第42話 リッキーリードの休日1
俺は今、200年間慣れ親しんだリッキー島の南端の崖に作った釣り場でのんびり釣りを楽しんでいる。
思えばこの3ヶ月間、色々な事がありすぎた。
200年も、ほぼ何の変化もない生活をしていて、いきなりあの激動の3ヶ月だ。
あの短期間で何度も死にかけたんだ…。
今はただゆっくり休みたいところだ。
この場所は、この島の中で引きこもっていいた200年間、最もお気に入りの場所だった。
ああ……。
何て落ち着くんだろう…。
魔力こそ全てだった俺は200年前に、その力を失って、いわゆる自分の誇れるモノを全て失ったのだ。
それで俺は、この世界においての、俺の価値そのものを失ってしまったものだと思い込み、200年もの間、この島に引きこもったのだった。
昔の俺は世の中は弱肉強食。
強い者が弱い者から全てを奪う…。
強い者同士は互いに権力を奪い合い争う。
弱い者同士はその中でも蹴落とし合い生き残ろうとする。
世界はそんな救いようのない単純な構図だと俺は思っていたのだ。
しかし、200年の暇を持て余し、怯えながらも弱者として初めて世界に戻った時、それだけではないのだと気づいた。
俺の知らない複雑な人間関係、人々は俺が知らない所で助け会って生きていた。
あのまま世界を無双してたら一生分からなかった事かも知れないな。
そんなノスタルジックな思い出に浸っていると。
クリスさんが飛びついてきた。
「師匠!
またここに居たんですか?
いつも言ってるじゃないですか
出かける時は教えてって!」
「仕方ないだろ。
俺は元々ひとりでいるのが好きなんだよ」
「この島は無人島なんですよ。
それに家の周りには何もないし
師匠がふらっと出かける時は
いつもメイさんと二人きりで
暇して待ってるんですから」
「分かったよ…。
明日は北の森に三人で散歩に行こう」
「本当!?
約束ですよ」
その時、島全体に響き渡る大声が聞こえた。
「リッキーちゃーーん!
クリスちゃーーん!
ご飯できたわよー!」
それは身の丈2メートルを超える巨漢の愛の戦士マザーメイだ。
メイはリッキー島に戻って来てから、この島にある食材で毎回びっくりするぐらいのクオリティの料理を作ってくれる。
200年間、大体5種類くらいでローテーションでワンパターン化していた料理だけだった俺からすると、こんなに色々作れるモンなんだなと、まさに目から鱗である。
家に戻るまでの道でクリスはやたらとベタベタ腕をつかんでくる。
思えばドロナック王国の戦いから帰ってきてからクリスのスキンシップはかなり多くなったような気がする。
まあドロナックでは俺の個人行動が多かったから、寂しい思いをさせてしまったからね。
意外とさみしがり屋なんだな。
俺はこういうのが余り慣れていないんだがな…。
しかし、師匠たるもの堂々としていなくてはいけない。
ここであたふたしては、童貞である事がバレて師匠としての威厳が保てなくなる。
家に着くとメイがいつも通り豪華な朝食を作ってくれていた。
「さあ!いっぱい食なさいね!」
「凄い量ですねメイさん…。
俺、今朝はあんまり食欲がないんですよ」
「このお馬鹿さん!
リッキーちゃんは特によ!
いっぱい食べて少しは大きくなりなさい!」
その時、リビングルームに置いてあったリッキー島緊急信号が鳴った。
「何!?
いったいどうしたんですか?」
「どうやら何かが、この島の結界に接触した様だ」
「え?
この島の結界って普通は触れる事もなく
すり抜けるんじゃなかったの?」
「ああ。
しかし数十年に一度くらい、
結界と偶然波長があった生物が引っかかるんだよ。
ただ中には入れないのでぶつかって動けなくなるだけだが。
大体、何千年も生きた大型海洋生物とかだよ。
ちょっと見てみるよ」
俺は結界監視用の水晶を起動させ何が引っかかったのか確認した。
「ん?あれは…」
「師匠、どうやら人間みたいですね……」
「あの女には見覚えがあるな…」
「リッキーちゃんの知り合いなの?」
結界にはリリアンが引っかかっていた……。
To Be Continued…
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