第40話 警備が気付いたよ
拙作『生き返った冒険者のクエスト攻略生活』のコミカライズが、ヤングエースアップにて連載スタートいたしました!
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000181/
漫画:冥茶 原作:萩鵜アキ キャラクター原案:ひづきみや
こちらも合わせて、宜しくお願いいたします。
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「それで、妹はどこに?」
「それが、俺にもわかりません。この建物のどこかにいるとは思うんですけど」
「ん、どういうこと?」
「この建物には、隠し部屋があるんです。一度そこに入ったことがあるんですが、目隠しをされた状態だったので……」
「ふぅん」
「で、でも、ここまで来れば、大丈夫です。俺の手で、きっと妹を見つけ出します!」
たしかに、時間をかければ隠し部屋を見つけられるかもしれない。
だが、クリスはすぐにこの国から立ち去りたい。
(どうしようかなあ)
悩みながら、スキルボードをいじる。
その時ふと、以前思いついた魔術の使い方を思い出した。
「≪シャドウ・サーバント≫」
クリスは陰の召使いを召喚する。
それも、一体ではない。一気に百体召喚した。
通路にある影という影から、小さなサーバントがポコポコ発生する。
「――ッ!?」
それを見たシモンが眦を決した。
口を両手で塞いでいるのは、悲鳴を上げそうになったからか。
サーバントも、百体揃うと圧巻だ。
まるでモコモコの、影の絨毯みたいだった。
■魔法コスト:302/9999
■属性:【闇(シャドウ・サーバント)】+
■強化度
威力:1▲ 飛距離:― 範囲:― 抵抗性:1▲ 数:100▲
■特殊能力:【隠密】
クリスが思い出したのは、シャドウ・サーバントの使い方だ。
以前、シャーロットを助けるために、クリスはサーバントを通じて魔術を使用した。
他にも使い道がありそうだと、その時から温めていた計画を今回実行する。
「皆、よく聞いて。これから隠し部屋を探して欲しいんだ」
「(きゅっきゅ!)」(了解ですますたぁ!)
「うんうん。それじゃあ、捜索スタート!」
「(きゅーっ!)」(わーい!)
百体いるサーバントが、四方八方へと一斉に動き出した。
クリスが温めていた計画は、サーバントを自分の手足のように使う方法だ。
元々は、自室に居ながら外を散歩出来ないかと考えていたのだが、そこから発展させて、レーダーのように使えないかと考えた。
結果は、成功だ。
まだ隠し部屋は見つかっていないが、サーバントたちの感覚がクリスに伝わってくる。
中心からジワジワ外側に向かって、建物の形が詳らかになっていく。
影は世界中のどこにでも存在する。
もし隠し部屋があるのなら、そこにもまた、影は存在する。
シャドウ・サーバントが行けない場所は、実質存在しないと言っても過言ではないのだ。
五分ほどたった頃、サーバントが建物全体を掌握した。
その中に、不自然な形の階段があった。
「おっ、そこか」
間違いない。
隠し部屋への出入り口だ。
「ど、どこですか!?」
「すぐそこの部屋の中。床にある階段が、隠し部屋に通じてるみたい」
「――っ! あ、あの陰で、隠し部屋がわかるものなんですね」
「あっ、ストップ」
扉に手をかけたシモンに、クリスは待ったをかけた。
「なにか?」
「うん……《スリープ》」
クリスが魔術を発動。
扉の向こうから、なにか重いものが床に落ちる音が聞こえた。
「これで良し」
シモンに代って、クリスが扉を開け放った。
中では、沢山の贅肉を蓄えた男が、大きないびきを掻いて眠っていた。
衣服の仕立てがかなり良い。
男はここのオーナーなのかもしれない。
もしシモンが扉を開けていたら、この男にバレていただろう。
サーバントが事前に人の位置を伝えてくれていたため、クリスは前もって男を≪スリープ≫で眠らせたのだ。
「このあたりに、階段があるんだけど」
「ここ、ですか? 床が抜けるのか、なにか絡繰りがあるんでしょうね。けど、見ただけじゃわからないですね」
隠し部屋への入り口は、サーバントが見つけていなければ、ここにあることさえわからなかっただろう。
出入り口には大理石がきっちり填まっていて、隙間がほとんどない。
「これ、どうやって開けるんだろう?」
「多分ですが、レバーのような仕掛けがあって、それを引けば、床が開くのだと思います。けど、それがどこにあるかは……」
「んじゃ壊そうか」
「えっ!? いや――」
「≪エアカッター≫」
「ちょ、まっ――!!」
引き留める間もなく、クリスは床を切断。
空気の刃に切り裂かれた床の一部が、下へと崩落した。
――ズゥゥゥン!!
「わあっ、すごい音」
「だからちょっと待ってって言ったのに……」
クリスの横で、シモンがしゃがみ混んで頭を抱えた。
やってしまったものはしょうがない。
そもそも、妹の救出にはあまり時間をかけたくない。
だから、クリスにとってはこれが最善手だ。
――そう自分に言い聞かせて、クリスはシモンの手を引いた。
「シモン、行こう」
「……はあ……はい、わかりました」
「今の音で中の警備が気付いたよ」
「それを早く言ってください!!」
床の下に現われた階段を、クリスとシモンが急ぎ降りて行く。
運動音痴なクリスが、途中何度か足を踏み外しそうになった。
自然と、階段を降りる速度も落ちる。
それを見かねてか、シモンがクリスを抱き上げた。
「失礼します!」
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