第9話

「そ、そうだったんですね...知りませんでした...」


 エリザベートからなにも聞いてないし...


「うん、駆け落ちなんてされた方もした方も外聞が悪いからね。相手方のご両親とも相談して死んだってことにしたんだよ。秘密裏にね」


「あ、あの...ちなみに事の真相を知ってるのは...」


「両家の主だった人間だけってことになるね」


「そ、そんな大事なことを私に話しちゃって良かったんですか!?」


 私は慌てた。


「あぁ、しまった。秘密だった」


「いやいやそんなテヘペロ♪ みたいな顔されても! クリフトファー様、絶対わざとですよね!?」


「あ、バレた?」


 バレいでか! 確信犯かよ!


「な、なんでこんな真似を!?」


「ん~...なんでだろう? アンリの秘密を聞いちゃったせいかな? 僕も言わないと不公平みたいな?」


 いきなりアンリ呼びですか...そしてなんだその顔は!? 悪戯が成功した時のようなとっても良い笑顔だな!?


「なんですかそれ...ハァッ...良く分からない理屈ですが、秘密だってことは理解しました。誰にも口外しませんからご安心を」


「うん、そうしてくれると助かるよ。それで?」


「それでとは?」


「アンリの次の作戦は?」


「...クリフトファー様、本気で協力して下さると?」


「そう言ったろ?」


「...絶対面白がってるだけですよね...」


「うん、だって面白いからね。それと僕のことはクリフって呼んで欲しいな」


 なんでちょっと可愛らしさアピールしてんの!?


「いえいえそんな恐れ多い」


「言ってくれないとポロッと喋っちゃうかも~♪」


 今度は小悪魔アピールかよ!? あぁもう! 厄介なのに捕まっちゃったよ~!


「クリフ...様...」


「よろしい。これからよろしくね、アンリ♪」


 あぁ、なんかドッと疲れたよ...



◇◇◇



 翌日、執事のセバスチャンが連絡して来た。


「ギルバートが休み?」


「えぇ、なんでも体調を崩したとかで」


 さすがに厚顔無恥なギルバートでも先日の一件は堪えたってことか。まぁ、あんなことがあった後じゃ家督教育どころじゃないわな。


「そう、分かったわ。講師の先生にお詫びしといて」


「分かりました」


「それとお見舞いの花を贈っておいて。セキチクの花をね」


「ブフッ! わ、分かりました」


 セキチクの花言葉『あなたが嫌いです』


「あ、それとクリフトファー様がおいでになっております」


「ハァッ...分かったわ...すぐ行くと伝えて頂戴...」


「畏まりました」


 ここのところ、毎日のようにクリフトファー改めクリフ様がやって来る。


 私はため息を一つ吐いてから客間に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る