憧れ
「仲間」とか「青春」という言葉に憧れがある。
何かを突き詰めて一人で達成感を味わったあの夏もきっと「青春」だったのだろうけれど、やっぱり、どうしても、「仲間」がいることで「青春」は成り立つのではないかと思う。
その「青春」さえも、フィクションやメディアが勝手に作り上げた偶像で、実際には存在しないのかもしれない。
「青春」という言葉の裏には、泥臭い努力や、思い出したくもない他人とのいがみ合いが隠されているのかもしれない。
それでもやっぱり、憧れてしまう。
他人と他人が目を合わせている瞬間に、もしかしたら彼らは心さえも合わさっているのかもしれないと感じてならない。
彼らが笑い合っている瞬間を目にすることで、自分の心が震えてしまってならない。
頭蓋骨がしびれて、目の奥から何かがあふれ出そうになってしまう。私には手の届かないもの。
私にはきっと、仲間と過ごして一緒に青春を味わうことは無理なのだと思う。実際に無理だったのだ。
自分の時間が一番大切だし、ズルをする人間は嫌いだし、でも自分がまっさらな綺麗な人間だとも思えない。人に優しく生きていきたいけれど、その人が優しい人だとは限らない。人の悪意に触れなければいけないかもしれない。自分の思いとは裏腹に行動しなければいけないかもしれない。
それでも、「仲間」という存在に憧れてしまうのはどうしてなのだろう。自分が実際に経験していないからなのかな。
ひとりでいるのがだいすきだけれど、心のどこかで人とつながっていたいなとも思う。誰かにわかってもらいたくて、認めてもらいたくて、誰かと同じものを分かち合いたくて。
でも、きっと、他人と感情を共有したいという気持ちから間違っているのだと思う。私の感情は私のもので、あなたの感情はあなたのもの。
そもそも、私の「嬉しい」があなたの「嬉しい」と同じだという保証はどこにあるのだろうか。
例えば、道に生えている黄色い花をたんぽぽだよと教えてもらったように、この感情が「嬉しい」だよ、とは教わってこなかった。それなのに、私の感情を表す言葉とあなたの感情を表す言葉が同じだという確証はどこにあるのだろう。
憧れは、手に入れられないから憧れなのかもしれない。
遠くに見えるからきれいに映るのかもしれない。
生きている 月野 @tsukinohi_
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