第18話 イルミナの日常
◇
「ほう……今月の上納金は払わねえと、テメエはそういうのか?」
つるりと剃り上げられた頭には、炎を象ったタトゥー。鋭い三白眼の眼は、ジロリと足下に這いつくばる子供を睨み付けていた。
彼の名はコバルト。最近力をつけてきた武装勢力のリーダーをしている男だ。
彼の周囲には、取りまきの男達が馬鹿にしたような表情をして子供を見ている。子供は震えながら、リーダーであるコバルトに懇願した。
「すいませんコバルト様……チームのメンバーが何人か闇市で攫われて……スリで失敗して殺されたメンバーもいて……人数が足りないんです」
コバルトは、親の無い孤児達を集め、技術を仕込んでスリのチームを結成していた。チームがコバルトに納めなくてはならない金は莫大で、普通に活動していてはとても払えないような金額である。
ブルブルと震える子供に、コバルトは大きなため息をつくと一歩前に出てしゃがみ込んだ。目線を子供に合わせ、コバルトは低く腹に響くような声で話し始める。
「舐めてんじゃねえぞ小僧? こんな時代だ、親のいない子供なんていくらでもいるだろう? 人数が足りなけりゃ自分で補充しな」
「……そんな」
「期日は来週、金額もいつもと同じだ。払えなけりゃ……その時は覚悟しておけよ?」
コバルトの言葉に、ゲラゲラと意地悪く笑う取りまきの男達。
まるで地獄……。
否。
これは現実。これこそが、現実だった。
力の無い人間は奪われるしか無く、力のある人間だけが搾取していく現実……。
絶望にうちひしがれた子供が涙を流す中、見張りをしていたメンバーがボロボロになって転がり込んできた。
「ボス!! 侵入者……ぐはぁっ!?」
見張り番が喋っている途中で、背後から近寄ってきた人物が彼の頭を蹴り飛ばして気絶させる。
その人物はゆっくりとタバコをふかしながら歩いてきた。
「やぁ、アンタがコバルト?」
「……何のつもりだテメェ? 俺をコバルトと知って殴り込みに来やがったのか?」
「まぁ、そういう事だね。自己紹介が遅れたが、私はイルミナ、しがない仲介屋だ」
「……そうか。で、仲介屋がこの俺に何のようだ?」
ギロリとにらみをきかせるコバルト。周囲の取り巻き達も、拳銃をイルミナに向けて威嚇をした。
しかし、当のイルミナは涼しい顔をしてタバコを深く吸い込み、煙を吐き出した。
「なに、ただの気まぐれさ。ちょっとアンタのやり方が気にくわないから……悪いけど、チームを潰させて貰うよ?」
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