第39話ー逃走劇
青と赤の2匹のドラゴンはダンジョンの中の青空を
誰にも邪魔されず優雅に飛んでいた。
自分達が此処での王者だと、支配者なのだと
龍種という種族に誇りを持っていた。
しかし、自分達の居場所に異物が入り込んだ。
少し昔に遊び感覚で乗り込んで来た、
あの圧倒的強者に
なす術なく打ち倒された時と違い、
あの異物は自分達より弱いと感覚でわかり、
不快感を表す。
しかし、下級種族のワイバーンに見つかったので
すぐに殺されるだろうと思い、そのまま上空で
嬲り殺されるのを楽しみに観ていた。
だが、すぐさまそれが覆される事となった。
ワイバーンの首が飛んだのだ。
ドラゴンは怒り狂った。
下級種族とは言え、龍種に連なる同胞を殺されたのだ。
いや、それだけならば、弱肉強食の世界と割り切れたかもしれない。
けれど、許せなかったのは
異物の戦っている姿があの強者と重なったからだ。
実力差はあれど、戦う姿、雰囲気、
纏う闘気の流れ、全てが酷似していた。
2匹のドラゴンは倒された時をフラッシュバックして、積年の恨みとばかりに睨み付ける。
今ここにドラゴン2匹に追われる逃走劇が始まろうとしていた。
一方、ドラゴン達に見つかったレイルはというと、
焦りに焦っていた。
(やばい、やばい!
あれだけ派手に暴れたらそりゃ見つかるよねっ!
あんなの絶対勝てない!どうする?!
…あーっくそ!取り敢えず牽制しながら全力で逃げるしかない!出し惜しみしてたら殺されるっ。)
この間、実に0.1秒にも満たない時間だった。
ほぼ反射的にレイルは魔闘気を纏い、
魔術で身体強化のフィジカルブーストを施し、
脱兎の如く逃げ出した。
上空からの絨毯爆撃にも似た火球がレイル目掛けて
雨の様に降って来る。
それを全力で回避しながら逃げるが、
熱風による余波で髪や頬がチリッと焼ける音がする。
「流石に空から追い掛けるのはズルい!
っていうか、熱っ?!
……くそっ、仕返ししてやる。」
爆撃に若干苛立ちを覚え、疾走しながらドラゴンに向かって詠唱を始めた。
それは地球の魔法ではなく、
レイルの居た世界の魔術。
それも全部で13位階ある内の10位階に相当する
超高等魔術だった。
「黄昏よりも眩き者、混沌よりも闇き者…
汝、全てを討ち滅ぼす刃と成れ!
ソードディザスター!」
詠唱が完了するとレイルの背後から
魔法陣が浮かび上がり、
そこから光の剣と闇の魔剣が無数に出現する。
そして手を振り下ろすと大量の魔剣がドラゴンに
向かって飛んでいく。
ドラゴン達は光と闇の剣に込められた
大量の魔力に気付き避けようとするが、
その前に攻撃が到達し、ドラゴンの胴体に突き刺さり、爆発が起こった。
「手応えあり!これはやったかな?!」
爆発が収まり煙が晴れて来ると
所々龍麟が焼け焦げているが、
全くダメージを受けている様子が無かった。
むしろ目を血走らせ、
これでもかというくらいに狂乱していた。
「嘘でしょ?!あれでダメなの!?
…やっぱり怒り狂ってるうちに
逃げるしか無いね…。」
そしてまたレイルは逃走を開始する。
ドラゴン達は爆発で目の前が見えなくなり
見失っていたので、
これ幸いとばかりに気配を消し影縫を発動し、
一気に距離を空ける。
「今の内に階段を探さないと!」
爆発で巻き上がった煙が晴れ、
獲物を見失ったドラゴンは苛立ちを隠さず怒号をあげる。
あたりを見渡し、目視出来ない事を確認すると、
しきりに首を左右に振り匂いを嗅ぎ始める。
そして、ものの数分で獲物が逃げ出した方角を
割り出す。
獲物を見つけたドラゴン達は一目見ただけでも分かる程にニヤけていた。
みつけた…。と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます