闘争

夜の九時。作戦は滞りなく開始された。

陽動班が動き、城門が開かれた。

陽動とはいえ、放火したりとかそういったことはしない。ただの酔っぱらいのように拳と拳で殴り合うのだ。

その先陣を切り、ウィルソンがのしのしと1歩ずつ前へと着実に進んでいく。

俺はこの建物を城と形容しているが実際はそんな大層なものでは無い、いわゆるところの要塞、石造りの冷たく大きな建物だ。窓は全て通気性の良い鉄格子、堀はないが塀がありその正面に大きな木製の扉聳えており、その中に建物がある。難攻不落の要塞そんなイメージがこの建物にこそ似合う。そしてその大きな扉そこが唯一の出入口だと、普通はそう思う。

だがしかし、大きな建物って言うのは必ず裏口がある。俺たちは子供の頃からこの街に住んでいて、こっそりとこの城の中にそこから入り込むことがあった。今はもう体が大きくなって入れやしない建物の裂け目が。


「あった、ここだ」


もちろんそんな亀裂のような裏口があるのならば、まだまだたくさん裏口はある。例えば脱出経路とか。

子供の頃俺が森の奥で偶然見つけた隠し扉、それは場内へと繋がっている。そしてこれは、軍の上層部の人達と俺しか知らない。


「正面は上手くやっているだろうか」


「やってるわよ、なんてったってジェシカがいるんだから」


マントで身を隠したアリシアは誇らしげにそう告げた。


「なぜジェシカがあっちなんだ? そしてなんだその表情」


「ジェシカはね、戦いの達人なのよ。あの子ああ見えても、元プロイセン王国の騎士の家系の子だからね。たとえ守るべき主がいなくとも、その心と戦闘技術は後世に受け継がれていくわ」


「意外だ……。ジェシカと会って数年は経つがそんなの知らなかった」


「まぁ当然よね。好きな人の前では弱くありたい、女心じゃないかしら。まぁ、あの子スミスとウィルソンも唸るくらいの筋肉もあるし、上手く隠してるみたいだけれど。女の子として男の人より強いってのもね、だって守られたいじゃない」


「なるほどね。じゃあアリシアお嬢様はこの俺がお守りしますよ」


まるで騎士の真似事のように俺は俺の胸に手を当てた。どうだかねと軽くあしらわれたが。

そうこう話しているうちに、場内への侵入が成功した。

隠密行動、目指すはマリアだ。



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□



その頃、陽動部隊は、必死に戦っていた。己に課されたルールを守りながら策戦を遂行していく。


「なんで私が戦わなきゃならないのよッ!」


ジェシカはヤケだった、ご自慢のウェイトレスのスカートを揺らしてジェシカは回し蹴りを軍人の脳天目掛けて放つ。スカートの隙間に覗く神聖なる領域に目を奪われている間に、軍人は幸せに痛みを感じ気絶する。

次々と溢れるように出てくる軍人に、ジャブを食らわせ蹴りを入れ、刃のない模造刀で斬り掛かる。

まるで鬼神のような姿と、周りの仲間にでさえ形容された。

はたまた、ウィルソンのその筋肉も伊達ではなかった。

興に乗ったのか、ウィルソンは上着を脱ぎ出しその肉体美を見せつけるように軍人を投げ飛ばし、振り払い、叩きつけた。


「手加減はしてるつもりだが、死んでないだろうな……? あまりにも貧弱な筋肉ばかりで張合いが無さすぎる」


15人が割り振られた陽動班だったが、ほぼジェシカとウィルソンの力で前進し続けている。飛んでくる銃弾から2人を守る盾を持つ役もいるくらいだ。それほどまでに2人は強い。


