アバター マヤ

「昔はこうやってアバターを通じて会話しながらアーティファクトを操っていたんだ。今はアバターなんてクセが強くて採用されないけどねこの子は短剣の化身だよ」


「は、初めて見た」ユイか驚く。


「あーーもう久しぶりのシャバだねぇー」と言ってマヤは片手を上げて伸びをする。


「こ、これ本物の人間?」ユイはそう言いながら右の手のひらでマヤの乳をゆっくりと揉んだ。


「あん」マヤがあえぐ。


「や、柔らかい……」ユイが驚いた。


「ユイなにやってんだ。なんでいきなり乳を揉んだ……スケベだなお前」俺が引き気味でそう言った。


「あーー! 違う! 確かめたかっただけで!」ユイが慌てふためく。


「で、クロード。この子をゾンビにするの?」マヤは俺に聞いてきた。


「えっ?」ユイが青ざめる。


「あーマヤ。誰もゾンビにしないよ。試しに起動しただね」俺は言った。


するとマヤが俺の方に近づいてきて言った。


「えーー! つまんない! つまんない! ちゃんとこの女の子ゾンビにしようよぉ!」ダダをこねるようにマヤは言う。ユイが更に青ざめる。


「だから駄目だって。じゃあマヤお疲れ。シャットダウン。マヤ」俺はそう言うとマヤに別れを告げた。マヤはじっと俺を見ている。


「ヤダ」マヤは真顔で俺に答えた。


「えっ?」


「えーー! ヤダヤダヤダ! せっかく出てこれたのにいきなり消すなんて! クロード最低!」マヤがそう言いながら俺をポカポカ殴ってくる。


ユイがそれを見てあ然としている。


「いやでも、今はマヤの出番じゃないし」俺はそう言うとマヤは涙目になった。骸骨の方からは炎の涙がこぼれ落ちた。


「お願い。クロード。駄目?」マヤが上目遣いで俺を見る。


「駄目だよ」俺はキッパリと答えた。


「ねぇ。ホントに駄目?」マヤの目が潤んでいる。


「うん。駄目じゃないよ。ずっと居ていいよ」


「ありがと! クロード大好き!」マヤは俺を抱きしめた。俺は照れて笑う。ユイがその様子をみて引いたようになってる。


俺はユイを見つめていった。

「これが俺の力な。古い武器と喋って言いなりにするスキルだよ」


「いや、どう見ても言いなりになってるのはクロードの方だと思うけど」ユイは冷静に突っ込みを入れる。


「そっ……そっかちょっとビックリしたけどそれがクロードの力なんだね」ユイが言う。


「うん。アバターを起動できるほど保存状態が良いのは珍しいんだ。ありがとうユイ。一生の宝物にするよ」俺はユイに微笑む。ユイも照れくさそうに言う。


「私クロードのことが凄く心配で……クロード口が悪いから他のクランの人と仲良く出来るか不安で」ユイは切り出した。いや、ユイお前は俺のお母さんかよ。


「大丈夫だって。気にすんなよ」俺は言う。


「クロードごめんね。こんなことになっちゃって……私シドを止めたんだけど……怒ってる?」ユイは上目遣いで俺を見た。


「まさか! 怒るわけないよ。プレゼントも貰ったからね」そう言って俺はもらって短剣を手に取って見せた。


「ありがとう。ユイがメンバーに居て良かったよ。なんどもユイに助けられた」俺は笑顔で言った。ユイも照れくさそうだ。


「ユイと出会えたことがクランに居て唯一良かったことかな。ユイも頑張って。まぁ最後俺が無茶苦茶にしちゃったけど」俺は笑った。ユイも照れくさそうに笑う。


「クロード……」ユイの瞳が潤んでいる。ユイは手を広げた。そして俺を抱きしめる。


「あっ……」思わず声がでる俺。


「クロード新しいクランに入ってもちゃんと上手くやるんだよ」囁くようにユイは俺を抱きしめながら言う。


「うん……」


「ちゃんと友達作らなきゃ駄目だよ」ユイは言う。まるで俺の母親のようだった。


「あーずるい。私も抱っこする!」マヤがそう言うとマヤも俺を背中から抱きしめる。ちょうどマヤとユイにサンドウィッチされてる格好になっている。ちょっとこれは恥ずかしい……


「ありがとうユイ」俺がそう言ってユイの背中をポンポンと叩くとユイは体から離れた。ユイは涙を手で拭っている。


「じゃあそろそろ行くね」俺はそう言ってユイ

そしてユイから離れる。

「うん。じゃあ」ユイが答える。

俺はしばらく歩いた。ふと振り返るとまだユイが俺を見て立っているのが見えた。まだ居たのか。俺は驚いた。ユイと目が合うとユイは手を振ってきた。


「キリがないから。ユイ。これでお別れ!」俺はそう大声で言ってブンブンと手を振り回した。ユイもそれに合わせて手を振る。俺はまた前に向かって歩きだした。


なんだか爽やかな気分だ。俺の心の陰鬱な空は澄み切っていた。これから俺の新しい人生が始まる。青空の中、俺はそんな淡い期待を胸に抱いていた。


「ねぇ。クロードここからどこにいくの?」マヤがふわふわ浮きながら俺についてくる。

「ん? なんにも考えてない」俺は答える。

俺は三叉路に出た。どちらの方に行こうか……一方はダンケルクの街だった。もう一方はノースポールの街……俺は懐からユイが俺に渡したコインを取り出した。


「少しでも安全な道へ」そう言って俺はコインを指で弾いた。クルクルと回ってコインが転がる。表……ダンケルクの方か。


さてとこれからどうするか……新しくクランに入るのも良いが、ユイの言った通り俺は口が悪いのかな? 自分でクランを立ち上げても良いのかも知れない。俺はそんなことを思いながらダンケルクの街に進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る