第11話 俺の小話

 彼女は、着替えを終えた俺を見ると、


「あら、着替えたのね」


と言ったので、


「うん。あ、あの服が気に入らないとかそういうことでは全くないよ? ただ、ああいう服は家で着てると落ち着かなくて」


と答えた。すると彼女は、


「確かに、急にダサい服じゃなくなると、私もかなり違和感があるわ。あなたはそっちの方が良いのかもね」


と嘲笑し、


「じゃあ、またちょっと出てくるわね」


と言って外に出ていった。バカにしたような言動にムッとしたが、可愛かったので許すことにした。

 ふと時計を見ると、授業開始まではまだ時間があったので、暇潰しにテレビを見ることにした。


 ソファに深く腰掛け、テレビの電源を付けると、お昼のバラエティ番組で、ファッション系の企画をやっていた。どうやら、出されたテーマに合わせてコーデをつくり、その完成度で対決するというものらしい。


 そこそこ楽しんで見ていると、突然、イカれたアナウンサーとえらそうなオネェが出てきて、買い物に来ていた一般の人のファッションを勝手にチェックし、ダメファッションかナイスファッションかを決めるというコーナーが始まった。

 えらそうなオネェは、一般の人のコーデを見ると、「ちょいダメ~~」とこれまたえらそうにファッションを評価している。そして、自らファッションを作り直し、「こっちの方が絶対良い~」と、自分のコーデを自分で絶賛している。


(人にはそれぞれ好みってのがあるし、その好みを否定して、「ダメファッション」とか、何様だよお前。お前が良いと思うファッションだって、自分の価値観を他人に押し付けてるだけじゃないか。てかそもそも、誰もお前からのチェックなんて望んでねぇよ)


と、なぜか1人でちょっとキレてしまった。更に、元々の企画であるコーデ対決でも、自分が「ありえない」と思った方が勝つしで、かなり不機嫌になってしまった。


 すると、彼女が帰って来た。気づけば、もうすぐ授業開始だった。

 そして彼女は、俺の顔を見ると、


「あら? ちょっとテンション低い?」


と心配そうに聞いたので、そんなに分かりやすかったかなぁ?と思いつつ、


「うん。刈梅っていうオネェ見てたら、腹立っちゃって」


と、少々ムッとしながら答えた。しかし彼女が、


「よくわからないけど、私のさっきの発言が原因じゃなくてよかったわ。じゃあ、授業始めるわよ。ほら元気出して、今日はあなたの大好きな下もちょっとだけ出るから」


と言ったので、俺は分かりやすくテンションが上がった。

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