「あ、あの……ジェシカさん……」


「何! ジェームズ!」


タダ飯ぐらいのジェームズも陽動班の一員だった。

なにかに気づいたのか、ジェームズは門のさらに先、本殿への入口の方を指さし声にならない声でこう言った。あ、あれ、あれ! と。


「何よもう」


ジェシカは振り返ると、そこには大きな大きな砲台があった。真っ黒だ、闇に隠れて分からなかったが、あれをここに放つつもりなのだろうか。人間相手に。

ジェシカでさえ悪寒が走った。さすがにどんな鍛えた人間だろうと、戦車でさえぺちゃんこにし、地面に大きな穴を開ける砲弾をたたき落としたり切り落としたりとそんなことは出来ない。ただただ恐怖がそこにあった。


「あれは……やばい! 発射されるよりも早くあそこを叩かないと! ったく、あんなものがあるんなら先に行っておきなさいよ! 行くよジェームズ」


「は、はい!」


時を同じくして砲台の存在にウィルソンも気づいた。夜という闇にステルス迷彩のように溶け込んだ最も簡単な構造の悪魔がそこにはいる。

ジェシカと同じように、ウィルソンはあの砲台を止めに行かねばならない、ウィルソンは砲台目指して走ろうとしたその時だった。


「おやおや、誰かと思って来てみれば、もやし君じゃないか、こんなところで何をしている」


「おうおうおう、クソッタレのスミスじゃねぇか。そうだちょうどいい、俺たちの因縁にケリをつけようじゃないか」


「ほう? 今俺が2連勝までにあと一勝であることを忘れたって言うのか? 自称筋肉ダルマは脳みそまで筋肉か? 笑えるな」


「ここでお前の息の根を止めてやるってことだ。タンポポを摘むようになんてことなく簡単にだ」


「言うじゃねぇかウィルソン、いいだろう! ここでお前のその柔らかな筋肉を殺す!」


筋肉の衝突は始まった。


再び場所は戻るジェシカの元へと。

ジェシカは襲い来る敵を薙ぎ倒し、以外にも軽いジェームズをお姫様抱っこして全力疾走で砲台へと向かう。


「あ、あ、当たってるって! 当たってるって!」


「うるさいなぁ、今急いでるんだからちょっと静かにしててよね、砲撃だけ気をつけてみはってくれるだけでいいから!」


目指すは砲台のある玄関横。まるで城攻めのためにのみ作られたような固定型の砲台は左右のふたつがある。止めると言ったってその場にいる人や、その場に行く人を気絶させるようなことしか出来ないが、それだけで十分だろう。

この砲台の不安さえなければ、夜で帰宅している場合が多く人の少ないこの状況において、ジェシカたちの勝利が確定はしなくとも、安心して接近戦にもちこめる。


「玄関に着いた……ジェームズ中は危険だ、注意して」


ジェームズが持っている武器は拳銃だが、護身用に持たせているだけなのでその腕はあまり信用してはいなかった。


「まずは向かって左からだ。」


砲台なんて連発できるものでは無いが、いざ放たれるとそれは脅威でしかない。1度たりとも砲台を放つことは許されない。


「とりあえず。こっちは誰もいないみたいだ」


恐る恐る中に入り確認する。だがそこには誰もいなく使われた痕跡のない大砲だけが静かに鎮座している。


「弹は入ってないみたいだ、それにどういう訳かこの部屋自体に弹がない」


「ダミーじゃないの……」


「ダミー、囮か。右か左か、どちらかが実際に使っている方でどちらかが使っていない方そういうことか。

なら反対側だ、急いでいこう」


と、正面から向かって右側の砲台を確かめに来たのだが


「こっちも誰もいないし、埃がかぶってる。まるで使われた痕跡がないし、こちらも弹がない……」


「ジェシカ……何か嫌な予感がするよ……」


「その予感は案外当たっているのかもしれない」


とその時、この建物の中から銃声が聞こえた。近くではない遠くの方だがこの銃声は、大きくこの建物の中に轟いた。



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□



時は少しだけ前に戻る。ジェシカが銃声を聞く10分ほど前だ。俺たちはマリアに出会っていた。それも、侵入してすぐ、隣の部屋を覗いた段階で、大きな軍隊を連れたマリアに。


