第33話 怪力の二人



◇◇◇


城塞都市ドロナック

シェリー宮殿1階



 メイはロバート第三王子と激しい戦闘を繰り広げていた。


 ロバートのパワーはメイを凌駕していた。

 彼が攻撃を繰り出すたびにメイの巨体は後方に弾き飛ばされた。


「何てパワーなの…。

 これは完全に人間の域を超えてるわ!」


 メイは硬質化と身体強化スキルを限界まで使いロバートに応戦した。

 メイの強烈なパンチがロバートの顔面にヒットしたが、ロバートはそのまま殴られながらカウンターでメイを殴り返した。

 

 メイは再び壁に叩き付けられ、そのまま壁を突き抜けて隣の部屋迄飛ばされた。

 

 その部屋は牢屋の様だった。


 そこにはメイの見覚えのある人物が捕らえられていた。


 元ドロナック王国国家騎士団長の怪力のジェシカだった。

 彼女は二度に渡る任務の失敗と精鋭部隊を死なせた為に、その身分を剝奪され投獄されていた。


「貴殿は…。

 あの時のマザーメイ殿か…?」


「あら…アナタ。

 また会ったわね。

 それにしてもアナタ

 随分な格好だわね…」


 ジェシカは魔力封じ用の鎖で四股を繫がれており、全身に拷問を受けた痣や傷があった。


「笑って下さい…。

 私は自分の力に絶対の自信があった…。

 傲りがあったのだろう…。

 そして貴殿に敗れ部下を失いこの様だ」

 

「ここの王室は悪人だらけだけど

 アナタはそうでは無い様ね」


「私は私なりの騎士道を…。

 私なりの正義を追い求めていただけだ。

 君主に尽くす事が

 私にとって騎士道であるとな…」



 そこに隣の部屋からロバートが飛び込んできた。


「ジェシカ!

 アナタ私と一緒に戦いなさい。

 こんな牢獄で死んだら分からないわよ。

 本当に信じるべき事は何なのかをね」

 

「本当に信じるべき事か…。

 そこには私が信じる騎士道が

 あるのだろうか…。

 …。

 分かった…。

 貴殿を信じる!」


 メイはジェシカの鎖を引きちぎって簡易回復薬を手渡した。


「傷の痛み止め程度にしかならないけど

 無いよりマシのはずよ」


「ありがとう。

 恩に着るアマンダの戦士マザーメイ殿!」


「さあ!行くわよ!」


「死にぞこないの

 怪力のジェシカだな…。

 貴様は馬鹿力ばかりで

 兄様も手を焼いていらした。

 丁度良い。

 ここでまとめて始末してやる!」


 メイとジェシカの連係により、片方がロバートの死角を作り、その間にもう一人が攻撃する作戦に出た。


「くぅ!!

 貴様らめ!

 小癪な真似を!!」


 そしてジェシカの後ろからのハイキックによりロバート王子はメイの方に蹴り飛ばされたそこにメイの渾身の魔力を込めた拳がロバートの顔面にクリーンヒットした。


 ロバートの身体は反対側にL字に折れ曲がり倒れた。


「やったわね…」


「メイ殿見事です…」


 二人の息は上がっていた。


 しかし、やはり終わりではなかった。

 ロバートの額には角が生え始め、目が真っ赤に変色し魔力が増大した。


「がぁぁぁ!!」


 ロバートは自我を失い二人に襲い掛かった。

 変身前とは桁違いのパワーに二人は圧倒され完膚なきまでに叩きのめされた。

 ジェシカは応急処置した傷口が開き、魔力もそこをつき倒れ込んだ。


 しかし、メイは全身から流血しながらも立ち上がった。


「メイ殿…。

 そんな状態になりながらも

 何故立ち上がれるのだ…」


「私は…。

 今、信じている男がいるわ。

 そうリッキーちゃんを!

 それは愛する男と、親友との約束を

 放棄してでも彼を信じてついてきたわ!!

 一度守ると決めた

 大魔道士リッキーリードを

 世界の頂点に押し上げるために

 私は、死んでも立ち上がるわ!

 そこに愛する人達の未来が

 あると信じているから!

 このマザーメイの鋼鉄の意思は

 いかなる苦難にも曲げられないわ!」



「な…なんと!

 これぞ騎士の魂!

 何と気高い御仁だ!」


 すると、メイの硬質化していた身体が金色に輝き始めた。

 メイの魔力が急激に上昇した。


「これはいつもの硬質化能力と違うわ…。

 これが火事場の馬鹿力ってやつかしら?

 まあこれでこの絶望的な状況も

 何とかなるかも知れないわね」


 ロバートの攻撃が再びメイに直撃したがメイの体は飛ばされる事なく止まった。


「これは、想像以上だわ…」


 メイはロバートの胴体をホールドし、鯖折り状態になった。


「私の全魔力をおみまいするわよ!!

 うるぁぁぁぁ!!!」


 メイの全身から黄金の魔力が噴出し強烈なハグを受けてロバートの身体は粉々に砕け散った。

 そして魔力切れをおこしたメイの身体は元の色に戻った。


「とっさに新しい技が出来たわね…。

 名付けて

『ゴールデン・マザーメイ・ハグ』

 ってとこかしらね」


 メイがロバートを倒した後、宮殿内の兵士が力尽きたメイを捕えようとした。


 そこに満身創痍になっていたクリスが到着したが、クリスもまた疲弊していいた為どうする事も出来なかった。


「メイさん!!」


 そこにジェシカが割って入った。


「皆の者!!手を出すな

 あの方の捕らえる事は

 この元ドロナック王国騎士団長

 ジェシカ・ハイランドの

 名において許さん!!」


 宮殿内はジェシカの一喝で静まり返った。

 そして、ジェシカはメイに振り返えって敬礼をしてから叫んだ。


「メイ殿!

 私はあなたに惚れました!

 真に勝手ながら交際を

 申し込みたく存じます!!」


「は…。

 こんな時に何言ってるの?

 それにアンタ女でしょ?」


「失礼ながら!

 メイ殿も男です!」


「私はオカマよ」


「心配ありません!

 実は私もレズビアンでした!

 しかし、この度メイ殿に惚れました!!

 つまるところ!

 私はバイセクシャルなのかも

 しれません!!」



 それを見ていたクリスは衝撃の展開に呆気にとられていた…。


「複雑すぎて何が何だか

 訳が分からない…」



         To Be Continued…



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