第15話 ロリ先生の朝食と遠出
朝目覚めると、空が雲っているのか、いつものカーテンからの漏れ日が無かった。なんて言うと、実はまだ夜だけど起きちゃった、という感じに聞こえるかもしれないが、時計の針はしっかりと朝7時を指している。
カーテンを開けてみると、案の定、空はどんよりと曇っていた。
しかし、リビングへ向かった俺が、今日もキッチンにいる彼女に
「おはよう」
と言うと、
「おはよう」
と可愛い笑顔で言われたので、曇っていた俺の気持ちは一転、快晴となった。
朝ごはんができるまで、朝の固定チャンネルとなった情報番組を見ていると、天気予報をやっていて、やはり今日は1日曇りのようだった。しかし、幸い雨は降らないようで、彼女との外出が憂鬱なものにならなくて済むだろう。それだけで俺は、嬉しく感じてしまう。しかし、万が一に備えて、折りたたみ傘は持っていこう。
それから少し経つと、彼女が朝ごはんを持ってきてくれた。品数が多いようなので、俺も運ぶのを手伝うと、テーブルの上に揃ったのは、納豆、卵焼き、漬物、味噌汁、ご飯だ。まさに「日本の朝」というべきラインナップである。
「いただきまーす」
と言って小皿に盛られた納豆に醤油をかけ、混ぜようとすると、その上に刻んだネギが乗っていることに気が付いた。細かいところまで手を抜かない彼女を、またまた尊敬しつつ、ご飯の上に乗せようとすると、
「待って!」
と突然彼女に言われた。驚いた俺が、
「え?」
と言うと、
「納豆に含まれている納豆菌も、熱に弱いの。だから、乗せるならご飯がもう少し冷めてからにしてちょうだい。または、別々に食べて」
と言われたので、なるほどそういうことかと納得し、ご飯が冷めてから乗せようと、納豆を一旦元の場所に戻しておく。
彼女と暮らしてたら、俺も物知りになれそうだなと思いながら、箸で切った卵焼きを口に入れる。甘い卵焼きではなく、だし巻き玉子なのだが、めちゃくちゃふわっとしていて、だしの風味が強いのに、しっかりと卵の味がするそれは、やっぱり期待を越えるおいしさだった。意識せず、
「うまっ」
と声が出てしまうほどに。
「それは良かった。今回はだし巻きを作ったんだけど、甘い方が好みだったりする?」
と、伺うように彼女が聞くので、
「いや、どっちも好きだよ。でも、明日は甘い方も食べてみたいかな」
と答えると、
「ええ、分かったわ」
そう言って、彼女は微笑んだ。リクエストまでさせてくれるなんて、どこまで完璧なんだ。
俺が、次に、大根とかぶと白菜の漬物を手に取ると、彼女は、
「その浅漬け、昨日の深夜漬けたばかりだから、まだ味が染みてないかもしれないわ」
と心配そうに言った。
口に入れてみると、確かに味が薄いようだったが、そこはさすが具のほとんど入っていないおにぎりを毎日食べ続けた男、薄味は好みだ。
「ちょっと薄いけど、うまいよ」
と本心で言うと、彼女は浅漬けを一口食べ、
「うん、やっぱり薄いわね...。今日の夕飯の時にはしっかり漬かると思うから」
と言った。
味が染みた浅漬けも楽しみにしつつ、俺はやはり冷ましてあった味噌汁を飲み、冷ましたご飯に納豆をかけて朝食を食べ終えると、皿を洗った。
最近なぜかちょっと楽しくなってきた皿洗いを終え、リビングに戻ると、彼女から今日1日の流れが説明された。
「今日は、午前中はおもちゃ屋さんに行くわよ」
と言われたので、彼女もやっと子どもっぽいところ出てきたかぁ、可愛いなぁと思い、おもちゃで遊ぶ彼女を想像していたのだが、
「もちろん私が遊ぶためじゃないわよ? 作戦を実行する上で必要なの。だって、ターゲットを家に迎え入れた時に家におもちゃが無かったら、つまらないと思われちゃうし、私がいるのに遊ぶものが無いなんて不自然でしょ?」
という言葉で、妄想が吹き飛ばされた。続けて、
「午後からは授業だけど、今日はかなり体力使うから覚悟しといてね?」
と彼女が言ったので、
「もう行為ですか! 早いですね先生!」
と少々興奮気味で言うと、
「何考えてるの? 行為はまだまだ先よ。今日はその準備」
と呆れた顔で言われたので、行為を想像して熱くなっていた体は、元に戻った。
その後、出かける準備をし、彼女の着替えが終わるまでテレビを見ていると、「玩具不良で幼児けが 製造会社が謝罪」なんてニュースがやっていたので、そろそろ誰か俺たちを監視しているのか? と思った。
彼女の着替えが終わると、身の回りの点検をして、家を出た。
今日も超絶可愛い彼女と手袋を挟んで手を繋いで歩いていると、彼女が、
「今日はいつもより遠いけど、授業のために体力は温存しておいてね」
と言ったので、そんなの絶対無理だろと思いながらも、
「りょーかい」
と言った。
いつもより遠いというその言葉通り、彼女と雑談をしながら歩くこと40分。ようやく、あの超有名なおもちゃ屋「トイざます」に着いた。
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