「アレク、それにアリシアあと数人か。あの正面で起こっていることは陽動だって知ってたよ、それに君たちが脱出用通路から入ってきて次にここに来るということもね。いかにもアリシアが考えそうな事だ。作戦の主はアリシアだろう? あぁ、もちろん筒抜けって訳じゃないよ。スパイとか諜報とかそんなことはしてない、ただの推理さ」


「俺たちのやることは全部お見通しって訳か……」


「そう、アレク。君が時計仕掛けの工場から抜け出した時点で推理を始めた。そしてこのビア樽が私の推理を完璧たらしめる材料に変わった。もちろんこっちは全員シラフだ。正面はただの新人の訓練に過ぎない、スミスはウィルソンの所へ行ったけどね。

――さぁ、アレク、アリシア。この軍勢を見てどうする? しっぽを巻いて逃げるなら、このビア樽に免じて見逃そう。だが次はないと思え」


「逃げる? そんなことはしない。俺たちは最初っから話し合いに来たんだ」


「話し合いね、少し意外だったな」


「そうか?」


「そうだよ、てっきり私を殺しに来たのかと」


「それは推理が甘かったな。殺すならこんな作戦になって無い、それこそ暗殺する」


「それもそうだね、じゃあ何を話しに来たって言うのかな?」


言葉の一つ一つに重みを感じる。高まる緊張感の中言葉の銃弾が互いを牽制しているのだ。互いに引く気は無い。


「なぜこんなことをする、理由はなんだ。マリアだってあのバンケットでの日々が楽しくてたまらなかったはずなのに」


「言ってどうこうなる問題では無いのだがな。まぁいい。前任の指導者が秘密裏に企てた作戦があった。この国は近いうち、他国と同盟を組み世界に宣戦布告をする。我が誉れあるドイツ国家はこの戦争に勝たなくてはならないのだ。故に軍事的脅威となるものが必要だ。武器や兵器が少しでも多く必要になる。だからこそ働いてもらわなくてはならない、ここはドイツ第1の倉庫、軍事兵器の最先端はここに集約されている」


「前任の指導者は殺されたはずだ。それに、そんな策戦いつでも無かったことにできるだろ」


「いいやそうはいかない。同盟は既に結ばれている。この話から降りれば第1に狙われるのはこのドイツだ」


「そんな同盟、前任の指導者が勝手に行ったことだろう? 国民の総意では無いはずだ。いつだって反故にできる、そして中立を唱えばいい」


「アレクは知らないだろう。いつだって戦争はほんの些細なことで起こるってことを。要は相手の受け取り方次第なのだ。たった1人が総意に反したことをするだけで、それは簡単に大虐殺の引き金となる。戦争は起こそうと思えばたった2人いるだけで起こせるんだ。ほんの小さな火種が町中を大火に包んでしまうようにあっさりと

だから、そんなことは起こりえない。国はその国の最高権力者の一声で動く。今約束事を反故にすると、それは大きな裏切りとなる。たとえ本当に中立であったとしても標的は必ずここになる。

――どちらにせよ、この政策は終わらない。その政策の意味が侵攻か自衛かの違いに過ぎないのだ」


「自国の勝利なら圧政も厭わないと? 国民の日常を侵害する必要がどこにある」


「では聞くが、お前たち自身は誰が守る? お前たちは自衛できるのか? 今や戦車や艦載機、原爆という超破壊に富んだ爆弾もあると聞く、それを停められる可能性があるのは、誰だ、いやどの組織だ?

答えは必要ない。軍だ。軍がお前たちの日常を毎日毎日守っているのだ。お前たちの命は我々の手のひらの上にある。じゃあお前たちはどうなんだ? お前たちが守るものはなんだ? いざ戦争が起こった時お前たちは、神様兵隊様と助けを乞うことしかない。

日々のうのうと世界の幸せをかみ締めて生きているお前たちに! 日夜、国民の平和を守るために積み上げて来ている兵隊に逆らう資格などない!

