追放

「やっぱあたしがいないとこのチーム駄目だね」


「あぁそうだな。それとシドが的確に指示してくれたからってのもあるな」


「カシムもあんな位置からよく外さずに撃てるな」


「やっぱ盾役のサムソンがいると後衛が安心だわ」


メンバー達は談笑しながら互いに健闘を讃えあっている。俺はそれを白々しい目で遠巻きに見ていた。


「おい皆集まれ」


シドがそう声をかけた。俺たちはシドを中心にして集まる。そしてシドはチラッと俺の方を見た。


「お前クロードこの戦いでどんな活躍をした?」シドは威圧的に聞いてきた。


は? 何いってんだこいつ……

「何いってんだよ。トロールを殺したのは俺だろ?」


「は? お前何いってんの?」シドが言う。


「だからトロールは脂肪に覆われていて外からの攻撃はほとんど通らないんだって。だから俺が石を投げて内側で爆発させたんだろ?」



「はぁ? 石を投げた? そんなもんそこらへんのガキにだって出来るんだよ! お前舐めてんのか!? ふざけんな?」とシドが激怒した。他のメンバーがニヤニヤ笑っている。


「シドお前何言ってんだよ……」俺はシドのあまりの剣幕に引く。


「あぁ?」とシドが怒鳴り声を返してくる。


ふざけんな。もううんざりだ。俺は思う。


「だからお前らの攻撃はほとんど通用してなかったんだって! 俺が一番この戦いで活躍したんだよ!」俺はシドに言う。

「は? お前協調性ないだろ。 なんでもかんでも自分の手柄かよ! みんなに失礼だろ!」とシドがキレてきた。


「いや、なんの話だよ。なんでそんな話になるんだよ」俺は言う。


「クロード。シドが怒ってるだろ。謝った方がいいぞ」カシムがニヤニヤしながら言う。


「は? なんで俺が」俺は答える。


「だからクエストを達成出来たのは全員が頑張ったからだろうが。それをお前、全部自分の手柄みたいに言って。よくそんなこと出来るな」シドはそう言った。俺は思わずシドのあまりの言葉に無言になる。


するとシドは冷たい目で俺を見つめて、そして言った。


「クロード。もういいお前いらねーわ。クビだ。お疲れ。もう明日から来なくていいぞ」


「は?」俺は思わずつぶやく。



俺はこのクランに十二分に貢献してきた……はずだった。だが、その頑張りはまるでシドたちには伝わっていなかったようだ。


カシムが俺の様子を見てニヤニヤ笑っている。


だから言っただろ? こうなるって。とでも言いたげだ。俺はシドを睨んだ。正直体が震えている。このシドの理不尽な態度に。そして俺は言う。


「クビってどういうことだよ。シド」俺は聞いた。「はぁ? そんなことも分かんねぇのか」シドが言う。


「クビって言ったらクビだよ。もう姿も見たくねぇんだよ!」シドは激怒する。そんな勝手な。


「もうコイツに何言っても無駄だよ。シド」魔法使いのエリザベスがシドにそう言う。


「自分は悪くないーー! って思い込んじゃってるんだから。頭悪いんだからこいつ。もう顔も見たくない」エリザベスは俺の方をチラチラ見ながら言う。


「ま、お前も色々思うことがあると思うけど、勘弁しろよな」シドの子分であるサムソンが俺の肩を軽く叩いた。


ユイは心底辛そうな表情でうつむいている。



「ま、とにかく」シドは続けた。


「これ以上お前と旅は続けられない」


「じゃあシド。今月分の給与はちゃんと出るんだよな。あとさっきのクエストの報酬もまだだが」俺は聞いた。シドは顎に手を当てて考えている。


「あぁ冒険者ギルドに行けばもらえるハズだ。俺が受付に言っといてやるよ」


「そうか分かった……」俺はシドから目をそらした。


「逆恨みするなよ? お前が悪いんだぞ。クロード」そう言ってシドは俺の肩をポンとた叩いた。


「みんなに最後の挨拶はあるか?」シドは言った。俺はみんなを見回す。



正直に言う。俺はこのメンバーが大嫌いだった。嫌がらせしないと人を従わせることが出来ないシド。シドはどうしょうもないクズだった。シドの文句を語りだすと俺の人生が何回あっても足りない。それくらい俺はシドにムカついていた。


ユイ以外。ユイだけが俺に優しくしてくれた。だから俺は。こいつらになんて挨拶をすればいい?……俺は少し思い悩んだ。


立つ鳥跡を濁さず。それとも、後は野となれ山となれ。普通にお世話になりました、と言うべきか、最後に嫌味をぶちまけて去るべきか……


俺は……


「みなさん本当にありがとうございました。忘れられない思い出をありがとうございます。特にみなさんが僕にしてくれた酷いイジメの数々は絶対に忘れません。みなさんは末永く不幸せになってください」


俺は両方言うことにした。俺はお辞儀をしながらシドを見上げる。シドはワナワナと震えていた。みんな凍りついたような表情をしている。


「あ、ユイは別だよ。ユイは頑張ってね」俺はユイに言うとユイは硬い表情でコクコクとうなずく。


「俺が居なくなったら誰がイジメのターゲットになるんだろうな。サムソン、エリザベスがお前の悪口言ってたから気をつけろよ。脇が臭いってな」俺はサムソンに向かって言った。


「えっ? 臭い? エリザベスが?」サムソンは青ざめた顔でエリザベスを見た。



「あとシドお前浮気も大概にしろよ。エリザベスに飽きたからって、酒場の女の子と隠れてデートするって、それエリザベスが一番悲しむやつだろ! ちゃんとしろよシド」


シドがえっ? っといった表情をする。その表情を見てエリザベスがシドを睨んだ。


「カシムもクランの金をちょろまかすのやめた方がいいぞ。バレたら大変だからな」カシムがコクコクとうなずく。シドがカシムを睨んだ。


「エリザベスお前。俺をなんども誘惑してきたよな。ハッキリ言って気持ち悪かったぞ。いい加減お前の魅力はモテない奴限定だって気づけ」


「はぁ?! 嘘つくな!」エリザベスが叫んだ。「シド。嘘だからね。こいつの言ってること。全部嘘!」エリザベスはシドに媚びるように言う。シドは白けた目でエリザベスを見ている。

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