ミザリーの過去Ⅱ
兵士長達に連れられ闘技場入をしたルキア。
それとは、逆に─────
とある牢屋内では1人のオーガの女剣士が手枷を嵌められたまま牢屋内で静かに瞑想し精神統一をしていた。これから倒す相手に全力で持って答える為に、女剣士は戦う度に瞑想を繰り返し心を鎮める。己が慢心こそが最大の敵だと幼き頃より教わってきた習慣故だ。
だが、この日は何時もと様子が違っていた。
何故なら人族完全主義国家の貴族連中が2,3人、兵士を共にし牢屋を訪れたからだ。
貴族がみすぼらしくも小汚い闘技奴隷の場へと興味本位では来るはずがない。
女剣士は「貴族が、このような場所に何用だ?」と聞くと、眼鏡をかけた白髪の老貴族が兵士に命を出し
女剣士の手枷を外すよう命じる。
「これで話しやすくなったな」
「話?私の村を襲い、両親や妹を人質に取った貴様らと話すことなどない」
女剣士はそう言うと、老貴族を睨みつけながら物言いをするが、老貴族は女剣士の物言いなど気にも止めてないのか女剣士の方を見つめ
「随分と吠えるようだが、我等には切り札があることを忘れてないか?アイカよ」
老貴族の言葉に「卑怯者が」とほざくがアイカの言葉など耳に入っていないかのように話を進める貴族達。
「アイカよ、取引と行こうではないか?」
「取引だと?この国の宰相ともあろう貴様が闘技奴隷と取引とは笑わせる」
老貴族もとい宰相はアイカの言に対し「ほう?アイカよ、まだ理解してないようだな」と口を開くと兵に命を出し奥の牢よりアイカの両親を連れてくるよう手配をする。
兵に連れられ長い通路の先より、痩せこけた2人の男女が見え、兵と共にアイカがいる部屋へと連行された。
2人はアイカを見ると感涙し1目だけでもとアイカの方に寄り付こうとしたが貴族達によりそれは叶わぬ事となった。貴族達は2人の内、母の方をその場で斬ったのだ。
「命まではまだ取らないで置いてやるが、これで理解出来たか?逆らえばお前の両親は勿論、妹の命の保証も出来兼ねると」
「く……!!分かった……」
「おお!!アイカなら、そう言ってくれると思っていたぞ!!おい……例の剣をアイカに」
宰相が後ろに控えていた2人の若い貴族達に目配せすると、若い貴族達は黒布に包まれた長さ3尺はあろう大太刀をアイカに手渡す。
「な……アレは……
黒布が取り払われ中から現れた大太刀を見て、背中を斬られた妻を抱き寄せながらも、アイカが手にした大太刀を見つめ口にするアイカの父親。父親はアイカに対し「その武器を今すぐ手放すんだアイカ」と叫び、アイカの下へ最後の気力を振り絞り走って刀を奪い取ろうとした父親は、あと一歩でアイカから剣を奪える距離に届く前に、兵士達の槍によりその身を貫かれてしまう。
「父上────!!」
目の前で両親が斬られ、貫かれた姿を目撃したアイカは殺意を胸に父が残した
だが───────
「ふ、良いのか?此処で私を斬れば次は貴様の愛しの妹が死ぬ事になるぞ?アイカよ」
宰相の、その言葉に「外道が!!」と吐き捨てるアイカ。
幼い妹を人質に取られた今となっては、背中を斬られ瀕死に陥ってる母以外に確実に助かる見込みがあるのは妹のみ。アイカは決心したのか
所変わり─────
兵士長達に案内され闘技場地下の控え室へと案内されるルキア。兵士長は、そんなルキアに対し1本の刀を手渡した。
「兵士長?この刀は一体」
「この刀はオーガの里の刀匠ギデオン殿の手により作られた名刀「
兵士長より神々しい輝きを放つ
「この国の国王様が、オーガの里殲滅を条件に無理矢理造らせたからです。断ればオーガの里は殲滅される、それを天秤にかけたオーガの里の酋長でもあり刀匠でもあったギデオン殿が首を縦に振り造られたと聞いております」
「そんな事が─────」
「ですので勇者殿。我らがオーガの里の姫にして剣士であるアイカ様をお救い下さい」
兵士長はそう言ってルキアの目の前で膝をつきながら頭を下げルキアに対しお願いをする。
「兵士長……分かりました。僕にどこまで出来るか分かりませんが力になります」
「おお……勇者殿……ありがとうございます」
「引き受けるその前に、兵士長にお願いがあるのですが、控え室にある藁人形で試し斬りをしても?」
ルキアは兵士長にそう言うと控え室の隅にある1つの藁人形を指差し試し斬りをしたいと兵士長に申し出る。
「別に構いませんが勇者殿は何か剣術の才が?」
「まあ、見ててください」
ルキアはそう言うと鞘にしまわれた
「
ルキアの目が開くと同時に、整えていた呼吸全てを吐き出しつつ、腰に差された
ルキアが藁人形より刀を振り下ろし鞘に仕舞おうとした
チン────と鍔が鞘にぶつかる音と共に
藁人形は突如、幾重にも斬り刻まれたのであろう何千何万の斬り傷が一瞬の動作のみで発動したのだ、
(まだ、
「まさか……これは、無想より転じて終なる剣を繰り出す帝王の剣技!!
「それは───」
ルキアが兵士長の問に答えようとした時、突如闘技場の方より豪快な銅鑼の音が響く
「どうやら、姫様が闘技場入りしたようです」
「勇者殿、ご武運を」
「ああ、行ってきます」
そして、2人はついに闘うことになった
堕落した熾天使 うるしー @URU4F
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