第28話 ロリ先生の騒動と俺の覚悟

 俺が、今日もピカピカだった風呂から上がり、リビングへ向かうと、彼女は、食事などの時に使うテーブルではなく、主に彼女の読書時や勉強時に使う方のテーブルの、椅子に座っていた。勉強道具をテーブルに広げたまま、テーブルの上で腕を枕にして、寝ている。勉強中に寝落ちしてしまったのか……って、ん?!?!


(彼女が、ね、寝ている?!)


そう気づいた俺は、思わず彼女の寝顔を見る。彼女の寝顔は、可愛かった。すっごく可愛かった。めちゃくちゃ可愛かった。とにかく可愛かった。そりゃあもう、どちゃくそに可愛かった。


 と、意外と顔の近くまで接近しているものの、寝息が聞こえないことに気が付いた。


(まさか...死んでる?!)


 一瞬本当に焦った俺だったが、背中が一定のリズムで上下している。ということは、本当にただ寝ているだけだ。


(なんと!! 彼女ぐらいになると寝息の1つも立てないのか!!)


 なんて思ったりもしたが、そんなことより、俺の胸は高鳴っていた。あのめちゃくちゃに可愛い彼女が、どちゃくそに可愛い寝顔をして、無防備にも眠っている。

 心臓バクバクだった。鼻息も荒くなっていることに、今さら気づいた。

 ……彼女は寝ている。ちょっとぐらいなら、触っても起きないだろう。少し、少しだけなら…


 しかし、ここで欲に負けてはいけないと、今本当にすべきことを考える。考えた末、リビングのソファの上から毛布を取ってきて、彼女の肩にかける……


(グオッ)


 寝ている彼女がすぐそこに...!! そのまま腕を伸ばしたい欲に駆られた。今腕を伸ばせば、彼女を後ろから抱き締めることができる。


 ……しかし、彼女の久しぶりの貴重な睡眠を邪魔するのは、不本意以外の何物でもなかったので、本当の本当にあと一歩のところで何とか堪え、彼女から離れる。まだ震える手でテーブルの上の、ライトのリモコンを操作し、真っ暗はさすがに怖いかなと思って、常夜灯に設定する。そして最後にもう一度、彼女の寝顔を拝んでから階段に足をかけると、


「ちょっと!!」


という、彼女の声が聞こえた。


「え?!」


俺が思わず声を上げると、ライトは普通の明るさに戻され、寝ていたはずの彼女が普通に立って話し始めた。


「幼女との行為を目前に控えた今日、あなたの目の前には幼女、しかも自分に対して好意を抱いている幼女、更にぐっすり睡眠中の幼女……。ここまでの条件が揃って、なんで興味すら示さないの?!」


「え?! ……いや、興味ならめちゃくちゃあったよ。何なら、後ろから抱きつこうかと思ってたぐらいだよ」


「え、そうなの?!」


すると彼女は、ソファへ小走りで逃げ、ソファの上で体育座りをして、両太ももの間に顔を埋めた。耳が真っ赤だから、きっと顔も真っ赤なんだろう。そして、彼女は、籠った声でこう言う。


「で、でも、何もしなかったら、何も思ってないのと一緒だわ!!」


「先生の久しぶりの貴重な睡眠の邪魔なんて、できないよ」


彼女は更に深く顔を埋めた。


「...ぐらいしてよ...」


更に声が籠り、何と言ったかよく分からなかった俺が、


「え?」


と言うと、彼女は顔を上げ、


「だから、キスぐらいして欲しかったって…!!」


と言った後、ハッと我に返って、また顔を埋めてしまった。一方の俺は、真っ赤な顔で、そんな可愛すぎることを言われたので、もう完全にその気になってしまった。


 そういうことなら、今から堪能しつくしてやろうと、これまでにない興奮状態で、


「そ、それなら」


と言ってソファの方へ歩き出すと彼女は、俺の言わんとすることがわかったのか、


「今更いいわよ。もう冷めた」


と、絶対冷めてない真っ赤な耳のままでそう言った。


「いいの? キス、してあげるよ?」


「だから、もう冷めたの!!」


そう言われてしまったので、めちゃくちゃ名残惜しくはあったものの、彼女に嫌われたくない一心で諦めて、


「……そっか、じゃあ、おやすみ」


と言うと、彼女は顔を埋めたまま、本当に小さな声で、


「おやすみ」


と言ってくれた。













翌朝起きると、昨日のことの始末をどうしようかと、少し考えた。


(もし彼女が何か行動を求めたいたら、抱き締めてあげよう。もし昨日の最後の体勢のまま動かなかったら、彼女の分まで俺が朝食を作ろう。なに、目玉焼きぐらい作れるはずだ。恐がるな。例え卵を割る時に、黄身まで割れてしまったとしても、そのままスクランブルエッグにしてしまえばいい。もし、怒って一言も口を聞いてくれなかったら、謝ろう。死ぬ気で謝ろう。彼女のことだから、きっと許してくれる。...よし、行くぞ)


 俺は意を決して階下へおり、できるだけ明るい声で、




「おはよう!」




と言った。すると彼女は、何事もなかったかのように朝食を作りながら、何事もなかったかのように




「おはよう」




と言った。これには、思わず2度見した。


(え、特に何も無し?!)


それは、予想していた約10のパターンの、どの一つにも当てはまらなかった。


 ソファに座り、テレビを付け、冷静に考えると、昨日のことは夢なんじゃないかと思った。うん、恐らく夢だ。妙にリアルな夢を見たな。


 そう思い込んでいたのに、朝食中、彼女に




「昨日のは目覚ましよ。このテレビみたいに。だってあなた、全然先を見てないんだもの」




と言われたので、やっぱり昨日のことは現実だったんだと悟った。そう、俺は、行為を3日前に控えていた昨日でさえ、行為のビジョンを全く見ていなかった。それに気付いた彼女は、そんな俺の目を覚ますために、あんなことをしてくれたのだ。途中からは、本気になっちゃったっぽいけど。そのことを理解した俺は、ようやく、本当にようやく、幼女と性的な行為をするんだという意識を強く持った。

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