Dream peeping:06 掃き溜めの世界
マンション前の公園にたどり着いた。
昼間はひなたぼっこをしているノラ猫とノバトは、夜になるとどこへ行くのだろう。
街灯に照らされて、茂みの中に空き缶やプラスチックの容器が捨てられているのが目につく。公園周囲の道路には、大型ごみの収集でもないのに、古びたテレビや冷蔵庫などの家電製品が無造作に捨てられていた。公衆トイレの壁には、絵心のない落書きで溢れている。
避けるように、思わず見上げた空に満月があった。
まわりに星は見えず、ただそこに輝いている。
まるで、とてつもない大きな入れ物に閉じ込められた中から出口の穴を見上げているような感覚に囚われていく。
そうだ……、空に浮かぶ満月こそ、掃き溜め世界の出口なんだ。
こんな汚い世界から、天井にあいた穴をくぐって逃げださないと――心まで荒みきってしまい――わたしまでゴミになってしまう。
世界は残酷だ。
けして美しくない。
不法投棄された壊れた家電や海洋プラスチックごみのように、この世界はかつて誰かが夢みた、かなえる途中のやりかけで捨てられている。
こんな世界に、わたしはいるのだ。
胸が痛かった。心が押しつぶされるような苦しみが、込み上がってくる。
悲しければ涙が流れる。泣いているとき、いつもきまって一人だ。涙で汚れた顔を見られなくてすむけれど、ぬぐってくれる人がそばにほしかった。
涙がこぼれないように、また顔をあげた。
いきなり吹き荒れる突風とともに、悲鳴のようなものすごい鳴き声が響きわたった。墜落寸前の飛行機が頭上の空をかすめたのかと思うくらい、すごい音だった。
でもちがった。
たとえるなら……そう、猫の声。
確信がもてたわけではないけれど、きっとそうだと思うのに少し時間がかかった。
なぜなら、目の前で大きな影が月に向かって伸びていくのが見えたから。まるで、月をボールに見立ててじゃれつく猫の動きのようだった。
次の瞬間、あたりが真っ暗になった。
建ち並ぶ住宅やマンション、通りを照らす外灯から光が消えてしまったのだ。
おまけに満月までない。
巨大な猫が、どこかへと持っていってしまったのだろうか。
漠然とした疑問と不安に包まれていく中、なにかが落ちてくる。
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