第22話 ロリ先生の過去

 「...今のは、私の実の母親。そしてあの人の言った通り、私の名前はまなみ。愛に、奈良の奈に、美しいで愛奈美。申し遅れてしまって、ごめんなさい。まぁ、それにしても遅れすぎだけれどね。

 じゃあ、早速本題に入るわ。ここからは、過去の話よ。




 私とお母さん、そしてお父さんは、今お母さんが1人で住んでる家に、3人で暮らしてた。お父さんもお母さんも私にとっても優しくて、毎日すごく楽しかった。


 そんなある日。あれは、私が2歳の頃。それより前からずっと、夕方頃にお母さんはほぼ毎日1人で夕食の買い物に行っていたの。お父さんは家の中で仕事をしていたし、私も生粋のテレビっ子だったからね。買い物について行くよりもテレビを見ていたかったのよ。

 その日も例に漏れず、お母さんが買い物に行って、お父さんと2人でテレビを見ながら、お母さんが帰ってくるのを待ってたの。そしたら、お父さんが私の名前を呼んで、おいでって言った。お父さんは、なんだろうと近づいた私を抱っこして、キスしたの。お父さんは普段から私を可愛がってくれてたけど、キスは初めてだったから、恥ずかしかったけど、すごく嬉しかった。

 そう、その時私は、当然のことながら、キスを親の子に対する愛情表現の1種と考えていたの。


 でもその後、ベッドに連れて行かれて、押し倒されて、息ができないくらいキスされた。手足を押さえつけられた。性器に痛みが走った...。

 今ので分かったと思うけど、私、その時、お父さんに犯されたの。何度もやめてって言って抵抗したんだけど、力の差は圧倒的で、結局お父さんが満足するまで行為は続いた。 


 行為が終わると、お父さんは一度トイレに行ってから、ベッドの上で戸惑う私の肩を抱いて、ごめんねって言ったの。私は、自分が今嫌な気分なのか良い気分なのか、何が悲しいのか何が嬉しいのかも何もかも分からなくて、完全な放心状態だった。でも、お母さんには絶対に言うなって言われたから、そのことをお母さんには言わなかった。

 そしてそれからお父さんも、お母さんに私の性器を見せないように、色々なことをしてた。無理やり理由をつけて私とお風呂に入ったりとか、私のオムツ交換を率先してやったりとか。

 お母さんはそれを怪しむどころか、育児をやってくれるようになったって、喜んでた。


 そしてそれからほぼ毎日、お父さんとセックスした。最初の方は嫌だったんだけど、だんだん気持ちよくなっていって、その時間が好きになっていった。行為中は、お父さんからすごく愛情を感じたから。愛されてるって感じることができたから。だから私は行為中、とても幸せだった。


 そんなある日。あれは私が3歳の時、お母さんが買い物に行ったことを確認して、私たちがいつも通り寝室で行為をしていたその途中、忘れ物に気付いたお母さんが、一度家に帰ってきたの。

 私は物音で気付いたんだけど、お父さんは行為に夢中で、それに気付かなかった。

 それで、寝室から音がすることに気付いたお母さんが、寝室のドアを開けて、私達の姿を見てしまった。


「何してるの!!!」


お母さんはそう叫ぶと、私とお父さんを強い力で離して、私のスカートを履かせ直してくれた。


 そこからは思い出したくもないけど、お母さんが泣いて、発狂して、大声でお父さんを責めて。お父さんは、ずっと「違うんだ」って繰り返してた。でも、その行為がいけないことだって知らなかった私は、何が起こっているか分からなかったし、行為が途中で終わってしまったことがどうしても嫌で、最高に幸せな瞬間を味わっていないことがもどかしくて、


「お父さん、もっとチューして?」


なんて言ってしまったの。その言葉がお母さんの残り僅かな理性をとうとう壊してしまったのね。


「うっさい!! ジロジロ見てんじゃねぇよ!! ガキはどっか行け!!」


って言われて...私、お母さんにずっと優しくされてきたから、そんなこと言われて、すっごくショックで...自分の部屋に閉じ籠って、沢山泣いた。


 それからちょっとしたら、パトカーとか救急車が家に来て、なんかすごく怖かった。でも、女性警察官の人と、女性の医師が部屋に来てくれて、パトカーとかがいなくなるまで、色んな話をしてくれた。少しの間だけだけど、さっきまでの感情を、和らげることができた。

 2人は最後に手を振りながら、「おやすみ」って言ってくれたけど、当然その日は眠れなかったわ。ちなみに、私が寝れなくなったのはこの日からよ。


 翌日、その翌日と2日間、私はお母さんと一緒に警察署に行って、事情聴取を受けた。いつから続いてたとか、具体的にどんなことをされたかとか、色々聞かれたわ。


 そしたら最後、女性の警察の人に、


「怖かったね」


って言われたから、


「ううん、怖かったのは最初だけで、後は全然怖くなかったよ。あのね、お父さんはね、悪いことしてないよ。まなみに好き好きしてくれただけ。だからお父さんは悪くないよ」


って言ったの。それが、紛れもない私の本心だった。だけど、


「愛奈美ちゃんがそう思っても、お父さんは"ほうりつ"っていう、日本に住んでいる人が絶対に守らなきゃいけないルールを破っちゃったの。だから、ちょっと反省しなきゃならないんだ。わかる?」


って言われちゃって。多分その時の私は、あれはお父さんの1種の愛情表現であって、犯罪ではないって言いたかったんだろうし、警察の人の言葉にも反論したかったんだろうけど、当時の私にそんな語彙力無かったし、法律が何なのかも、反省の内容も知らなかったから、結局何も言い返せなくて、とてもとても悔しかったの。


