第2話 転生

ここはどこだ?

 確か俺は...


 そこで俺の意識は覚醒した。

 俺の名前は森川 結城。彼女いない歴年齢の25才絶賛引きニート満喫中だった。

 コンビニに向かう途中トラックに引かれたんだよな。

 記憶はしっかりしていた。

 生きているのか?たしかにトラックで引かれて俺の人生は終わりを迎えたはずだ。なにが起こったんだ。

 辺りを見渡したところ薄暗い場所にいるようだった。

 発光している石がまばらにあり、それのお陰でなんとか見えるぐらいの明るさ。微かに香る埃っぽい臭い。

 石がむき出しの壁で覆われており、どうやら地上ではなさそうだ。

 人が住んでいるような場所ではないことは見てすぐに把握できた。

 天国ではないよな。かといって地獄でもなさそうだな。

 死後の世界というよりは洞窟のような場所と思う方がしっくりくる。


 しばらく考え込んでいた。

 とりあえずここでじっとしているわけにもいかないな。

 気長に誰か来るのを待とうかとも考えたがおそらく来ないだろう。人がいたような痕跡は残ってないし、こんな暗い場所に来るとも思えない。

 安全なのかも分からないし、むしろ危険な場所かもしれない。

 ここにいても何の情報も得られないし考えるだけ無駄だ。

 とにかく辺りを探索してみるか。ここがどこなのか分かるかもしれないしな。

 今一番重要なのは情報だ。


 探索することを決意した俺は違和感に気づいた。

 体が軽い。軽すぎるのだ。

 ずっとひきこもってゲームばっかりしていた俺がだぞ?なのになんでこんな体が軽いんだ?

 まるで浮いているような...

 と考えながら何気なく視線を下に向けると、違和感の正体に気づいた。


『うわああああああ!!な、なんだこれ!!足が...足がない...』


 あるはずの足がなく、代わりに黒いモヤのようなものがユラユラと揺れていた。

 まるで煙突から吹き出た煙のようだ。

 慌てて体の確認をした。

 手も同じく黒いモヤのようなもので出来ている。足とは違い人間と同じようなシルエットをしており、手と認識できる。

 そのまま胴体にも視線を向ける。

 腹や胸などを区別するものはなく、ただ黒いモヤが密集してできた胴体らしき物ものがあった。


『身体なのか?』


 落ち着け落ちつくんだ俺。慌てずにゆっくり状況を整理しよう。

 俺が慌てたのは就活のときにうんこを漏らしてノーパンで面接にいった時ぐらいだ。

 地面から浮いているおそらく足の部分になるモヤ。

 アイスクリームのコーンのような形をしていて、足先のモヤは今にも消えそうなぐらいぼんやりしている。

 その上には胴体らしきモヤの集まり。

 そこから繋がるように伸びている手のようなモヤ。指らしきモヤもあるが関節や爪などはない。


『そ、そうだ顔は...』


 恐る恐る顔があるであろう部分に手をやった。


『スウゥ...あれ?』


 触れない。何度触ろうとしても触れないのだ。

 空を切っているような感覚。

 端から見れば奇怪な動きをしてる変な人に見えるだろう。

 いや、人なのか?

 何度試しても体に触れることはできなかった。


『嘘だろ...』


 お、おおおお落ち着け落ちつけ!

 こ、これはあれか?

 最近流行りのあれなのか?

 よく小説とかであるあれなのか?

 イヤイヤ!でもあれって転生するまえに女神様に会ったり、チートな能力をもらって俺TUEEEE!できたり、かわいい女の子達とイチャイチャウフフな展開があったりするんじゃないの?


『フゥ...』


 もう一度体に視線をやる。

 この姿の正体を知っている気がする。

 これは認めるしかないようだ。


『ゆ、幽霊になってるうううううう!!!』

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