第9話 ロリ先生の完全防御と俺の柔軟運動
「授業ってこんなに大変なんだね…」
と、授業終わりの疲れきった俺が言うと、
「いえ、今日の授業は、内容自体はとても簡単だわ。あなたがいちいち欲を出すからいけないのよ。さぁ、そろそろ夜ご飯作らなくちゃ」
と彼女は言って、キッチンへと向かった。疲れていたが、自分も何か手伝おうとキッチンへ行くと、
「ごめんなさい。お料理の前に、一つ頼みたいんだけどいいかしら?
2階のベランダに洗濯物が干してあるから、取り込んできてほしいの」
と言われた。だが、今日は洗濯はしていないはずだと思い、
「ん、今日洗濯してないよ?」
と言うと、
「昨日の夜、しておいたのよ。洗濯機の使い方はなんとか分かったんだけど、さすがにこの家のベランダを探し当てるのには時間がかかったわ」
と彼女は答えた。本当にどこまでも気が利くなと思い、
「ありがとう」
と言うと、
「毎日洗濯しないと気が済まないだけだから、気にしないで」
と言われた。
俺は2階へ行きながら、何でも家事をこなすのに、それでいて全く媚びる様子のない彼女に、改めて尊敬の念を持った。
2階へ上り、ベランダに出ると、洗濯物が等間隔できれいに干されていた。タオル系、靴下·下着系もきれいにまとめられていたが、予想通り、彼女の下着はなかった。しかし、俺の下着(パンツ)が干してあるということは、俺のパンツを一度でも彼女が触ったということだ。更に、俺の服と彼女の服が、洗濯機の中で混ざりあったということだ。俺はそれが嬉しくて、浮かれながら取り込んだ自分の洗濯物を畳んだ。彼女の服は、勝手に畳むと色々注意を受けそうだったので、畳まずにリビングに持っていった。
「洗濯物取り込んだよ。先生の服、畳まない方が良いと思って畳んでないんだけど、どこに置いとけばいい?」
「ありがとう。キャリーバックの上にお願い」
俺は、彼女の服を慎重にキャリーバックの上に置くと、
「そういえば先生の下着が干されてなかったけど…?」
と内心ニヤニヤしながら聞いた。すると、
「当たり前でしょ?! 女性の下着は外に干しちゃダメなのよ? 本当に何も知らないのね。大丈夫。洗濯が終わってからリビングに下着だけ干して乾かしたから。それに、あなたと私の服は、別々に洗濯したから、その面でも心配いらないわ」
と言われた…ん…今、なんて言った…? 別々に…洗濯した…?
俺はかなしくなった。とっても悲しくなった。どうやら、俺と彼女の服が洗濯機の中で混ざり合うことはなかったみたいだ。
「そ、そのわりに、俺の下着は普通に外に干すんだね」
と、なんとか二の句を継ぐと、
「え、まさか外に干されるの嫌だった? まさか、そういうの気にする人だった? あ、それとも下着を触られたくなかったとか? それなら大丈夫よ。洗剤とかが手に付いて肌が荒れたら嫌だから、洗濯物は全部ビニール手袋を付けて干したから」
と、衝撃の事実が淡々と述べられた。
ビニール…手袋……
俺の妄想の数々は、一つも叶うことはなかった。
「いや、外に干しても、もちろん、いいんだ、けど…さ」
と、ショックと闘いながらも何とか口にすると、
「良かったわ。あなたがそんなこと気にするような人だったらどうしようかと思った」
と言って、彼女は笑った。
(可愛い笑顔してるくせに、俺の夢を1ミリも実現させてくれねぇ~!! クソ~!!)
彼女の完全防御に、俺は心の中で泣いた。
その後、2人で夕食を食べた。今日のメニューは、焼き魚だった。魚より肉の方が好きなのだが、やはりとてもおいしかった。
そして、彼女の洗った風呂に入った。もちろん、彼女の浸かった浴槽に入ることはなかった。しかし、昨日は色々あって気付かなかったのだが、彼女は浴槽以外も掃除してくれていたようで、壁や床が、ピカピカになっていた。そんなキレイな風呂場に入ったことで、落ち込んでいた気分が、少しだけ上がった気がした。
風呂からあがると、まだ寝るまで時間があったので、また彼女と柔軟運動をしてみることにした。絶対に昨日のリベンジを果たしてやる。
脱衣場から出ると、彼女は昨日と同様、柔軟をしていた。
「今日もやってるね~」
と声をかけると、
「あら、今日は早かったのね」
と時計を見ながら言われたので、
「昨日が長風呂だっただけだよ。いつもはこのくらい」
と説明した。
「自分も柔軟やってみるわ」
と勇気を出して言うと、彼女は、
「それはとても良いことだわ!!」
と笑顔で言って、柔軟の基礎から教えてくれた。身体の硬い俺にとっては地獄だったが、彼女との運動は、楽しいものだった。
あっという間に30分が経過すると、彼女が
「じゃあ、もう一度開脚してみて」
と言ったので、俺が開脚してみると、最初とは比べ物にならないくらい足が開いた。彼女に比べれば、まだ足元にも及ばないものだが、確実な進歩だ。
彼女の柔軟講座を毎日受けていれば、俺の身体もいつかは軟らかくなるかもしれないな、なんてことを思いながら時計を見ると、いつの間にか時刻は22時になろうとしていた。そろそろ寝室に行こうと思った俺が、彼女に
「今日も寝ないの?」
と聞くと、
「ええ、多分寝れないと思うわ」
と苦笑いして彼女は言った。
「そっか。眠くなった時は、そこら辺で適当に寝てもらって構わないよ。じゃあ、自分はもう寝るから、おやすみ」
と言うと、彼女は
「わかったわ。おやすみ」
と言って微笑んだ。
俺は2階へ階段を登る間、彼女の微笑んだ顔を思い出しながら、すでに当たり前となった日々の幸せに浸った。その後、寝室に入り、布団の中で昨日あがった恋愛小説の続きを読み終えると、就寝した。
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