第26話 ロリ先生の覚悟と俺の妄想

 色々あって、計画の日程が1日ずつずれ、今度こそ本当に行為予定日の3日前となった今日、俺と彼女は、ノマシロに来ていた。


「脱げないとなると、やっぱり薄手のものが良いわよね...」


どうやら、朝の彼女の説明通り、ターゲットとの行為中に俺が着る服を選んでくれているようだ。


 20分程かけて彼女は、柔らかい素材のズボンと、薄い素材の半袖シャツを手に取り、俺に試着するよう言った。

 試着してみると、これなら確かに服を着たままでも相手を感じることができそうだった。いや、やったことないから知らないのだけれど。

 試着した姿を見せると、彼女も納得したようで、その2点を買った。


 てっきり彼女も一緒に服を買うと思っていたのだが、それ以上は何も買わずにそのまま店を出たため、彼女の服は買わなくていいのかと思い、


「先生は、服買わなくていいの?」


と聞くと、


「今日から私も、ターゲットと接触するでしょ?そしたら、公園に遊びにくるようなわんぱくな5歳女児を演じなきゃいけないじゃない?

 そのためには、顔と声だけじゃ足りない、服装もかなり大事になってくるわ。役作りは外見からなのよ。

 私が普段来ている服でもいけないことはないんだけど、もっと自然に見せるために、子どもっぽい服が売っている店に行くわ」


と言って歩き出した。そう、実は今日、彼女はターゲットと初めて顔を合わせる。


 (ロリ顔とロリ声が作れてしまうのに、更に服装まで子どもっぽくしてしまうなんて...!! 女優顔負けだなこりゃ。絶対可愛いやつじゃん)


 そんなことを考えながら歩くこと約10分、子ども服の王道「東梅屋」に着いた。看板に描かれた、こちらを向く白猫と目が合う……って、ん?!


「と、東梅屋?!?!」


「そ、そうよ? い、いき、行きましょう?」


あの彼女が、東梅屋の服を着るのか?! 全く想像付かないんだけど?!?!

って、本人もかなりテンパってるみたいだけど。


「いや、先生めっちゃテンパってるじゃん!」


「テンパってなんかないわよ!! か、覚悟を決めてるだけよ。そう、これも全ては計画成功のため...プライドを捨てるのよ、私...!」


そう言って目を開き、覚悟を決める彼女と入店した俺が見たのは、懐かしいあの光景だった。もちろん俺の行っていた店舗ではないし、さすがにあの頃とは少し雰囲気が違っているが、そこは確かに、俺が幼い頃、親と一緒に来ていたあの場所だった。

どこの東梅屋に行っても、懐かしい感じがするなんて、不思議だなぁ。








「やっぱり無理!!」


 そう言って彼女が店を飛び出したのは、入店してからおよそ3分後のことだった。


「まだちょっとしか見てないじゃ~ん」


慌てて後を追いかける。


「ちょっと見ただけでも無理って悟るぐらい無理だったのよ!!

 しかも最近の子ってちっちゃい内からオシャレとかしてるわよね?! だったら普段の私の服装で全然良くない? って考えも出てきたからもういいの!

 とにかく、もう一回ノマシロに行くわよ」


そう彼女は早口でまくし立て、歩いてきた方向を戻る。


 結局彼女はノマシロで、バッグを含む合計5点の商品を買ったのだった。

 会計を済ませて店を出た後、歩きながら彼女は、


「あぁ、やっぱりノマシロは子どもサイズでも子どもっぽいって感じじゃない物も多いし、何よりデザインがシンプルで一番良いお店だわ」


と、満足げな顔で言った。そんな彼女を見て、俺は


(確かに彼女は、こういう子どもっぽくない服の方が似合うかもな。子どもっぽい服を着てもめちゃくちゃ可愛いんだろうけど!!)


なんてことを考えながら歩いた。

 ちなみに、ロリ顔を作った彼女が、もしさっき東梅屋で見たかわいいロリ服を着たら...という妄想をしてニヤニヤしていたことは、彼女には絶対秘密だ。


 その後、「ばつまつ」で昼食を摂ったが、また彼女に触発されてサラダを追加注文してしまったので、次からは最初から頼もうと心に誓う。


 20分程かけて家に帰った後は、彼女とひたすら今日の授業の打ち合わせを行う。

 ジョギングを始めた日から約2週間、暗記してきたセリフを確認しなおす。原稿を見ずに言えるか、彼女に確認してもらう。何せ今日は、彼女から指示をもらわず、事前に彼女に考えてもらった言葉を、1人で喋らなければいけないのだ。忘れてしまえば、計画は即失敗となる。

 そして約2週間、今日のために練習しておいた凄ワザも、彼女と確認しなおす。何せ今日は、彼女のターゲットとの初コンタクトの日なのだから。

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