真夏の夜の百夢

〜1巡目〜 ないです。

皆さんは丑三つ時という言葉を知ってますか？これは午前2時から3時を表す言葉で、昔は化け物が出る時間とされていました。

これは僕がその時間に近所のコンビニを訪れた時の話です。深夜にタバコを切らしたので、早速店員に注文しました。

「103番を一つ。」

「ないです。」

店員はポツリと呟きました。髪が顔まで伸びていたので表情は分かりません。ただ深夜のコンビニでは商品が無いのも仕方ないことです。

「では、114番を一つ。」

僕は別のタバコを注文しました。

「ないです。」

これも無いのか。仕方ない別の店へ行こう。

そう思ってコンビニを出ようとしたその時。

「ないです。」

あの店員がいつのまにか出口に移動していました。

「すみません。他の店に行きたいんです。」

僕は店員を押し除け、店を出ようとしましたが、何故かコンビニから出れません。

「な、なんで？」

「あなたはここから出れないです。」

僕の視界が歪み始め、記憶が途切れてしまいました。

それから僕は、家から200kmも離れた港の埠頭で発見されました。

後で分かった事ですが、僕が行ったコンビニは10年以上前に閉店していて今は空き家になっていたそうです。

ポッ…