〜1巡目〜 焼鳥要塞

今から話すのは、K県M町にある廃墟の話だ。


その廃墟は町おこしのために作られた、大型の屋台村になるはず予定だったけど、ちょうどバブル崩壊が重なって建設中止になってしまったんだ。

※屋台村…小さな店舗を集めた店のこと。


その後、コンクリート打ちっぱなしの状態で放置されていたけど、3階建てかつ、かなり広い建物だったため、地元の不良たちが目をつけたんだ。彼らはここに大きな焼き鳥屋が立つと思っていたので、『焼鳥要塞』と命名したんだ。


不良たちは『焼鳥要塞』を溜まり場としつつ、ふざけ半分で壁にスプレーで落書きをし始めた。そして、その絵をインターネット上に上げたりして拡散したんだ。その絵は多くの反響を呼び、密かにそこの知名度は広まっていったよ。


しばらくして、多くのスプレーアーティストが集まるようになり、いつしかスプレーアートの『聖地』として『焼鳥要塞』は崇められるようになったんだ。


だけど、行政はこれを黙ってみてはいられなかった。不法侵入はもちろんの事、廃墟から転落して怪我でもされたら困るからね。


だから、行政は『焼鳥要塞』を町の管理下に置き、周囲をフェンスで囲って侵入できないようにしたんだ。


こうして『焼鳥要塞』は再び無人になってしまった。


ここまでなら全く怖い話だね。

だけど、『焼鳥要塞』の恐怖はここからなんだ。


フェンスで囲ってから1ヶ月後、まずは町長に違反が起こった。ある晩、とてつもなく奇妙な夢を見てしまったんだ。


その夢は焼き鳥屋に行って焼き鳥を食べるというものであったが、


焼かれていたのは鶏肉ではなく、スプレー缶の破片だったのだ。それを自分の意思とは関係なくどんどん口に運んでいき、飲み込む。

有機溶剤と金属のえぐみで気持ち悪くなるが、それでも食べ続けてしまう。


そんな夢を1週間も見続けた。


参った町長は家族に相談したけど、どうやら家族も同じ夢を見ていたようで、何の解決にもならなかった。


もやもやしながら町役場へ出向いたが、職員全員が体調不良を訴えており、欠勤した職員も数多くいたんだ。


そうしたら全員が口を揃えて


「スプレー缶を食べさせられる夢を見た。」

と言ったのだ。


しかもだ、ある職員が言った事だけど、

「近所の人も同じ夢を見てたのよ。」


そう、後々の調べで分かったけど、

町民全員が同じ悪夢を見ていたんだ。


色々調査して、『焼鳥要塞』が原因だと考えた彼らは一つの策を講じた。


スプレーアーティストを『焼鳥要塞』に集め、パフォーマンスを行ったんだ。


そうしたら、悪夢はぱっと見られなくなり、町は平和を取り戻した。


今でもお祭りとしてやってるみたいだから行ってみるといいかもね。この悪夢が覚めて、無事に帰れたらの話だけど。


後、M町でこの話をするのはおすすめしない。噂によれば警察が来て、拘置所に送られるらしいからね。


ポッ…

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