獲物

春耳蜜

第1話

「それ」が目に入ったのはコンビニの入り口にある殺虫灯を見ている時だった。

なんてことはない、とりたてて派手なわけではない女だ。

いかにも性的なにおいがする、訳でもない。


ー…だけど何か俺の目を引いた。

白いワンピースがモンシロチョウみたいで、

小学生の頃、学校帰りに捕まえて解体したことを思い出した。

「モンシロチョウ、見っけ。」

そうひとり呟くとモンシロチョウのあとを追い出した。

ー…この辺にあまり街灯はない。

捕まえたら、何をしようか。

その足はゆったりと、でも確実に進んでゆく。

○○公園ー…。ここは人の気配もあまりない。

ずっとずっと、奥の方へ。進んでゆけ、早く。

俺が捕まえて、羽を千切るまで。







ー…その男が私に目をつけたのは、すぐにわかった。


パステルカラーで柔らかな素材の服。淡いメイク。ふわふわした髪型に、くどくない甘い香り。

私がどれだけ牙を隠していても、見た目や仕草のスペックで、男はちょっとおバカな可愛い女の子だと認識する。

どうせこの男もそんなクチだ。

ちょっと暗がりに行ったところで、

髪でも引っ張って力ずくで手首を押さえつけるのだろう。

それからは……


おっと。足音が近づいてきた。

……「捕獲者」を捕獲する時だ。

コンビニでもらった割り箸を持つ手に、力を込めた。



ー……お前の穴も貫いてやるよ。








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獲物 春耳蜜 @harumimimitsu

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