第31話 ロリ先生の完全対応と俺の不安 前編

 紗枝さんが行ったのを確認してリビングに入ると、まこちゃんと彼女は、ソファの上で楽しそうにおしゃべりしていた。俺は、カーペットにクッションを置いて、その上に座る。


「まこちゃん」


「ん~?」


「寂しくない?」


「寂しくないよ、まなちゃんがいるもん!」


彼女は笑って、


「だよね~」


という。今日も彼女のロリ顔とロリ声は絶好調だ。


 そんなつかみから入って、予定通り30分程度会話をした。内容は、まこちゃんの好きな遊びについてや、好きなキャラクターについてなどだ。彼女は、事前に今流行っているものを調べていたようで、まこちゃんに合わせて自然に会話ができていた。一方の俺は、当然、何を言っているか全くわからなかった。


「んじゃ、そろそろ、まなの部屋で遊んできたら?」


「うん! 行こう、まこちゃん」


「え?! まなちゃん、自分の部屋あるの?」


「うん、あるよぉ」


「い~な~」


「こっち来て!」


「うん!」


彼女はまこちゃんを連れて、階段を駆け上がる。その後、まこちゃんの


「可愛い~!」


「すご~い!」


という声が、2階から聞こえてきた。ちなみに、子供部屋のヒーターは、もうすでにつけてある。




 俺は、子供部屋のドアが閉まる音を聞くと、脱衣場で行為用の服に着替え、更に棚からカメラを出して、ソファに座る後ろ姿とテレビ画面が映る位置にセットする。そして、アナログ時計やペン立て、その他小物を使って、カメラを隠す。


 始まりはこのように忙しかったが、その後は、ゆったりとした長い時間が流れた。何せ、他にすることが無いのだ。仕方なくテレビを見たり、寝室からスマホを持ってきて音楽を聴いたりしたが、退屈だった。


 


 暇すぎて精神がおかしくなりそうになっていると、時刻は11時になった。やっと行動ができる。

 俺はキッチンへ行くと、2つのコップををお盆に乗せ、そこに、昨日スーパーで買ったオレンジジュースとリンゴジュースをそれぞれに入れる。お盆を持ち、こぼさないように慎重に階段を上ると、廊下に設置しておいたサイドテーブルに一度置いて休憩する。無事に運べたことに安心しつつ、子供部屋のドアをノックして、ドアを開ける。


「あ、おじちゃん、やっほ~」


まこちゃんが笑顔で手を振りながらそう言ったので、


「やっほ~」


と、笑って手を振り返してあげた。可愛い。彼女はといえば、俺が来た今が11時であるか、つまり計画通り俺が動いているかを時計を見て確認している。抜かりないなぁ。

 俺は、ぬりえの色塗りを再開したまこちゃんに聞く。


「まこちゃんは、オレンジジュースとリンゴジュースどっちが好き?」


「んー、オレンジジュース!」


「は~い」


サイドテーブルに置いていたお盆を再び持ち、子供部屋のテーブルに置くと、まこちゃんのぬりえの近くにオレンジジュースを置いた。


「はい、どうぞ」


「ありがと!」


「まなは、リンゴジュースでいいよね?」


「うん!」


その返事を聞くと、彼女のぬりえの近くにリンゴジュースを置く。そして、2人同時にコップを両手で持って飲み始める。かわいっ。


 ふと、彼女のぬりえを見ると、幼さを演出しつつも、かなりきれいに塗られていたため、本気で塗ったらめちゃくちゃ上手いんだろうなぁと思った。さて、まこちゃんのは~、と思って見ようとすると、瞬時に隠されてしまった。


「あ~、なんで隠すの?!」


「だってぇ~...恥ずかしいんだもんっ」


いやかわいっ。そうらしいので諦めて、お盆を持って立ち上がると、


「おじちゃんも一緒に遊ぼ~」


と言ってくれた。でも、計画にはなかったしな...と思って彼女を見ると、いいわよと言わんばかりに頷いたので、頷き返して、


「うん、いいよ」


と言って座り直した。しかし、ただで遊んであげる訳ではない。


「じゃあその代わり、まこちゃんのぬりえ見せて?」


我ながら意地悪だなぁ笑 するとまこちゃんは、一瞬悩んだ末、


「...いいよっ」


そう言って見せてくれた。そのぬりえは、彼女には劣るものの、とてもきれいに塗られていた。


「上手じゃーん!」


と言うと、まこちゃんは恥ずかしそうにしてから、


「おじちゃんも塗って!」


と言った。照れ隠しだろう。


「よーし、じゃあ色鉛筆貸して?」


「うん!」


おいおい隆そんなことして大丈夫なのか?と心配してくださったみなさま、ご安心あれ。そんな気分で、俺は色塗りを始める。


 俺は実は、ぬりえのような細かい作業が得意なのだ。


 ...なぜ、ほとんどやったことのない皿洗いを、彼女が洗い直ししない程に上手くできたのか。なぜ、髪結びをたった2週間でマスターできたのか。それは、このなぜか生まれもった器用さが原因である。ぬりえの他にも、絵を描くこと、字を書くこと、手芸なんかも、こう見えて得意なのだ。このことは、彼女にも言っていない。


 本気で塗って、2人同時にビックリさせてやろう。20数年ぶりのぬりえに、力が入る。










「ねぇまだ~?」


「まだだよ~」


 そうまこちゃんに言われて時計を確認すると、いつの間にか20分が経過していた。子供用ぬりえ1ページにしては長すぎる。しかし、俺はまこちゃんの笑顔が見たいんだ! 20分なんかじゃ足りない!


 すると彼女は、遅すぎる俺を見かねて、まこちゃんに別の遊びをしようという提案をしていた。




 その更に20分後、ようやくぬりえが完成した。我ながら、上手く塗れたと思う。2人の驚きを早く見たかった俺は早速、


「終わったよ、どう?」


と言って、ぬりえを見せた。すると2人は、


「すごーい」


「うまーい」


一目見て、それだけ言って、おもちゃ遊びに戻ってしまった。


 ......やらかした!! 楽しませようとしすぎて、逆に飽きさせてしまった! 何やってんだ、俺!!


 恐らくこれ以上は2人にはかまってもらえないので、近くにあったプルキュアのフィギュアで1人楽しく(?)遊んでいると、時刻はようやく12時になった。

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