 そして、警察の人たちに見送られながら、お母さんと家に帰ったんだけど、家に着いても、お母さんはずっと俯いたままで、何も喋らなかった。

 いつまで経っても何も喋ってくれなくて、心配になってきたから、お母さんに


「大丈夫?」


って聞いたら、


「......何が大丈夫? よ、ガキのくせに生意気な。あんたさえいなければ幸せなままでいられたのに、あんたさえいなければあの人は私のことを愛し続けてくれたのに、あんたさえ産まなければこんなことになってないのに...!! 分かってんの?!」


って、今まで見たことないくらいお母さんが怒ったから、すごく怖くなって走って2階に逃げたの。そしたら、階段をゆっくり登って追いかけてきたから、2階で唯一鍵がかけられる部屋...お父さんが使っていた部屋に急いで逃げ込んで、鍵をかけたの。でもお母さんは、無理やり開けようとしてきて、それに焦って私もドアを必死に押さえた。お母さんは、鍵なんて壊しちゃうんじゃないかってぐらいの力で押してきて...その時の私は、体力的にも精神的にも限界を超えていた。

 どうすればいいのか分からなくて、辛くて、だからしょうがなく


「もうやめて!!」


って大声で叫んだ。

 そしたら、ドアにかかってた力がなくなって、静かになった。それから少ししてから、お母さんが階段を下りる音が聞こえたの。

 良かったっていう凄まじい安心感と、感じたことない恐怖と、酷いショックで、涙が止まらなくなった。今すぐお父さんに会いたくなった。なのに、誰にも会いたくなかった。

 きっとこのまま1人っきりなんだって思った。そして、1人っきりの方がいいやって、思った。もうこのまま消えてしまいたいって。


 だけど、事情聴取の時の、あの悔しい気持ちを思い出したの。誰も私のことを理解してくれない、誰の言葉も理解できない、あのやるせなさ。


そして、思い直した。

 このままじゃ弱いままだ、って。強くなれないって。また悔しい思いをするって、それは絶対に嫌だって、思った。

 だから私はその日から、少しでも強くなるために、語学勉強をすることを決めた。そうすれば、大人と対等に話せると思ったし、法律も反省も、理解できると思ったから。


 そしてその日の夜、お母さんがご飯を部屋の前まで持ってきて、ドアをノックして、


「ごめんなさい」


って言ったの。でも、その時の私は、何だかお母さんと話したくなくて、ご飯は食べたかったんだけど、無視することにしたわ。

 それから1ヶ月ぐらい、お母さんは朝昼夜のご飯の時間には必ず部屋の前まで来たんだけど、無視し続けたら、さすがに諦めたみたい。


 まぁそれはおいといて、勉強についての話をするけど、まずは、お父さんの本棚に置いてあった本を読んで、分からない言葉が出てきたらお父さんのパソコンでその言葉の意味を調べるってやり方で勉強したわ。それで、調べると、出てきたその語句の説明文にも分からない言葉があるからその言葉も調べて、また説明文で分からない語句を調べて...って、そんな地味な作業を、1日23時間、睡眠はせずにやったわ。ちなみに残りの1時間は食事と生理·衛生の時間ね。食事は1日1食、隣の家の親切な女の子にパンをもらってた。


 生理·衛生は、実はお父さんの書斎には、トイレとシャワールーム、洗濯機までついていて、そっちの面では困らなかったし、他にも流し台や調理台、お父さんが個人的に買った電子レンジもあって、1部屋だけの生活にしては、かなり良い生活を送れたわ。ただ一つ困ることがあるとすれば、湯船に浸かれなかったから、冬は極寒だったってことね。でも、ヒーターもエアコンもあったから、何とかなったわ。


 話を戻すけど、そんな感じで勉強して、本棚の小説全てを読めるようになった。

 そして次の勉強の方法として、辞書を使おうと思ったの。だけどお金が無かったから、辞書を買うことができなかった。

 そこで、将来の生活資金も貯めたかったし、ご飯も貰ってばかりじゃなく、自分で買いたいと思っていたから、バイトを始めることにしたの。

 そして稼いだお金を使って、今使っているものとは違うけど、赤い分厚い辞書とノートを買って、勉強した。ご飯も毎日近くのパン屋さんからパンを買えるようになったし、その他に日用品も買えたわ。そしてバイトを始めてからは、その時間を除いた1日18時間、辞書を使って勉強した。


 それからかなり長い年月がかかって、ようやくあと少しで、その辞書の語句を全て覚えられるってタイミングで、少し疲れが溜まってきて、息抜きにあの公園に行くようになったの。人の温もりとか、愛に飢えていたから、人の多い公園を選んだんだけど。

 そこで、あなたを見つけた。最初は何とも思わなかったんだけど、何度か見ている内に、あなたが幼女を見つめる瞳には、面倒を見てあげる対象とか、遊んであげなきゃいけないとか、可愛いとか、そういう他の大人から感じられるものとは別に、好きっていう感情とか、愛っていうものを感じたの。

 それであの日、愛に飢え、更にはお父さんの影響で「大人」からの愛を感じたかった私は、この人なら私を愛してくれるかもと思って、あなたに声を掛けたの。


 私、自分の気持ちに素直になれないところがあるから、あんな怒ったような態度で話しかけちゃったけど、本当は結構、恋愛感情として、あなたが気になってたのよ。可笑しいと思われちゃうかもしれないけど。


......ここまでが、あなたと出会うまでの、私の過去の話。」

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