第二章:決心

第5話「声」

...。




身体が軽い。





意識がふわふわする。






視えない。





地面に脚がついていない。



まるで深海の中を漂っている気分。

しかし、息はできる。






一筋の光が目の前で俺に

向かって差し伸べる。



必死に掴もうとした。

追いかけた。



意識はまだふわふわしている。

俺にはその光は、



"お父さんの腕に見えた。"





でも、掴めなかった。

届かなかった。







「おはよう。健杜君」


誰かの声が聞こえた。

青年くらいの若い声。


何故なのか、どこか

懐かしいと思ってしまった。



俺は声の元を探るべく

辺りをきょろきょろ見渡す。

当然その声の正体なんて

見つかるはずもなかった。


「...これ、怖い?」

「...嫌だ?」

「これがなんなのか...分かる?」


その誰かの声は、何処から

でも耳打ちをしてくるように聞こえてくる。


あの時見たものと似ている。

悪夢のようなもの。

否、似ているってものでは無い。


同じだ。

金縛りのような感覚も、辺りの景色も。


「...っ」


声が出ない。



この時、何故か恐怖なんてものは無かった。

そのせいか、ふわふわな

意識がはっきりしてきた。


「あらら」


さっきまで耳打ちしてた声が

急に止み、誰かの声は、

困ったような声を出した。


その瞬間、俺はとうとう言葉を

出せるようになった。


「...れなんだ。誰なんだ?」


最初は掠れるように、

徐々に声はいつも通りを取り戻した。


「ここは何処なんだ。

お前は誰なんだ。

この悪夢は何なんだ?」



俺は必死に誰かの声に問いただした。


でも、会話は噛み合わなかった。

更に声は変な事を言い出した。


「ほぉ、中々肝が据わってるな。」

「...え?」


そしてその声は俺にこう言った。


「"泉田隆いずみだ りゅう"という人物と会え。

お前はそこで全てを知るはずだ。」


唐突の言葉に俺は戸惑った。

瞬間、スイッチがパチッと

切り替わったかのように、



俺の意識は、無くなった。











あいつの声、どこかで━━━━━。





"成り上がり編" 開幕!!

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