第10話
「やぁ! アンリ!」
「...どうも...クリフ様...今日もとても良い笑顔ですね...」
「アンリ、なんか疲れてる? ダメだよ? ちゃんと休まないと?」
「ハハハ...それで今日は何をしに?」
アンタが毎日来るから疲れんだよ...
「そりゃあ決まってるっしょ♪ アンリと遊びに♪」
「...ハァッ...分かりました。お帰りはあちらです...」
「相変わらずツレないなぁ」
こう見えて私も暇じゃないんだよ...
「今日はこれから出掛ける予定なので...」
「そうなの? じゃあ行こうか?」
「...付いて来るんですね...」
「当然♪」
何を言っても無駄だと思った私は、本日何度目になるか分からないため息を吐きながら馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
「ところでどこ行くの?」
「今度、私が代理人を務めている作家の小説が舞台化されるんで、舞台稽古を見学しに行くんです」
「あぁ確か『ジョン・ドウ』だっけ?」
「えぇ、ご覧になったことは?」
「いやぁ、ああいう甘ったるい小説はちょっとねぇ。僕は冒険小説の方が好みかなぁ」
まぁ男はそういう人多いよね。
「ではきっと退屈でしょうから、今からでもお帰りになったら如何でしょう?」
「いやいや、何か面白いことが起きそうだから付いて行くよ?」
あぁもう! やり辛いな!
◇◇◇
「社長、これはどうも。ようこそお越し頂きました」
脚本家兼演出家のトーマスが出迎えてくれた。
「どうもトーマスさん、本日はよろしくお願いします。えぇとこちらは...」
困った...クリフトファー様をなんて紹介すればいいんだろう...
「どうも、アンリエットお嬢様の侍従を務めております、クリフと申します。どうぞお見知り置きを」
「は、はぁ...ど、どうも...」
ちょっとクリフトファー様! そんな貴族のオーラだだ漏れさせて侍従はないでしょうよ! トーマスさん、どうしていいか分かんなくなってんじゃん!
「で、ではごゆっくりご覧下さい...」
やがて舞台稽古が始まった。
舞台は小説の世界観を良く表現していて、小説ファンの私としても特に言うことはない良い出来だった。例のアランとかいう役者は、相変わらず私のことを熱い目で見て来る。
舞台稽古が終わって私とトーマスさんが話し込んでいる所に、アランが近寄って来た。そして、
「どうもどうも社長サン、観に来てくれてアリガトゴザイマ~ス!」
そう言って握手して来た。ホントにチャラいなコイツ...ん? なにか手の中に紙が? メモか?
アランはニヤッと笑いながら去って行った。
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