1撃 大会に出る!-3

「負けなしで優勝とかすっげー熱かった!おまえ本当につえーんだな!」

 大会が終わり、片付けの始まった会場で、帰り支度をしているアツヤに声をかけた。

「おっ、一回戦で当たったクソガキじゃん」

「クソガキじゃねえよ。おれの名前はネツヤ。いつかおまえを倒して、最初にプロゲーマーになる男だ。覚えとけ!」

「おや、ネツヤもプロゲーマー目指してたのか?」

「おまえの決勝の試合見て決めた!おれもあんな熱い試合したいって思ったから。そんで、おれもなるって決めた!」

 目を輝かせながらネツヤが答えた。

「そうか。だったら、もっと強くならないとな」

 アツヤはしみじみと振り返るように言った。

「そうだよ!おれは今より強くならなきゃだめだ!だから、アツヤ、おれを特訓しろ!」

「お前を特訓?」

「あの、お話盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、そろそろ会場閉めないといけないので……」

 受付をしていた女の人が声をかけてきた。

「あっ、すみません。すぐ出ます。ネツヤも行くぞ!」

 二人は会場を急いで出て、帰り道を歩き出した。

「よしっ、特訓すんぞ!」

「本気なんだな。もう晩飯時だけど、お前時間大丈夫なのか?親御さんとか心配するんじゃないの?」

「うっ、たしかに母ちゃんとかうるさいな。今日もバサバスの大会行くって言ったら、なんかぶつくさ言ってきたし……」

 ばつの悪そうな表情を浮かべて言った。

「だろ?あっ、うちこのマンションだわ」

「ちかっ、会場からもおれの家からもすげーちけーじゃん」

「ご近所さんだったんだな。だったら、休みの日とか時間がある時にでも来たら……」

「明日行く!」

 言い終わるのも待ちきれずに答えた。

「即答じゃん。いいけど、学校があるからそれ終わりにな」

「なっ!アツヤ学校行ってたんか?」

「いや、どういう反応だよ。ピカピカの高校一年生だって」

「やー、あんなにつえーから、家にこもってずっとゲームやってんのかと思ってた」

「その認識改めてもろて。まあ、学校終わったらずっとやってるっていうのは合ってるから、あながち間違いじゃないけど……。そんなことはいいんだよ!とりあえず、学校終わったら連絡くれたらいいや」

 アツヤはポケットから携帯電話を取り出した。

「携帯持ってねえや」

「そうなんだ。じゃあ、直接来な。うちは三階の角部屋だから」

「わかった!明日はぜってー負けねえかんな!」

 アツヤは「特訓で勝ち負けあるのか」と苦笑いを浮かべ、手を振りマンションに入っていった。ネツヤは明日の放課後が楽しみでわくわくしてきた。

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