第10話 ロリ先生のコーディネートと俺の初オシャレ
翌朝起きると、彼女はキッチンで器に朝食を盛り付けていた。
「おはよう」
日常になりつつある光景に幸せを感じながらそう言うと、
「おはよう」
と、笑顔で返してくれた。しっかし本当に、朝早くから彼女は可愛い。
俺がソファに座り、テレビを見ていると、彼女が盛り付けの終わった器を運んで来てくれた。ツヤのあるふっくらご飯に、野菜のたっぷり入った煮物、なめこ汁、みかんまで付いて、今までの俺の朝食とはかけ離れた、超健康的な朝食だった。味噌汁が少し冷めていたのだが、彼女のことだから何か理由があるんだろうなと思い、彼女に聞いてみると、
「味噌に入っている身体に良い成分は、熱を加えすぎると死んでしまうの。だから、できるだけ低温、具体的には50℃くらいで調理するのがいいのよ」
と教えてくれた。やはり彼女の知識は底なし沼だ。
占いは、俺が9位でラッキーカラーは黒、彼女が7位でラッキーアイテムがスカートという結果だった。
今日もおいしかった朝食を食べ終え、彼女から今日の流れが発表されたのだが、昨日の日用品の買い物の時間が、洋服の買い物の時間に変わっただけで、特に変わりはなかった。
その後、俺は出かける準備を終えると、昨日と同様、彼女の準備が終わるまで、テレビを見ていた。すると、(7歳女児にわいせつ行為の30代男逮捕)というニュースが流れたので、
(7歳でニュースになるんだから、5歳も相当だな)
なんてことを考えた。もちろん、彼女とヤる予定は無いのだが。
少し経って、彼女の準備が終わったので、家を出発した。
俺はラッキーカラーを意識して(意識し過ぎたかもしれない)、黒いズボンに黒い靴下、黒い肌着に黒いセーターという、黒々コーデにした。一方彼女は、黒いシャツと、リッチな雰囲気がある濃い緑のロングスカートに、大きめの白いダウンジャケットというコーデだ。毎度のこと言うが、可愛い。すると彼女が、
「何、その格好?」
と睨みながら聞いたので、やっぱ変か~と思いつつ、
「ラッキーカラーを意識して…?」
と言うと、彼女はため息をひとつ吐いて、
「不審者って思われないように私が色々してあげてるのに、あなたがそんな格好したら、元も子もないじゃない」
と呆れ顔で言った。(やらかした~)と思っていると、彼女が
「私が今日服屋さんでコーディネートしてあげるから、その場で着替えてね」
と言ったので、
「わ、わかりました~…」
と答えた。
(彼女が俺をコーディネートしたら今日から俺もオシャレさん?! まずもって、オシャレな服は俺に似合わない気がするんだが?!)
なんて考えながら歩くと、「ノマシロ」という服屋さんに着いた。まず自分は行かないであろう、オシャレ系のお店だ。
店内に入ると、彼女はメンズ服のコーナーに歩いて行った。どうやら、俺の服を先に選んでくれるらしい。まぁ、黒々コーデの隣にいるのが恥ずかしいということだろうが。
俺が適当に店内を見ながら待っていると、30分程経った頃、「試着してみて」と彼女から声がかかった。試着というのがどういうものかは知っているが、サイズさえ合っていれば何でもいい俺は、試着というのをしたことがなかったので、少し緊張して試着室へ入ると、彼女から服が渡された。新品の独特の匂いがする。
彼女は、
「着替え終わったら、カーテン開けて見せてね」
と言うと、個室のカーテンを閉めた。どんな服だろう、と俺はワクワクで着替えた。グレーのちょっとゆるっとした服に、黒いジャケット、黒いズボンというコーデだった。彼女も配慮して、ラッキーカラーの黒を多めにしてくれたらしい。人生初であった試着は、なんとも言い難い違和感があった。
「終わったよ~」
と言いながらカーテンを開けると、彼女は振り向き、コーデを見て腕を組む。すると、
「まぁ…似合っているかは別として、さっきの格好よりはだいぶましでしょ」
と言った。やはり似合っていないのだろうか。俺はオシャレな服が本当に初めて過ぎて、似合っているかどうか、そもそもこのコーデがオシャレなのかすらわからなかったのだが、さっきよりは良いらしいので、その服を買うことにした。
レジで、店員さんから
「着替えて行かれますか?」
と聞かれると彼女は、俺が答えるより早く、
「はい」
と即答した。そんな酷かったか~? と苦笑いしつつ、俺はもう一度試着室に行くと、買った服に着替えた。
その後、彼女が
「もう1つぐらい全身コーデがあった方がいいだろうから」
と言って、もうひとつコーデをつくってくれた。もちろんその服も一式購入した。
最後に肝心の彼女の服を買うと、店を出た。彼女が買った服というフィルターをかけると、それらの服が全て可愛く見えた。
この店は、シンプルな服が多かったので、シンプルな服が好きなのかと聞いてみると、
「ええ、柄物はあまり好みじゃないの。あなたのコーデもかなりシンプルにしたんだけど...もしかして嫌だった?」
と心配そうに言われたので、
「いや全然!! ファッションにこだわりも何も1ミリもないから」
と言うと、彼女は
「なら良かった」
と言って笑顔になった。思い返してみると、確かに彼女の格好はどれもシンプルだった。
ふと時間を見ると、そろそろ昼食の時間だったので、俺が
「昼はどうするの?」
と聞くと、彼女は
「行ってみたい場所があるのよ」
と言って歩き出した。
昨日はフードコートでそばを頼んでいたし、今朝の朝食も和食だったから、高級料亭にでも行くのかなと思っていたら、着いたのは洋風のこれまたオシャレなカフェだった。彼女のことだから意外性は無いのだけれど。
昼食は、これまた人生初の「カフェごはん」というのを食べた。俺は、プレートに色々乗ってるやつ、彼女はいろんな物をチーズでフォンデュするやつと、めちゃくちゃカラフルなデザートを食べた。周りには、オシャレな若い人たちが結構いたのだが、今日は、彼女がコーディネートしてくれた服を着ているからか、あまり劣等感を感じなかった。
ご飯の味もまあまあで、満足した俺たちは、店を出ると、常連になりつつあるスーパーで夕食、明日の朝食の材料を買って、帰宅した。
ソファに座ると、いつもと違う服で、体が違和感を覚えた。せっかく彼女が選んでくれた服だったが、家の中で着ていると落ち着かなかったので、いつもの部屋着に着替えさせてもらった。一方の彼女といえば、出かける時に着ていた服を、そのまま家で着ているのに、まるで違和感がなかった。
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