僕たちのお姫様①
僕は、トラジール辺境伯家の長男でクリストファー、10歳。
僕には弟が2人いる。2つ下の弟、アランは運動が得意で剣の才能もある。わずか8歳ながらに、我が領が誇る騎士団の精鋭の騎士たちが負けることもあるくらいなのだ。
そしてもう一人が、4歳下の三男のカミルはとても動物に好かれやすい。カミルが言うには動物たちの言葉が分かるそうだ。カミルみたいな子がトラジール家にはときどき生まれるらしい。僕は凡人(側近たちは猛烈に否定するけどね)だから羨ましいね。
そんな僕たち三兄弟に、1週間前に新たな兄弟が誕生した。
その日、僕たちは初めて彼女に会った。生まれたばかりの妹はどこもかしこも小さくて、とても柔らかく、触ったら壊れるんじゃないかと恐いくらいだった。頬をつついたら、その指を一生懸命捕まえようと手を伸ばしていた。まだ薄いふわふわの髪は綺麗なプラチナで、大きな瞳はエメラルド色、透き通るような白い肌の妹はこの世のものではない神秘さを感じさせていた。
アランがシャルの頬をツンと指で触っていると、その指をシャルは力いっぱい握りしめていた。そんなシャルがアランは嬉しかったみたいだ。
「いい握り具合だ。剣を持たせたら最強になるかも。早く一緒に訓練したいなぁ」
弟の将来が心配になるくらい脳筋な言葉に、さすがの僕も呆れた。
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。女の子なんだぞ。しかもこんなにかわいい天使に、剣なんてもたせるわけないだろう」
一方のカミルは今まで兄弟で下がいなかったのもあったのだろう。自分より年下の子どもに会うの自体が初めてで、身体全身で喜んでるのが分かる。
「かわいいね、かわいいね。早く一緒に遊べるようになりたいなぁ、お話ししたいなぁ」
僕たちは、妹がかわいくてたまらず、生まれてから毎日会いに来ていた。
「お前たち、いいかげんにしないか!」
「そうよぉ。赤ちゃんは寝るのもお仕事なのよ」
あぁ、ついに父上と母上に怒られてしまったか。でも、父上も僕たちが天使に癒されたい気持ちはよく分かるはずだ。
辺境伯は、伯爵とついているが、他国から自国を守るなど重要な立場なのもあり、侯爵位と同等な地位である。力のある者の周りには、少しでもおこぼれにあやかろうと、様々なやつが近づいてくる。まして、自分の力だけでは上に行けない者ほど、つまらない小細工をしてくるものだ。本当にくだらない。
父上が辺境伯の地位についた時に、娘を妾として嫁がせようとした者も多かったそうだ。確かに、貴族では妻は2人までは「妻」として認められている。だが、あいにく両親は貴族では珍しく、恋愛結婚だし、母上は侯爵家の娘で家柄も容姿も王妃と対でいわれるほどの美貌だ。父上も、横からとられないかと結婚するまで気が気ではなかったそうだ。そんな2人に第二妻は全く必要なかったし、跡継ぎの男児が3人もできた今では、周りは母上に何か言える者など一人もいなかった。
そしたら次のターゲットは当然に僕だ。男児だったら跡継ぎの嫡男と友達や側近にさせようと、女児だったら婚約者として、そうやって我が子を連れてくる大人達が、毎日のように顔を出した。正直うんざりする。
しかも、下級貴族はアランやカミルまで餌食にしようとした。僕に向くのはうんざりするだけで、あとでどうにでもできる。だけど、アランやカミルまで餌食にしようとするのは絶対に許せなかった。だからちょっと処理とか……ね?
そんなうんざりする毎日だった僕らのところに現れたのが、僕らの天使シャルだった。なんの打算もなく微笑んでくれるシャルに、僕らはすぐにメロメロになった。だから僕たちはシャルを何があっても守ろうと誓いあった。
だからねシャル、君を傷つける奴がいたらすぐに言うんだよ?兄様たちが処理してあげるからね。だから早く兄様って呼んでね!
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