第38話ー隠密


あまりの眩しさに目を閉じていると、

ようやく光が収まり、目を開けるとそこには

広大な草原が広がっていた。


「あれ?!ここどこ?!

ダンジョンの洞窟に居たよね?

ねえ?楓ー?

って楓がいない…。」


(目を開けたら知らない場所だし、今の感覚どっかで感じた事があるんだけど、何処でだっけ?

うーん、、、、、

あっ!そうだ!この世界に転移した時の感覚に似てるんだ!)


「って事は、僕1人だけ転移しちゃった?

……っ?!」


(これはまずいね、どうしようかな。

取り敢えず身を隠そう…)


レイルは突然感じた濃密な嫌な気配に汗を流した。

今の自分の力と同等もしくはそれ以上の気配が

一つではなく自身が察知できる範囲の至る所で感じる事が出来た。

そしてその気配を感じると素早く身を屈ませ、気配を極限まで消して草むらに隠れた。



(やばい!何ここ?!全力を出したら何とか

1匹、2匹は倒せるけどこれは無理だよっ!

絶対下層の何処かに飛ばされたんだ…)



そこには至る所に、上層階では居ないような

凶悪なモンスターが跳梁跋扈していた。

ライオンの頭に蛇の尻尾が生えてるキマイラや

マンティコア。

身長4メートルはあるオーガや竜種のワイバーン。

いずれも階層ボスクラスのモンスターがあちこちで

徘徊していた。


いや、それだけならまだ1対1に持ち込めば何とかなったかもしれない。しかし……


レイルが身を屈ませて息を潜めて居ると

上空に大きな影が通り過ぎた。

まさかと思い、空を恐る恐る見上げると、

そこには赤や青、緑と言った龍…ドラゴンが

飛び回っていた。


龍種…それは竜種の飛竜ワイバーンや

土竜クルルヤックなどの本能のみで

行動するモンスターと違い、高度な知能を持ち、

膨大な魔力を保有し、強力な龍種固有の魔法を使い

モンスターの中で最強の種族である。

その中でも古龍や覇龍などは言語を操り、

人化も出来ると言う噂もある。


レイルは現状を出来るだけ焦らず、冷静に努めて

これからどうするか考えていた。


(…最初は下層だと思ったけど、

これ絶対深層部だよね。

じゃないと龍種なんて出てこないよ…。

これからどうしよう…上に続く階段を探して脱出する?

仮にここが深層なら引き返えした所で死ぬ確率の方が高い気がする…

いっその事、近くで隠れて助けを待つ?

楓の事だから助けを呼んでくれてるだろうし、

けど、じっとしててもいずれは見つかるかもしれない…


………よしっ!あれこれ考えても仕方ない!

階段を探してそこで待とう!)



レイルは覚悟を決めて下へと続く階段を探す事に決めた。

しかし、モンスターから隠れながら探すのは

至難の業だった。そこでレイルは自分の持つ技術を

最大限に活かしながら移動する。



「ふぅ…。行くか。

…我が征く道は静寂なり。サイレント。

からのー、陰陽術…影縫!」


草原に生えてる草むらを進みながら

モンスターが近づけば影縫でモンスターの

影に潜み、順調に階段を探していた。


だが、それも束の間、

オーガやマンティコアなどは大丈夫だったが、

嗅覚の鋭いワイバーンは頻りに首を動かし、

周りを見渡していた。

どんなに気配や姿を消そうとも匂いは消せなかったのだ。

次第に姿が見えない敵にイラついたのか

処構わず攻撃をし始め、終いにはレイルの潜んでいる影にも攻撃してきた。


これには堪らすレイルも影から飛び出し臨戦態勢に入る。


(くそっ、ワイバーンが鼻が効くなんて知らなかった!ミスった!

でも今ならワイバーンが暴れて周りに、

モンスターが居なくなってるから一気に倒す!)


「刀符、解!

…魔闘気解放!

摩利支天流、抜刀術…鳴神!」


レイルから放たれた一閃は鳴き声に似た音を発しながらワイバーンの首に向かって飛んでいく。


「グァァァァァッ!」


負けじと迎え撃つため火の咆哮を放とうとするが

鳴神の方が圧倒的に速くワイバーンに届き、

次の瞬間、首が飛んだ。


「あ、危なかった。あんなブレス放たれてたら

死んでたかも…。

とにかく他のモンスターが来る前にここを離れないと……っ?!

っ、遅かったか!!」



レイルが上空を見上げるとそこには、

龍種のレッドドラゴン、ブルードラゴンの

2匹がこちらを睨み付けて滞空していた。

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