第40話ー世界蛇
レイルは全力で疾走していた。
だいぶ引き離したと思い、振り返ろうとするが本能がそれを止める。
今振り返り止まるとすぐに来ると
自身のカンが警鐘を鳴らしていた。
(早く出口を見つけないと!
このままじゃいずれは追い付かれる!)
そしてかなり離れたところまで来ると、
ドラゴンの咆哮が聞こえて来る。
「うわぁ…怒りまくってる…
にしても、最初から怒りすぎじゃない?
僕別に恨みを買った覚えはないんだけどなぁ…
…っと、こうしてる場合じゃなかった。
出口はどこかな?……ん?あれなんだろ?」
周りを見渡していると、遠くの方に米粒くらいに
しか見えない物体があった。
それを見たレイルは階段を見つけたと思い、早速
そこに向かって走り出す。
徐々に近づいて行くと米粒が段々と大きくなり、
明らかに階段ではないと目視出来るまでに迫った。
「階段じゃなくて扉だったけど、どうする?
このまま入る?……っ?!」
扉は先程のドラゴン達が
並んで入れるような大きさで龍のモチーフが
描かれた如何にもな扉だった。
そして入ろうか迷っていると、
扉から得も言えない嫌な気配を感じた。
しかし、後ろを向くとそこには2体のドラゴンがこちらに向かって飛んで来るのが見えた。
(どうする?!このまま戦うか、それともこの扉に入るか…
でも、戦って勝てないのは目に見えてるし……
仕方ないか。鬼が出るか蛇が出るか…
神のみぞってやつだね。)
レイルは出来るだけ生き残る確率が高いと思われる扉の向こうに逃げる選択をした。
そして脇目も振らず扉を開け入っていった。
扉の向こうは広々としたドーム状の空間があり壁には神々を連想させる壁画が所狭しと描かれていた。
その奥には玉座と思われる椅子に、
金の長髪で筋骨隆々の男が深々と腰掛けていた。
「…久々の客だな。それに何故か懐かしい匂いがする。」
その姿を見てレイルはゴクリ。と息を呑んだ。
背中には翼と尻尾が生えていたのだ。
そしてこの場から一歩でも動けば殺されると感じてしまった。
(…やばい、やばい、やばい!
この人弦爺並みに強い?!)
肌に突き刺さるような凄まじい圧力に耐えながら、
何とか時間を稼ぎ、この状況を打開できるようにと考える。
「…あ、貴方は誰ですか?
懐かしいとはどういう…っ!?」
レイルが質問しようとすると
一瞬殺気が飛んできた。
「誰が喋って良いと言った…?
…ふんっ、だが久々の客で気分が良いのでな。
答えてやろう。
忌々しいが、
今の我はこのダンジョンの守護者であり、
この世界に散らばる調停者が一体、
…古龍ヨルムンガルドなり。
懐かしいというのは我が知っている者の力の根源がお前から感じるからだ。」
(ち、ちょっと待って!?ヨルムンガルドって、
世界神話の世界蛇ヨルムンガルド?!
覇龍バハムートや八岐大蛇に並ぶ
最強の龍の一角じゃないかっ!)
「さて、お喋りはここまでにして、
我は守護者としてお前を殺さねばならん。
せめて一瞬で楽にしてやろう。
抵抗するも良し、自分の死を受け入れるも良しだ。
さぁ、選ぶがよい…。」
レイルは絶体絶命の崖っ淵に立たされていた。
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