そしてその行動が自衛へと繋がるのだ。お前たちは日々寝る間も惜しんで自分の命を繋いでいるということになぜ気づかない!

――前任者が勝手に決めた誰の意志にもそぐわない同盟で戦争が始まるまで刻一刻と迫っているというのに、お前たちは自分個人の幸せしか願うことは無い。

お前たちに、この腸が煮えくり返りそうなほどの焦燥が分かるか?」


俺は口をつぐんでしまっていた。マリアの威勢に押されてしまったというのもある。だが、そうじゃない。俺はその通りだって思ってしまった。この場に誰一人として悪人なんていないのかもしれない。むしろ俺たちの方が悪人に見えてくる。


「――マリア。あなた変わってしまったのですね……」


アリシアが優しく、子供を宥めるような口調でそう言った。


「え……」


「マリア。あなたと私が初めて話した時のこと覚えている? 5年前の事だったわね、あの時のあなたは誰よりも正義感が強くて、誰よりも真っ直ぐで正直な人だった。だから、あなたはあの時絶望したのでしょう?

――でも、今のあなたはどう? 以前変わらず国を守るという意思はあるみたいだけれど、あの時あなたが願った幸せは今のあなたがしていることで実現するようなことなの? 確かに、戦争は起こるんでしょう。そして、その戦争に勝つことができるんでしょう。でもねその後よ、失われた日常はそう簡単に戻るようなものじゃない。人々は楽の仕方を忘れてしまっているでしょう。戦争に勝ったという実感のないの達成感だけがそこにある。ただそれだけ……

綺麗事じゃあ確かに世界を守れない。それを知ったのは良いけれど、今のあなたの行いはあまりにも汚すぎる」


「じゃあ、どうしたらいいの? 私はどうしたら良かったの? アリシア……、私は間違えてたの……?」


マリアは膝から崩れるように座り込んだ。自分の過去を思い出したのだろう。先程までの冷酷で可憐な女指導者の姿はもうどこにもなく、そこにはか弱く涙を流す一人の少女の姿しか無かった。


「1人で抱え込みすぎなのよ、マリア。あなた一人でこの国が回っているわけじゃないでしょう? それこそ時計のように、この大きな組織を回すためにはたくさんの歯車や部品が必要なのよ。だからみんなで考えましょう、またバンケットでお酒でも飲みながらね」


アリシアは少女のように涙を流すマリアを優しく抱擁した。聖母のような慈愛の心は、マリアの淀みを静かに溶かしてった。


「一件落着、なのかな?」


と、その時だった。

部屋の中に銃声が鳴り響いた。瞬く間に部屋の中の視線は銃声のした方へと向けられる。


「――アリシア。って、おいアリシア!」


アリシアは、銃が放たれることにいち早く気づいていた、それもマリアに向かってだ。アリシアは、マリアの丸腰で隙だらけのマリアの背中を狙って銃弾が放たれると同時にマリアの体を庇うようにして動き出した。そして弾丸は無慈悲にアリシアの心臓を貫いた。アリシアの体内で止まった銃弾はマリアに一つとして傷をつけることはなかった。


「おいおい! 冗談だろ? マリア様。まさか辞めるだなんて言わないよなぁ?」


マリアの後ろに並ぶ兵隊たちの中、その一番後ろにそいつはいた。マリアに従順な兵隊たちは深深と軍帽を被った男が喋った瞬間、捉え身動きを取れないようにした。

だが、アリシアの胸部からは止まることを知らない血液が次々と流れだす。


「嘘、アリシア……、だめ、死んじゃダメ!」


マリアは必死にアリシアの心臓から流れ出る血を止める、だが止まる気配はない。


「だれが、誰がこんなことを!」


勢いよく、マリアは立ち上がった。そして、俺たちがとりおさえるよりも早く取り押さえた男の元へ。そして深々と被った軍帽を振り払う。


「お前は! 前任の――」


「フフ! ハハハハ! ああそうだ。俺はお前に殺され、地位を失った元指導者ルドルフ・ダイナー! なぜ生きてるんだそう思うだろう、当然だな。一つだけヒントをあげよう、お前は俺を殺したと思った時俺の顔をよく見たのか? 見てないだろう。俺はお前に殺されずともこの地位を降りるつもりでいた、否。既に降りていたのだ。あの時、指導者の座についていたのは、罪も何も無いただの兵隊上がりの男だ」


