三話 届いた手紙

ローザを追い出してから1ヶ月後、ローザの実家では不穏な空気が流れていた。


「どうなっているんだ、アニー!お前の占いではローザを追い出せば、家業は上手くいくんじゃなかったのか!?」


ローザの父、カールは苛立ちが隠せないでいた。最近茶葉の売り上げがどんどん落ちていたからだ。


「お父様……私にもよく分かりませんの。でもお姉様がいなくなって、我が家の運気は確かに上がっているのです。他人の病を引き受ける穢れた人がいなくなったのですから!」


アニーは目を潤ませながらカールに弁明をした。昔からカールは、この表情に弱かった。


「そうか……確かにそうかもしれんな。では、もうしばらく様子をみよう。」


そう言うと、カールは仕事に向かった。


アニーは唇を噛みしめて俯いた。


「せっかく目障りなお姉様を追い出したのに……どうしてなの?!」




父に怒鳴られてイライラを募らせたアニーは、気分転換に大好きなお風呂につかり、ローザから奪った美容液を使ってマッサージを行った。


「やっぱりお風呂は良いわね。スッキリしたし、後でもう一度占いをしてみましょう」


気分が良くなったアニーは残った美容液を母のハンナに渡し、自室で占いに専念した。




翌朝、アニーは鏡を見て絶叫した。赤くパンパンに腫れ上がった化け物のような顔が、鏡に映っていたのだ。ハンナも同様の顔になっており、美容液が原因だとすぐに分かった。


「お姉様……いなくなってからも迷惑をかけるのね!」


すぐに医者に診てもらったが治療法がなく、アニーとハンナは家に引きこもるようになった。そのため社交界で茶葉の宣伝が出来ず、広報活動に大きな影響が出るようになっていった。




――――――――――


それから一年近くたった頃、ローザの実家の異変は周囲にも知れ渡っていた。没落しかかっていると勘づいた周囲の人間は、どんどんと離れていったのだ。


そんな時、ローザから手紙が届いた。


「くそっ!ふざけた手紙を寄越しやがって……!」


カールの怒りは頂点に達していた。手紙にはローザが出て行ってから起きた不幸の原因が、丁寧に綴られていたからだ。


「グリュック商会の独占販売だと?うちの売り上げを全部持っていきやがって!」


「あの美容液が毒だったなんて……私にわざと盗ませたのね!」


カールとアニーは怒り狂い、ハンナは泣き崩れた。


そして手紙の最後に書かれていたフランツの一言が、この家族の怒りに油を注いだ。


「フランツめ!我が家をコケにしやがって…こうなったらローザを連れ戻してやる!そうすれば我が家も元に戻るに違いない……!」


「そうよ、こいつがお姉様に入れ知恵したに違いないわ。連れ戻して、私の治癒をさせてやるわ!お姉様は治癒しか出来ない私以下の人間なんだから!」


カールとアニーは、ローザを連れ戻す決意をし、準備を始めた。


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