第3話

 “嫉妬”ちゃんは送られてきた猫画像の保存に忙しそうだ。そういえば動物好きって聞いたことある気がする。


「そういや“嫉妬”ちゃんもペット飼ってるんだっけ?」


 空気を変えていこうというアタシの気持ちを知ってか知らずか彼女は視線をこちらに向けて頷く。


「はい、ええ、あのぉ…わんちゃんなんですけどぉ、見ます?」


「いいね~いいね~送っちゃって」


 “嫉妬”ちゃんがおずおずと頷いて送ってきた写真は、ブラックタンのミニチュアダックスだ。

 妙に黒い部分が少なく茶色みの強い、少し白髪交じりの毛並みでいかにも高齢のようだが、“傲慢”主任の猫エリザベスちゃんと違ってあざとさのない純粋に愛らしい無邪気そうな笑顔をしている。犬って笑うんだなー。


「おーこれは普通に可愛いっスねえ」


「保護犬なんですけどぉ、もうお迎えして三年目でぇ」


 上機嫌でてれてれとうちのこ自慢を始める“嫉妬”ちゃん。


「保護犬て?」


「飼育放棄されたりして行き場のないペットを保護してる団体があってぇ、そういうとこの経営してるカフェでお迎えされるのを待ってる子たちがいっぱい居るんですよぉ」


「ほーん、初耳っスわー」


 世の中色んな商売があるなー。


「私もほんとは猫ちゃんが欲しくてしばらく通ってたんですけどぉ、カフェでこの子がどうしても気になってぇ」


 そう言いながらちらちらと“傲慢”主任を見る目に嫉妬じみたじっとりしたものが混じっているのを感じる。そんなに猫欲しかったんならなんで犬お迎えしたの。


「ちなみに名前は?」


「いそべちゃんって言うんですぅ」


 写真を見直す。


 この絶妙な配色。あーもう磯辺揚げにしか見えなくなった。これは磯辺揚げですわ。


「おいしそう」


 アタシの隣で“暴食”ちゃんがぼそりと呟く。やめてアンタが言うと洒落にならないからマジやめて。


「ぼ、“暴食”ちゃんはなんかないんスかそういうの。家の癒しっていうか」

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