Episode:01 夢狩り

Dream peeping:01 ぽっかりあいた心の穴を埋めるため

 月がまるいと誰が決めたのだろう。


 誰もみない、街に浮かぶ赤い月をみて、わたしは考える。

 今日も仕事を終えて、家路につこうとしている。いまの仕事に就いて二年半がすぎた。半年ぐらいでやめようかとぼやいていたのに。

 大学卒業後、不動産会社の事務をして、三年で退社。足がむくみ、過度のストレスで体を壊したからだ。そのとき受けたマッサージがきっかけで癒し系の仕事、つまりいまの仕事に入る。


 わたしたち女はキャリアデザイン、仕事の設計図を求めている。自分で会社を起こし、切りもみするのは誰でもできることではない。いまは自分の技術と知識、経験を増やすために動いている。組織のなかで、どれだけ女を活用しているかを見極めるのは、働く上では大事だ。


 だが、誰かを癒す仕事というのは、自分が疲れていく現実がある。それに接客より技術、なにより利益を会社が求めている。そのために人として、大事な自分らしさと自由が磨耗していく感じに囚われて、わたしは日々に溺れていた。


 月がまるいと誰が決めたのだろう。


 小さいころの小さな記憶。わたしは思い出してみる。夜空に浮かぶ月は、いつも欠けていた。決してまるくならない月。それをみて、つぶやいた。誰が食べたの? 


 それをいったのは誰だっただろう。わたしは思い出そうとして、やめた。少なくともわたしではない。満月は欠けていない。食べられた分、誰がなにで埋めたのだろうか。そっちのほうが、気になり顔をあげる。


 膨らみすぎた月を支えるように、都市のビルはそりたっている。


 星が見えない夜空の下にいると、自分がどうしてここにいるのかわからなくなる。誰もが不安、心に欠けた部分をもっている。その穴埋めに、人は月を食べるのだろうか。

 わたしにはわからない。


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