マリアが殴り掛かるよりも早く、俺はマリアを止める。

マリアは、怒り狂ってルドルフを殴るかと思ったが以外にも冷静だ、いや根の部分は今すぐにでも殺してしまいたいと、そう思っていることだろう。俺も同じだ。

だが、この状況が俺たちを冷静にさせている、ここからルドルフに逆転する術は無い、どちらにせよこのまま法がこいつを殺す俺たちがわざわざ手を汚すまでもない。俺は手を離した。


「本当に残念だったな! 俺はマリア、お前が何を考え何を実行しようとしているか知っていた。だから利用したのだ、上を狙っているのならば、ならせてあげようと、過去最低の指導者という悪名の地位だがな!

戦争において指導者というのはあまりにも不幸な立ち位置だ。戦争が起こってしまえば暗殺が企てられ、戦争に勝てば栄光があるのかもしれないが少ない犠牲に恨まれ、戦争に負ければ死あるのみ。そんな立ち位置にわざわざふんぞり返っている方がおかしいのだ。利用できるものは利用しなければな!」


「いつまでもそうやって遠吠えを続けてたらいいわ。お前の作戦は今失敗したのよ」


マリアは、ルドルフを気絶させた。

これで本当に一件落着と言ったところか。だが……


「アリシア! アリシア!」


その場にいた全員がアリシアの元へと駆け寄る。ここにいる人たちは皆バンケットに癒しを求め、救われたものばかり、少しづつ衰弱していくアリシアにみんな思い思いの感謝を告げて言った。


「マリア、アレク……それにみんな……バンケットをよろしくね……。私はこのまま死んでしまうけれど、どうか悲しまないで。そうだアレク、前バンケットの由来を聞いたわよね……。バンケット……つまり宴会はどうしようもなく嬉しい時や悲しい時に、大騒ぎしてそれすら忘れてしまいましょうってものでしょ? でも感情は1回きりじゃない、毎日のように目まぐるしく変わっていく。その度に宴会を開きましょう、そうしたら毎日が楽しいことばかりだから。私の母親は毎日のようにそう言ってたわ……、私はその通りだって思った。だから宴会バンケットという名をつけてお祭り騒ぎしよう、それが由来なの……

だからね、バンケットでまたみんなでお酒を飲んで、騒ぎ明かして私のことを徐々に忘れていったらいい」


「アリシアがいなきゃバンケットはバンケットじゃない……、今ここにはいないけれどジェシカもウィルソンもスミスもジェームズだってそう言うぜ。生きなきゃダメだ、アリシア……」


「でももう無理なのよ……私はもう死ぬわ……」


「そんな……私、アリシアを守りたかった……あの日からずっと……アリシアさえ守ればいいと思うくらいに私はアリシアに救われたの。私……まだ恩返しできてない、死なないでよ……」


「ありがとう……楽しかったわ……」


でも神は無慈悲にアリシアを連れ去った。

こうして、俺たちの革命はたった1人の犠牲で終わったのだ。だが俺たちにとってその犠牲は何よりも大きなものだった……。ぽっかり心に穴が空いたみたいに俺たちは涙を流すことしか出来なかった……。


――そしてその頃


「はぁ、はぁ勝った。これで1979勝1978敗100分け……振り出しに戻る。だ、スミス……」


ウィルソンはボロボロのからだでそう言うと、その場に倒れ込んだのだった。

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