあっても、俺はそれに気づきもせずに素通りしてしまう、ってことだよな!!……それは問題が起こることしか想像がつかないよな。ましてや俺はこの世界の常識なんて全くしらない訳だし。うん。大きな街へ行ってみよう、なんて絶対思わないぞ!
「……できたら、俺が入ってはまずい場所があるなら、先に教えておいてくれ。予め教えてくれたら、絶対に近寄らないから」
トラブルが起こることしか予測できないもんな!
『ふむ……。いや、逆にお前がどこまで入れるかが興味がある。お前には守護結界の中へ入って自由に移動する許可を与えるから、どこまで行けるか行ってみろ』
いやいやいや。それはダメなんじゃ、アーシュさんや。だって、その言い方だとあの守護結界の中に、更に重要な場所があってそこには他の結界が張ってあるってことだろ。いくらなんでも、そんな厳重に守られた、いかにもこの世界的にも最重要な場所に、ほいほい俺のようなよく分からない存在が入っていい訳ないだろう?
「いや、入らないから!クー・シーのシェロにだって、入り口で警戒されたんだぞ。そこまで立ち入れる訳がないだろう?」
と、そんな会話をしたのがフラグになってしまったのか。
アインス達と別れて守護結界の中の森を探索していた時、いきなりの土砂降りの雨に雨宿りをしようと走っていたら、目の前にいきなり大きな木が出現した。それこそ百階を越える構想ビルを見上げるかのように見上げても、どこまで高いのか全く判別できない程だ。
いくら森の中で視線が遮られていたって、こんな大きな木があれば、それこそ森のどこからでも見えないと絶対におかしい。と、なると、思い当たるのはアーシュとかわした会話しかない。
「……こ、これって世界樹ってヤツじゃないのかっ!!そんなフラグ、いらなかったからっ!!」
*****
今回はもふもふ成分が少なめですいません……。どうも暑さにやられてヘロヘロです。
体調次第で更新できない日もあるもしれません。どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
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