第10話 みわちゃんのパパとママ


みわちゃんのパパとママ


6時半、駅改札口前。ほぼ同時に美羽の父母らしき二人が近づいてきた。

美羽が駆け寄り、3人そろって結花、龍彦、咲月のところに来た。

「初めまして、流泉龍彦です。仏照寺(ぶっしょうじ)でカフェをしています。」

「初めまして、あたしが黒谷結花です。一緒にカフェをしています。」

「どうも、栗栖です。美羽がお世話になっている様で、、、」父親であろう男性が申し訳なさそうに挨拶。

「すみません。出しゃばっちゃったみたいで、、、」龍彦、一先ず謝る。

「仏照寺のカフェって、例の、、、」お母さんが聞いてきた。

「そうです。お騒がせしてすみませんでした。」結花が謝る。

「いえ、いえ、、、あのおかしな人から女の人を守ったって、ちょっと評判で、、、どんな人かと思ってましたので、、、」

お母さん、龍彦を見る目がちょっと潤んでる。そして結花を見て「そうですか、、、あなたが守られた人、、、ですか、、、」

結花、照れる。お父さんも頷きながら、結花を見る。龍彦、鼻が膨らみ、ちょっとドヤ顔。

「まずは事情を話してもらえるかな?美羽ちゃん。」龍彦、みんなを促す。

「……はい。」美羽はしていない万引と、下半身の写真を要求されていることを話した。

「……美羽、、、直ぐに話してくれたら良かったのに、、、」お母さん、定番の責め句を言う。

「……しかし、イジメに会ってるとは、、、学校に言わなくちゃ、、、」お父さん、人に頼ってる。


ファンシーショップ”ファンタジア”

「すみません。店長さん、いらっしゃいますか?」龍彦がレジにいた女の人に問いかけた。

「はい、あの、、、わたくしですが、、、何か?、、、」結花よりも若そうな人が答える。

「俺、仏照寺(ぶっしょうじ)でカフェをしている流泉龍彦と言います。」

「えっ、、、あの!」女の人が目を丸くした。「あなたが、、、という事は、、、」結花を見る。

「……どうも、黒谷結花と言います。」

「へぇ~、、、そうですか、、、」女の人が微笑みながら龍彦と結花を交互に見ている。

どうも二人は有名人になっていたらしい。そりゃそうだわな、、、。

「で、どういったご用件で、、、」

「ちょっとすいません、、、美羽ちゃん、君がここに来たのいつだっけ?」龍彦、美羽を見た。

「この前の土曜日、夕方4時ごろ、、、」美羽が弱々しく答えた。

「その時、この子が万引きしたと疑われていまして、、、もし良かったら防犯カメラの記録、見せて貰えませんか?」結花が付け加えた。

「もし、この子が万引きしていたら大変申し訳ありません。お代は払わさせて頂きますので、、、」美羽の母がお辞儀をしながら、更に付け加えた。

「はぁ~、、、じゃ、どうぞこちらへ、、、キヨミちゃん!レジ、お願いっ!」店内整理のもう一人いた女性に声を掛けた。

お店のバックヤードにある事務机、そこにパソコンがあり店長が操作する。

「土曜日、土曜日、、、夕方、、、4時頃っと、、、」4分割された画面が表示される。時間は 15:45となっている。

店長早送り。「あっ!、、、居た、居た。」美羽が一つの画面に出てきた。暫く画面を見る。

美羽が、同世代の女の子に話しかけられた。美羽はレッスンバッグを後ろ手に両手で持つ。お尻の辺りにレッスンバッグ。

そこへやはり同世代の男の子が二人、手に持った物を美羽のレッスンバッグに入れるのが映っていた。細長い、キラキラした袋。

「やっぱりね、、、思った通り、、、写真、良いですか?」と、龍彦。

店長が記録を遡り、丁度入れている所で画面を停止させ、ハイと声を掛けてくれた。龍彦、携帯のカメラで写真を撮る。

「この子達、、、この前にもずっと居た様な、、、」店長、更に遡る。15:40のところで、、、

「この女の子、スカートのポケットに、、、、ピアス、入れた、、、」店長、画面を止めた。龍彦、携帯のカメラでまた、写真を撮る。

「この子達、前から変だったのよね、、、でもさ、中学生でしょ、、、警察とか学校とかはね、、、ちょっとね、、、」と店長。

「良かった、、、娘じゃ無かった、、、」お父さん、安堵の声。お母さんも頷く。

「どうしようかしらね~、、、」店長困った顔。

「店長、この件、任して貰えませんか?」龍彦、一言。

「え、任せるって、、、あなたに?」店長、龍彦を見上げる。

「いえっ、美羽ちゃんとお父さんとお母さんに!」

「……そりゃ、、、良いですけど、、、」と店長。

「えっ!、私たちに?、、、その子達に何をしろと、、、」お父さんが驚いた様な、困ったような。

結花も眉間に皺を寄せ乍ら、龍彦を見る。「どうすんの?」

「この際ですから、店長にも聞いて貰っときますが、、、」龍彦、ニタっと笑って話し始めた。


「え~、、、恥ずかしいなぁ~」お父さん、笑いながら困った顔。

「可愛い、可愛い娘さんの為ですよっ、お父さん。ここでやらなきゃ、いつ娘さんを守るんですか?」

「そっ、そうですよねぇ~、、、流泉さんにそれ言われちゃ、やらない訳にいきませんよね~、、、ねぇ、ママ。」

「ハイ。協力します。可愛くしてあげます。」とお母さん。「え~、、、恥ずかしいなぁ~」とお父さん。

「うん、うん、、、良いと思いますよ。それ。わたくしも賛成です。」店長、同意してくれた。

結花と咲月は微笑みながら、何かしら恥ずかしそうに顔を見合わせていた。


翌日、美羽は例の3人組に、3枚写真を送った。トーク付で。

”約束の写真 送ります”

”ついでに これも送ります”

”これ以上の要求は 学校と世の中へ拡散します”

”これっきりなら 何もしません”

”私は 約束を守ります”


写真の一つ目。 美羽のお父さんが全裸でベッドで大股を広げている写真。あそこにはピンクのリボン。顔は手で隠している。

写真の二つ目と三つ目。ファンタジアで撮らせてもらった、光る長い袋をバッグに入れている所と、スカートのポケットにピアスを入れている所の写真。


3人組からのイジメは無くなった。と後で聞いた。

美羽ちゃんや咲月ちゃん、お父さんとお母さん、時々お店に来てくれている。



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