〜3巡目〜 来るはずのない電車
駅という場所は心霊スポットになりやすい。
よくよく人が飛び込んで自殺したり、踏切で轢かれたり、とにかく幽霊が集まりやすいとされているんだ。僕の元に来る調査依頼はそういった幽霊絡みが多いんだけど、ごく稀に変わった依頼もあるんだ。
〜〜〜
その依頼はY県にあるK駅を調査してほしいというものだった。依頼文によれば、その駅には夜12時12分になるとその路線で数十年以上前に廃車となったはずの車両が停車するらしい。いわば、幽霊電車というやつだね。
これはスクープになると思い、飛行機と電車を乗り継いで僕はK駅に向かったんだ。
到着したのは午後11時くらいだったかな?最終便のバスだったからね。
K駅の周りは工場に囲まれていて、人の姿はめっきり見えなかった。駅前にコンビニが一軒あるだけで、めぼしいものはほとんど無い。そのコンビニでコーヒーを買った後、僕はとりあえず駅舎内に入る事にしたんだ。
この駅の終電はネットで調べた所11時59分。
問題の列車はその後にやってくる。
それまで僕はホームの椅子に座っている事にした。それにしても、この駅は歴史がありそうな作りだ。改札機横に伝言板が残っていたり、パタパタと音を鳴らすアナログ式行き先表示があったりと昔の痕跡がしっかりと残っていた。
最後の列車を見送ってから12分後、例の列車は予想通りホームに入ってきた。入ってきたのはその路線で1番新しいタイプの車両で車体が駅の照明で輝くくらいだったんだ。幽霊電車と聞いていたから、がっかりだったよ。
しかし、列車のドアは開かなかった。
アナウンスもないので、一般の乗客は乗れないのだろう。
それが気になったから、僕は先頭車両へ行って運転席の窓を叩いた。
「どうされました?」
すると20代後半くらいの真面目そうな運転手が窓から顔を出してくれた。
「初めまして。私、オカルト系の記事を執筆しているOO社のナガノと申しまして、取材してもよろしいでしょうか?」
「少しなら良いですよ。出発まで余裕はあるので。」
運転手は取材に応じてくれた。
「ご質問しますが、この列車はなんの為にこの駅に来たのですか?」
「ただの試験走行ですよ。新しく入る列車は深夜に走らせて異常がないか確認しているんです。決して怪しい事はしてないですよ。」
「そうだったんですね。安全とために努力されているんですね。ご協力頂きありがとうございました。」
「あなた以外にも『幽霊電車』と間違えてしまう人がいるんですよね。違うという事を書いていただければ幸いなので。」
運転手は困った様子で僕に言ってきた。
その口調から結構多いんだなとその時は感じたよ。
そして僕は列車を見送り、会社のある東京に戻った。
「ナガノさん。現地に行ってもらってからで悪いんだけど、あの情報嘘だったんです。」
担当編集のMにレポートを渡した所、こう言われてしまった。
「調べた所、K駅は貨物駅で一般の車両は止まらないんです。間違った情報を教えてすみません。」
「なんだって!普通の駅だったけど。ほら、時刻表も調べたし…あれ?」
スマホにブックマークしてあったK駅の時刻表が表示されなくなっていたんだ。
でも、この足で行ったんだ。確かに駅は存在したはずなのに!
「きっと別の駅と間違えたんですよ。ほら、これが近辺の衛生写真ですけど、完全な貨物駅ですし。」
モニターに映し出された写真には、貨物用のコンテナの山と貨物用の車両が止まっているのが見えた。
「いや、確かにここだったよ。僕はここにあるコンビニに行ったんだ。」
その写真には僕が立ち寄ったコンビニもはっきり写っていた。ロータリーは車両用の搬入口になってたけどね。
幸いにもその店で買った時にレシート貰っていて、僕はこの店に電話をかけたんだ。
「はいコンビニK店です。」
「すみませんここの住所を教えて頂けますか?」
そういうと、レシートに書かれた住所と同じ住所を教えてくれた。
「ほら、やっぱりこの店に行った。僕は貨物駅じゃないk駅へ行ったんだ!」
「え…それって現実に無い場所に迷い込んだ…みたいな?」
「そうだ。きっとそうに違いないな。」
僕は人知れず、未知の世界に足を踏み入れていたのだ。
だけど、まだ確証は持てない。そこで、僕は再びk駅へ向かう事にしたんだ。そして、K駅にの路線に乗り換えられるS駅に着いた時、寒気がしたんだを、
「お客さんどこかで会いました?」
そう、あの日、電車の試運転を行っていた運転手が声をかけてきたのだ。どうやら向こうも記憶が曖昧らしい。
「気のせいだと思いますよ。」
僕は、会ってない事にした。
「すみません。間違えたようで。」
そういうと運転手は僕の目の前を通り過ぎたかとおもいきや、振り返ってこう言ってきた。
「そうそう、試験運転中の列車には近寄らないで下さい。」
「次は無いですよ。」
ポッ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます